父との同居を決めたとき、母親は僕に「ありがとう」と言った

両親の離婚は歩さんが結婚した27歳のとき。その2年前に姉は嫁いでおり、歩さんの結婚のため、母親は離婚を待っていたとか。

「僕が結婚して3か月後に、両親は離婚しました。両親の話し合いは1年近くに及んでいて、僕の結婚もそのぐらいから決まっていったので、被らないように、離婚が先にならないようにと待ってくれていたみたいです。

母は、父が仕事を勝手に辞めてきたことへの不信感と、今まで以上に一緒にいることを求められたことで、疲れてしまったんじゃないかな。父は働いている頃から一人で四国のお遍路に行ったりなど、旅行熱が年々上がっていっていた感じで、リタイアしてからは自分だけでなく母親と楽しみたかったんでしょう。それが母からしたら負担でしかなかった。熟年夫婦のバランスを父親は勝手に壊したんです。別れる時はお互いに納得している感じだったので、子供の自分が言うことは何もありません」

そして、奥さんも了承してくれたことで歩さんは父親との同居を始めます。

「両親で仲良く暮らしてくれるなら、同居なんてまったく考えていませんでしたよ。父親を選んだのは、より一人にしているのが心配だったから。どうしても男性のほうが、年を重ねるごとに人付き合いや趣味の幅が女性よりも狭い感じがするんですよね。父も今まで仕事と、自分に合わせてくれる家族としか向き合っていなかった人。そんな不器用な老いた父を、今さら一人にはできなかったんですよね」

一緒に暮らそうと言ったのは歩さんから。そのことを知った両親の反応はどうだったのでしょうか。

「父はプライドがあったのか、少し同居を渋った感じでしたね。そして母親からは『ありがとう』と言われました。その言葉を聞いて、憎んで別れたわけじゃないことはわかりました。それだけで十分です」と歩さんは笑顔で語ります。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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