男女の関係になったのは、彼女のリードだった

「お酒飲んで風呂に入ってくるんだから、そりゃ気分も悪くなるよ。私のTシャツを着せて、ベッドに連れて行って寝かせたら『一緒に寝ようよ』と甘えて来る。その日は暑かったから私も短パンをはいていたんだけれど、彼女の足が絡められたり、腕や背中を触られたりして不思議な気持ちだったよ。人間って、肌と肌が触れ合っていないと、心が乾いていく生き物なんだと初めてわかった。彼女といると初めて気づくことが多い」

気がついたら土曜日の昼だった。彼女は無防備に眠っていた。服を着ているときは気が付かなかったが、下半身にはアラフォー女性特有の力がなくなった肉がたっぷりとついており、肌が白くなめらかで、生々しかったという。

「そのときに、『この人はこれから結婚して子供を産む女性なんだよな』と思ったんだよね。しかし、彼女は同世代の男にいい感情がないみたいで、結婚の話を避けようとする。今でもそうなんだけれど、彼女がなんで私に魅かれたのか、全くわかっていない。自分の生活圏や心を乱されたくないこともあって、誰にも何も言っていない。ただ、この日から、彼女は金曜日の夜にウチに来て、土曜日の夕方に帰っていくというルーティンができてしまった」

男女の関係になったのは、彼女のリードだったという。

「ああいうことにかけては、女性のほうが強くて男は飲み込まれていくだけだと思う。女房もそうだった。あとは『自分にもできるんだ』という気持や、いろんな余裕のなさ、体力の衰えなどいろいろ感じて、情けなくなった部分もある。何しろ、15年ぶりだから、体のあちこちが痛くなったよ」

彼女と会ってから、ネットで回春に効果があるサプリメントを購入して飲み続けたという。それでも、西村さんと話していて感じたのは、他人を必要としていない「どこか冷めた心」だ。

「来週、彼女の誕生日なんだけれど、2人で温泉に行く計画を立てている。自分からこういうことを考えることも初めてなんだよね。きっと、彼女はいつか女房のように、私に愛想を尽かして去っていくと思う。でも、それまで一緒にいい時間を過ごせたらいいと思う。ひょっとしたら、これが私の最初で最後の初恋なのかもしれないね」

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。

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