娘はいかがわしい街のラブホテルに入って行った
娘が産んだのは、現在16歳の孫娘だけだという。それだけの金持ちだと、男子を望む傾向があるが……。
「そのことについて、娘とは全く話していません。娘と話したのは、いかがわしい繁華街で、彼女と男がラブホテルに入って行くのを見て、彼女が出てくるのを待ち、電車で移動している30分だけです」
その30分間でわかったことは、娘は夫の完全な支配下に入っていること。携帯電話を奪われ、実家との連絡も禁止されている。生活費は最低限しか渡されず、逐一行動を報告させられているという。当然、友達にも会っていないことは推測される。
「支配は結婚期間が長くなるほど激しくなった。娘は“子供が多ければ足かせになる”と避妊薬を処方してもらった。それに気づいた婿が支配の手を強めた。あらゆる自由を奪われて、今まで来たのだと言う」
娘は自分の兄と母親のバトルを聞いて育った。罵声に対して耐性はあるが苦手でもある。そこで10年前に体調を崩し、心療内科を受診する。そこで医師に「モラハラ被害に遭っているのではないか」と言われたという。
「そこで娘は自立しようと思った。しかし、家のパソコンは婿の管理下にあり、スマホもケータイもない。そうこうしているうちに、婿の愛人に男子が生まれた。世間体を重視して、婿は娘と離婚はしない。しかし、婿は男子が生まれた瞬間に、16歳の孫娘の学費を払わないと言い出した。孫娘は母親を苦しめる父親を嫌い、反抗を繰り返していた。そのことに対する報復だという。孫娘は苦労して入った今の中高一貫校を気に入り、楽しそうに通っている。娘にしてみれば、孫娘は希望そのものだ。学費を払うために、フーゾクっていうんですか? その仕事をしているところを私に見られたというんです」
なぜ、そこまで夫の管理下に置かれている娘が、性産業の仕事にアクセスできたのだろうか。
「コロナ禍です。コロナで孫娘の学校がオンライン授業に切り替えた。学校から支給されたタブレット端末で、娘は自分の置かれている状況がモラハラだと知った。そこで、何かのサイトで自分と同じ状況にある人々の投稿を見て、フーゾクの仕事を知った。独身時代にもらったテレフォンカードでお店に電話したそうなんです」
学校支給のタブレットはアダルトコンテンツにアクセスできない。それに書き込みもできない。家の電話は婿が管理している。娘はどうしたのだろうか。
「今、娘が働いている会社の連絡先を調べて、独身時代にもらったテレホンカードで公衆電話から連絡したそうです。なぜ親を頼らなかったかと聞くと、“迷惑をかけたくなかった”って」
これは推測だが、おそらく娘は親を信用していなかった。すべてを受け入れて、モラハラ夫の支配から親が助けてくれるとは思ってもみなかったのではないか。
「確かに、ウチにはもう金がない。息子の方に金をかけすぎてしまった。だから、孫娘の高額な学費は払えない。でも娘がそんな稼業をしていること、させていることも受け入れがたい」
金があればすべては解決できるのか……と聞かれると、疑問が残ると言う。
「ただ、私たちにもっと経済力があれば、娘を離婚させてウチにしばらく引き取ることはできるのですが……それはさすがに近所の目もありますから。私もそうですが、家内がそういうことを気にするので……」
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。