若手が求める「やりがい」

「連鎖退職の一例」としてバーを挙げましたが、これは今や、特定の業界の話だけではありません。
現在の若手の転職のあり方として、2つのポイントが、このバーの話と一致します。

まず、ひとつ目として「人」の影響です。
リクルートキャリアの調査[2]を見てみましょう。
「転職先への入社を決める際に、誰から影響を受けたか」という質問(複数回答可)に対して「影響があった」「やや影響があった」と答えた人の割合は、

配属される職場の職場長責任者 44.9%
入社企業の人事 32.4%
友人・知人 27.4%
入社企業の経営者 23.9%

といった具合で、転職者は「会社」ではなく「人」についていくという傾向が明らかになっています。

もう一つは、何を「やりがい」と感じるかです。

こちらもリクルートキャリアの調査[3]ですが、「転職で実現したいこと」に関する項目について「あてはまる」「どちらかというとあてはまる」との回答が多かったのは上から順に、

仕事のやりがいを感じられる 95.1%
経験や能力が活かせる 91.6%
専門性やスキルの習得等、仕事を通じて成長できる 90.6%

であり、「年収が上がる」(78.4%)を上回っています。
これは、学習意欲の高さを反映したものと思われます。

バーテンダーが「雇われ店長」を脱し、次のステップを求めるのと同じです。
そして、「組織の中で立場を上げる」ことよりも、興味が湧いたものを学べる場所へ、そちらが面白いとなると学んだことを活かせる場所へ、という転職を繰り返していると考えられます。
それも、幅広い分野に関心を持ち、自分の興味やキャリア形成に役立つ最新のものに敏感です。
私も、件のバーで色々な若者と会話をする機会がありました。
彼らの話を聞いていると、チャレンジ精神が旺盛です。
最初の企業で身につけたことや合間を縫って勉強した経験を活かすために、早い段階で起業することが多いことに驚きました。

若手に魅力を感じさせる企業とは

「終身雇用」という概念がない彼らは、「仕事中心」の生活を嫌います。
しかし、学べる場所や、それを実行に移せる場所があれば、仕事を「学びの場」として、生活の一部として、楽しんで続けます。

残業や長時間の拘束を嫌う理由のひとつは、ここにあります。
自分たちの学んだことやアイデアを真摯に受け止めてくれたり、実行する場所を提供してくれる場所となると最良の環境でしょう。

可能であれば事業として許可してしまうのです。
新しいことを学んだからといって、本業にはなんの関係もない、的外れなことを言う社員だけではありません。

ここで思い出したいのは、カーネギーの言う「人に好かれる6原則」です。

1)誠実な関心を寄せる
2)笑顔を忘れない
3)名前を覚える
4)聞き手にまわる
5)関心のありかを見抜く
6)心からほめる

また、重要なのは、優秀な人材であっても、会社が彼らのレールを敷いてはいけないということです。
会社側が描く「彼ら像」を押し付けるのではなく、彼らが関心や興味から自由に描くレールの行き先を見守ることが重要です。

彼らの本業以外での学びから、会社にとっても成長のきっかけを掴める可能性があります。
むしろそれを「楽しみだなあ」という心構えが上司には求められます。
だいたいにおいて、「デキる」人間は、「何をやらせてもデキる」ものです。
彼らの求めるものを、まず「与え」、企業が彼らから学ぶという姿勢が必要です。

【参照】
[1]「1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査―『エン転職』ユーザーアンケート―」(エン・ジャパン株式会社、2019年9月)
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2019/19432.html
[2]「リクルートエージェント転職決定者アンケート集計結果」(株式会社リクルートキャリア、2018年6月)
https://www.recruitcareer.co.jp/news/20180626_01.pdf
[3]「リクナビNEXT登録者アンケート集計結果」(株式会社リクルートキャリア、2018年7月)
https://www.recruitcareer.co.jp/news/20180726.pdf

* * *

いかがだっただろうか。新入社員にとって、魅力的な会社、やりがいのある仕事の環境を作りあげていくことが退職の防止に重要である、ということがおわかりいただけただろうか。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

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