現在の日本は世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進み、超高齢社会に突入しています。人口の多い団塊世代が75歳以上となる10年後には、働き盛りの40代・50代の団塊ジュニアが親の介護に直面することになります。
そんな社会背景もあり、介護が必要になった高齢者やその家族を社会全体で支えていく仕組みである、介護保険制度が2000年4月1日に誕生しました。40歳以上の人が支払う「保険料」と「税金」とで運営されています。
日常生活で介護や支援が必要と認定されたときに助けてくれる制度ですが、皆さんは十分に理解されているでしょうか?
そこで、アクティブシニアのライフサポートを行う株式会社ユメコム代表の橋本珠美が、豊富な経験や事例をもとに「介護保険料」についてわかりやすく解説いたします。この記事を通して、「介護保険料」にまつわる基礎知識を身につけてください。
目次
介護保険料とは?
いつからいつまで支払う?納付方法は?
いくら支払うことになる?
免除されるのはどんなとき?
まとめ
介護保険料とは?
介護保険の目的は、介護を必要とする人やその家族の経済的負担が軽くなるよう社会全体で支えること。具体的には、公的介護保険サービスをそれぞれの料金の1~3割(自己負担割合)の負担のみで利用できる仕組みになっています。自己負担割合による額以外の利用料は、介護保険料と税金で補われています。
介護保険を運営しているのは市区町村。つまり各自治体です。介護保険用語では「保険者」と言います。
財源は保険者が管理していますが、50%は被保険者が支払う介護保険料でまかなわれます。25%は国が負担し、残りの25%は都道府県と市区町村で折半する仕組みです。
介護保険の仕組み
介護保険料を支払う人を被保険者と言います。年齢によって「第1号被保険者」「第2号被保険者」の2種類に分かれます。詳しくは、下記の図表をご覧ください。
いつからいつまで支払う? 納付方法は?
介護保険料は、「満40歳に達したときから生涯にわたって」払い続けることになります。「満40歳に達したとき」とは「40歳の誕生日の前日」のこと。つまり、1日生まれの人は40歳の誕生日の前月から、それ以外の人は40歳の誕生月から「介護保険料」の徴収が始まります。
40〜64歳は「第2号被保険者」
40歳から64歳までの公的医療保険加入者を「第2号被保険者」と言います。日本ではすべての国民が何らかの公的医療保険に加入するという、「国民皆保険制度」があります。代表的なものは、会社員が勤務先を通じて加入する「健康保険」と、自営業などの人が自治体を通じて加入する「国民健康保険」。それらの公的医療保険料とあわせて、介護保険料が徴収されます。
つまり、40歳から64歳までの一人ひとりが介護保険の被保険者となるのです。
65歳以上は「第1号被保険者」
65歳以上の人は、「第1号被保険者」です。65歳の誕生月になると「介護保険被保険者証」が交付されます。
第1号被保険者の介護保険料の納付方法は、公的年金から天引きされる「特別徴収」が基本です。年金が2か月に1回給付されるたびに、2か月分の介護保険料が徴収されます。ただし、年金額が少額である場合や年度の途中で65歳になった場合などは、納付書または口座振替で納める「普通徴収」となります。
いくら支払うことになる?
金額面でも、第1号か第2号かという被保険者区分が大きく関係してきます。介護保険料の金額の決定方法について、確認しておきましょう。
40〜64歳の場合
会社員や公務員のように給料をもらっている人の介護保険料は、健康保険料や厚生年金保険料と同じく「標準報酬月額」をもとに計算されます。
標準報酬月額とは、4月から6月の報酬を平均した月額によって、等級にしたもの。基準となる標準報酬月額表は都道府県ごと、また所属する健康保険組合ごとにも異なり、介護保険料の金額もそれぞれ違います。
65歳以上の場合
第1号被保険者である、65歳以上の人が納める介護保険料は、自治体ごとに決められています。
基準となるのは、介護保険の財源のうち第1号被保険者が負担すべき金額を、第1号被保険者の人数で割った金額。そのうえで、所得に応じて段階的に定められています。段階がいくつ設けられているか、そして保険料については各自治体によって異なります。
免除されるのはどんなとき?
介護保険料の支払い免除は、原則として認められていません。ただし、以下に挙げる条件に当てはまる方は介護保険の適用除外者となりますので、介護保険料の納付義務がなくなります。
減免については、介護保険を運営している保険者(市区町村)の基準により定められています。
<適用除外者>
・海外居住者(日本国内に住所を有さない人)
・適用除外施設の入居者(身体障害者療養施設やハンセン病療養所など)
・短期滞在の外国人(在留資格1年未満の人)
加えて、65歳以上の第1号被保険者の方は、次のような理由により保険料の納付が困難な人を対象に、保険料の徴収猶予や減免があります。
1:災害により住宅等に著しい損害を受けた場合
2:主たる生計維持者が死亡・長期入院・失業・災害農作物の不作等により収入が著しく減少した場合
3:生活が著しく苦しい場合
※上記3に該当するには、収入や預貯金額、不動産保有状況、扶養者など、条件を満たしている必要があります。(市町村により基準は異なります)
まとめ
介護保険制度は、3年ごとに見直されていることをご存知ですか? 介護保険を運営する自治体は、国から出される介護保険制度の見直しに合わせて介護保険事業計画を策定し、3年ごとに必要な費用や介護保険料率を決定、見直しをしています。
また、介護保険料は「単年度で収支が均衡するように保険者が定めること」と定められているため、保険料率は毎年の収支に合わせて変わる可能性があります。実際に、ほとんどの自治体(=保険者)で、毎年保険料は上昇しています。
公的医療保険料や公的年金から自動的に天引きされているとはいえ、「介護保険料」については意識しておきたいですね。
●構成・編集/末原美裕・貝阿彌俊彦(京都メディアライン・http://kyotomedialine.com)
●取材協力/橋本 珠美(はしもと たまみ)
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)