取材・文/ふじのあやこ
家族の中には、血縁のない『義(理の)家族』という間柄がある。結婚相手の親族関係を指すことが一般的だが、離婚件数が増える現在では、親の再婚相手や、再婚相手の連れ子など、家族の関係は複雑化している。血のつながりがないからこそ生じる問題、そして新たに生まれるものも存在する。義家族との関係を実際に持つようになった当事者にインタビューして、そのときに感じた率直な思いを語ってもらう。
今回お話を伺った遥香さん(仮名・36歳)は20代のときに結婚と離婚を経験しており、現在は娘との二人暮らしをしています。付き合っている男性はいるものの、再婚の意思はないとのこと。
「私の両親も離婚、そして別々の人と再婚しており、私には離婚よりも親の再婚が辛かった経験が残っています。だから、私と同じ思いを娘にさせたくないのです」
小学生のときに両親が離婚。当然のように母親に引き取られた
遥香さんは兵庫県出身で、両親との3人家族。小さい頃から仲が良かった両親の姿は記憶になく、小学4年生のときに両親が離婚に至り、当然のように母親に引き取られます。
「小さい頃の3人での生活は覚えていません。本当に3人で暮らしていたのかなってくらいです。両親の離婚の話は別々に聞かされて、そのときも『そっか』という感じでした。嫌だとか、寂しいとかの感情はまったくありませんでしたが、周囲に離婚している家庭がまだ少ない時代だったので恥ずかしいという思いはありました。
私は両親からどちらと暮らしたいなどの相談もなく、母親に引き取られることになりました。両親はどちらも地元出身で数駅の距離にお互いの実家があるような人たちだったこともあり、離婚後は祖母が定期的に来るようになりましたが生活で大きな違いはなく、ただ家に父のものが一切なくなっていっただけ。母親はずっと働いていたので、離婚した後のほうが私に構ってくれて独りぼっちの時間が減ったくらいでした」
父親との面会は月に一度。車で迎えに来てくれて商業施設に行ったり、何かを買ってもらったりと楽しかった記憶ばかりが残っているそう。しかし、母親の言葉の植え付けで自宅に帰った後には罪悪感があったと振り返ります。
「離婚の原因は父親の浮気だと母親から聞かされていて、私が父と会う前後はいつも父親の悪口を私に言っていました。私はそんなことを聞いていても父親と一緒にいる時間が大好きだった。父は穏やかでいつも全力で私と遊んでくれていましたから。罪悪感は、その大好きという気持ちを持ちながら母親のいる自宅に帰ると芽生えてきました。なんとなく母親を裏切っているという気持ちになってしまっていたんです。父と会うときには母の前でちょっとだるそうな演技をしてみたり、帰るときには買ってもらったものを服の中に隠したりしていましたね。大きめサイズのセーターなどが隠しやすかったです(苦笑)」
【母親の再婚で新しい父親、そして妹ができた。次ページに続きます】