転職をきっかけに親元を離れ、その4年後に乳がんを発症
加奈子さんが上京したのは転職がきっかけ。人材派遣を行う企業で事務の仕事をしていたのですが、やりがいを感じられずに3年で辞め、再就職が難航。知人に紹介してもらったところが東京の企業だったため、と語ります。
「上京する気持ちなんてちっともなくて、私は関西が大好きでした。それまではずっと実家で生活を続けていたんですが、仕事を辞めてから半年ほど何もしない時期があって、親からはゆっくり探せばいいと言われていたものの居心地の悪さを感じていて。
たまたま知り合いが東京に転勤になって、その会社で人材が足りていないと言われたので飛びついてしまいました。まったく知り合いがいない状況で東京に行くよりは、ハードルは下がるということもあって」
仕事の内容は基本的には営業事務だったそうですが、電話での営業業務なども含まれていたとか。忙しい中でも楽しく仕事をしていた中で、加奈子さんを病魔が襲います。
「乳がんでした。2年くらいずっと胸にしこりがあって、経過観察となっていて定期的に検査を受けてはいたんですが、ずっと良性のものだと言われていたんです。でもそれが急に大きくなって、表面に近いところにあったしこりなので胸の形が変わってきてしまい、焦って検査に行ったら……。
幸いにもステージは低くて、転移もなし。数日の入院で手術を終えることができて、その後は通院で治療できるものでした」
加奈子さんは、がんになった事実を両親に伝えていないと言います。
「兄にだけ言いました。しかし、両親には黙っていてほしいと言って。入院では身元保証人が必要で友人にも言いたくなかったし、兄は淡泊な部分があるのであっさり了承してくれると思いました。
兄からは親に言ったほうがいいと何度も言われましたが、毎度私が拒否するので渋々了承してくれた感じです」
親に伝えなかった一番の理由は「心配をかけたくなかったから」。しかし、両親も同じ考えを持っていたときに抱いた感情から、自分のしてきたことが間違っていた気がして……。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。