【ビジネスの極意】モテる人は、なぜマネジメントがうまいのか?

「モテる人」というのは確かにいる。そして「モテる人はマネジメントがうまい」という説がある。 本当だろうか?

マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研」より、「モテる人はマネジメントがうまい」という説を検証してみよう。

* * *

「モテる人はマネジメントがうまい」という説は正しそう

ビジネスシーンにおいて、人を見た目で判断することはよくないことです。ビジネスパーソンは、仕事の内容や実績や創造力で評価されるべきです。また、職場で同僚や上司のことを「色っぽい女の子」「セクシーな男性」と評価することはセクハラに該当しアウトです。

しかしビジネスではどうしても人と人、男と女が濃密に接触するので、好き嫌い、格好いい不細工という感情の起伏が生じます。職場内不倫がなくならないのはその証左です。

そしてその感情が、仕事のパフォーマンスに影響してしまうことは、誰もが経験しているのではないでしょうか。例えば「あの上司のために頑張ろう」「あいつの功績になるのなら手を抜く」といったことは、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

そこで「モテる人はマネジメントがうまいのではないか」という仮説を立て、「モテ」が管理職の仕事を円滑に進めることを検証してみます。

モテることと見た目について

まずはビジネスと切り離した「純粋にモテの話」についてみていきましょう。

恋愛や憧れにおいて、モテるとはどのような現象なのか探っていきます。

九州大学知覚心理学准教授の妹尾武治氏によると、若いこととやせていることがモテにつながることは科学的に証明されています[1]。テレビやファッション雑誌などで「格好いい」「スマート」とされている「見た目の見本」は、人の心を動かす力を持っているのです。

どのようにしてモテる人はつくられるのか

モテは、好かれる回数で決まります。そして幸不幸の判断は介在しません。

例えば、生涯で初めて愛を告白され、その人と結婚し、幸せな家庭を築き、その後誰からも愛の告白をされなかった人は、モテていません。

逆に、理想の恋人に巡り会えないと嘆いている人でも、半年に一度は誰かから愛の告白をされていればモテる人といえます。

重いクリップボードとホットコーヒーで好印象になる

先ほど紹介した妹尾氏によると、誰かが誰かを好きになるときめきは、いい加減に発生します。

ある人物の顔写真をクリップボードに挟んで被験者に見せて、その人物の印象を尋ねた実験があります。

A群の被験者には高価で重量があって立派なクリップボードを使い、B群の被験者には安くて軽くてチープなクリップボードを使いました。顔写真は同じものを使っています。

するとA群のほうがその顔写真について「重要人物っぽい」「慎重そうな性格」と回答する確率が高かったのです。

次に、A群にホットコーヒーを飲んでもらってから顔写真の評価をしてもらいました。B群にはアイスコーヒーを飲んでもらってから顔写真の評価をしてもらいました。こちらも同じ顔写真を使っています。

するとA群のほうがその顔写真について「優しい性格」「温かみがある人」と回答する確率が高くなりました。

このように相手に好意を持つ感情は、クリップボードやコーヒーの質といった周囲の環境によって大きく変化するほどいい加減なのです。

だまされて人を好きになることはない

恋愛感情がいい加減であるなら、恋愛ではだましのテクニックが有効であるかというと、そうでもないのです。

次に紹介するのも妹尾氏の説です。

顔の造作や体重やスタイルなどの外見が「標準な人」を複数の太った人と並べてみて、被験者に「標準な人」の印象を尋ねました。

これとは別に、その「標準な人」を、複数のいわゆるイケテナイ人と並べてみて、被験者に「標準な人」の印象を尋ねました。

その結果、太った人と並んでいても「魅力がある」とは認定されませんでした。イケテナイ人と並んでいても「イケテル人」という印象を持たれることはなかったのです。

妹尾氏は、恋愛でだましのテクニックが通用しないのは、人間は性の淘汰によって賢くなっているからだ、と結論付けています。

つまり人はモテない人を見抜く力を持っているのです。

モテは「影響を受けるがだませない」

以上のことは、次のようにまとめることができます。

重いクリップボードとホットコーヒーの実験からは、

・周囲の環境の影響を受けてモテ度が変わることがある

ということがわかります。

だましのテクニックが通用しない実験からは、

・モテない事実はだましようがない

ということがわかります。

モテは、影響を受けるがだませないのです。

マネジメント(管理職の仕事)の基本

それでは次に、恋愛モテ話と切り離して、マネジメントの仕事を概観しておきましょう。ここで管理業務の基本を押さえておき、次の章で「モテ論」と「マネジメント論」を合体させます。

管理業務はマネジメントの大きな仕事の1コマにすぎない

ドラッカー経済学を信奉する専門家のなかには、マネジメントやマネージャーを「管理する」「管理職」と訳すことに疑問を呈する人がいます[2]。

管理に対する英語はコントロールなのです。

ただ、管理やコントロールは不要なわけではありません。管理職は、職場内の安全衛生やスタッフの健康に関すること、さらに顧客対応などは、しっかり管理・コントロールしていかなければなりません。

しかしビジネスのエンジン役となる、管理職の最も重要な業務としてのマネジメントは、管理やコントロールではありません。

管理職が専念しなければならないのは、スタッフの創造性を引き出すことです。

管理職はどうやってスタッフの創造性を引き出したらいいのか

それでは管理職は、どのようにしてスタッフに創造的な仕事をさせていったらいいのでしょうか。ドラッカーはその答えも用意していて、それはスタッフの強みを仕事に反映させることです[2]。

スタッフに強みを発揮させるには、管理やコントロールはむしろ邪魔になります。なぜなら、人は誰でも少なからず言い訳をしたがる習性を持っているので、管理された途端に「管理方法がおかしいからパフォーマンスを発揮できなかった」といい始めるからです。

つまり管理やコントロールは、創造的な仕事をしようというモチベーションを減らしてしまうのです。

管理職がすべきことは、スタッフとの対話です。対話の中でスタッフの強みを見出し、それを業務に応用できるようアドバイスすればいいのです。

さらにドラッカーは、従業員たちの弱みは、健全な組織のなかでは無意味になるとも述べています[2]。

健全な組織とは、管理職が正しいマネジメントを遂行している組織のことです。健全な組織では、スタッフたちの強みだけが伸びていき、弱みが足を引っ張ることがないのです。

また管理職は、創造的な仕事をするスタッフの労働を、コストと考えてはいけません。質の高い労働は資産と考えるべきなのです。

コストは減らすべき要素ですが、資産は増やすべき要素です。

もちろん経営が傾いている会社では、管理職は労働をコストと考え、リストラを敢行しなければなりません。

しかし健全な組織の管理職は、質の高い労働を提供している人材を資産と考え、どんどん増やしていかなければならないのです。

なぜモテる人はマネジメント業務もスマートなのか

それではモテとマネジメントの関係をみていきましょう。「モテる人はマネジメントが上手」という説の正しさを立証していきます。

モテる管理職は「スタッフに快を与えることができる」からチームのパフォーマンスが上がる

モテている人は、モテるために努力をしているはずです。クリップボードとホットコーヒーの事例を思い出してください。重量感がある高価なクリップボードは顔写真を重要人物に見せ、ホットコーヒーを飲むと人は他人の評価が甘くなるのです。

モテている上司を好きになる部下たちは、上司の本質だけでなく、上司の周辺環境によっても影響を受けてしまうのです。

モテる上司の周辺環境とは、どのようなものでしょうか。

それは、整った身だしなみかもしれません。もしくは、控えめな言動だったり、厳しさのなかに忍ばせた優しさだったり、部下の失敗を責めない責任感だったり、確実な実績かもしれません。

周辺環境によって上司のことを好きになってしまった部下は、上司のために仕事をすることが「快」になります。

同じスキルの2人の社員がいて、片方は快く仕事をしていて、他方は嫌々仕事をしていた場合、快く仕事をしている社員のほうが高いパフォーマンスを上げる確率が高くなります。なぜなら快く仕事に取り組むと、創意工夫を重ねたり、上手に早く仕上げようという気持ちが生まれるからです。

「上司を好きになる」という快を得た部下たちは、自分の強みを発揮することに躊躇しなくなるのです。そういったスタッフが多くいる部署は業績が上げやすくなるので、モテる上司はマネジメントが上手、といえるのです。

モテない管理職は必ず部下に見抜かれる

ドラッカーによれば、部下たちの強みを引き出したり、部下に創造的な仕事をさせたりするのは管理職の仕事です。そういった仕事ができる管理職は有能です。

逆に、部下たちの弱みばかりを批判して、「スタッフがダメだからうちの部署は売上が伸びないんだ」と言い張る上司は、無策の管理職です。

ここで、恋愛感情はだませないことを証明した実験を思い出してみてください。モテない人が複数のイケテナイ人のなかに入ってもモテるようにはなりません。

「モテる人」を「有能な管理職」に、「モテない人」を「無策の管理職」に置き換えると、次のことがいえます。

・無策の管理職が、より能力が低い管理職に囲まれたからといって、高い評価を得られるわけではない

例えば、パワハラ上司に悩まされてきたスタッフが、人事異動で無策の上司の部署に配属されても、そのスタッフは無策の上司を頼りにしないでしょう。

スタッフは、どのような状況にあっても無策の上司を見抜くのです。

よって、部下からモテる有能な管理職になる近道は存在せず、自分を磨くしかありません。「ほかの管理職よりはまし」だからといって、部下の強みを引き出すといった真っ当なマネジメントはできません。

モテている管理職はフェイタル・アトラクションに注意

部下や経営者たちにモテていて、そのため仕事が順調に進んでいる管理職は、フェイタル・アトラクションに注意してください。せっかくモテていても、その環境が一変することがあるのです。

心理学者の内藤誼人氏によると、恋愛の初期に相手の長所と感じていた部分が突如、欠点に感じることがあり、それをフェイタル・アトラクション(致命的な魅力)というのだそうです[3]。

恋愛当初「頭がいい」と感じていたのに、後に「知識をひけらかす」と感じるようになることがあるのです。魅力が欠点に180度変わった感情はとても強く、破局に直結するくらいの致命傷になりかねません。

モテている管理職はモテていることに安住してはいけないのです。

まとめ~ビジネスでのモテは恋愛とは違うモテ

モテることと見た目は、確かに無関係ではありません。しかし自分の見た目に自信がなく、実際に恋愛でうまくいっていない人でも、ビジネスシーンでモテることはできます。

なぜなら、ビジネスと恋愛では生み出すものが違うからです。

恋愛の究極の報酬は優秀な子孫です。それで、恋愛では「見た目のよいパートナーを見つけたほうが将来の自分の子の幸せにつながるかもしれない」という考えが働くので、若くてやせていてルックスがよい人がモテるのです。

しかしビジネスでの報酬は、高給や成功、やりがい、アイデンティティの確立などです。
つまりモテる管理職とは、部下に成功やアイデンティティなどを与えられる人なのです。世間で崇め奉られている美を持っていない人でも、部下や経営者からモテモテの管理職がいるのはそのためです。

ビジネス上のモテは、見た目とは関係ありません。

【参照】

[1]http://senotake.jp/dl/44.pdf脳がシビれる心理学 恋愛心理学編(妹尾武治、九州大学)
[2]https://business.nikkeibp.co.jp/article/skillup/20140620/267249/?P=1管理職の仕事を勘違いしていませんか(経営コンサルタント、藤田勝利、日経ビジネス)
[3]https://prestige.smt.docomo.ne.jp/article/44150恋人を好きな理由が「わかる」方が長続きしない!(心理学者内藤誼人、立正大学特任講師)

* * *

いかがだっただろうか。異性間の恋愛の「モテ」とビジネスでの「モテ」は似て非なるものではあるが、どちらにも共通するのは人間的魅力、といったことだろうか。そして、大きく力づけられるのは「ビジネス上のモテは、見た目とは関係ない」ということである。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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