写真SNSで見つけた最後の恋の相手
結局、篠原さんは、最後の恋の相手を、写真SNSで見つける。
「教え子たちとの交流をするために、SNSはわりと早めにやっていたんだよね。写真SNSは妻が入院したあたりから始めていた。匿名なのがいいし、いろんな画像が出てくるから、旅や温泉、歴史のことを調べて、妻と『退院したら行こうね』などと話していた。妻が亡くなってから1か月ぶりくらいに開いたら、いつも見ているアカウントの人からメッセージが来ていて、『最近、アクセスされていないようですが元気ですか?』と書いてあった。それで妻のことを書いたら、心がこもったメッセージをもらった。その後、なんとなくコメントを入れたり、イイネをつけたりしてやり取りをしていたのが1年程度かな。私の投稿に対し、その人がイイネを付けてくれると、なんとなく心が温かくなった」
そんなやり取りを続けるうちに、その人と会うことになった。相手は関西地方に住んでおり、東京に出張に来るという。
「待ち合わせのレストランに来たのは、女性だった。アカウント名も投稿の内容も男性っぽいし、東京に出張に来るほどの仕事をするといえば、男性だと思い込んでいた。そしたら女性が来るんだもん。すごく驚いたよ」
相手は東京に本社がある、そこそこ大きな会社の正社員だった。
「バツイチで、私より10歳年下で、ホントにポッチャリしているんだよね。ショートヘアだし、化粧は濃いし、見た目は全然好みじゃない。でも、笑うとキレイな歯が見えて、清潔感がある。彼女は、銀座のいいホテルに泊まっていて、そこまで送った時に、血がたぎるような感じがした。これはすごく久しぶりの感覚だった」
それから2か月間、SNSと電話での直接の会話で、距離を詰めていく。旅という同じ趣味があること、彼女が昔、教師を目指していたことなどで、話題は尽きることがなかった。
「初めて会ってから半年後、一緒に温泉に行こうかと向こうから言われて、私も乗ることにしたんだよね。私はオクテなのにプライドが高いから、女性がリードしてくれないと何も始まらない。でも、女性からぐいぐい来られると嫌になってしまう。めんどくさい奴なんだけど(笑)、彼女の誘いは嫌ではなかった。1泊2日で温泉に行くことにしたんだ」
彼女は想像以上に美しい体を持ち、積極的だった。
「個室風呂がある部屋を彼女が予約してくれて、まあ、そういうものかな……と。ドキドキしながら風呂に入っていたら、彼女が入ってきた。月明かりに真っ白な体がすごくてね。子供を産んでいないからか、体が若い。まあこれ以上はアレだけど、まだ自分は男としていけているんだという自信につながった」
旅行から帰ってきた後は、遠距離恋愛を続けている。
「一度、体に触れてしまうと、離れがたくなって、月に1回のペースで旅行をしている。でも、いずれは一緒に住みたいと思っているんだよね。彼女はもともと東京出身だから、本社に異動になればいいと思っている。でも、彼女があまり乗り気じゃないような気がする。離婚してから15年間、自由な生活を続けてきて、今更、男と住むのは嫌なんだろうと思っている。仕事も充実しているようだし、収入もある。だから今更男なんていらないよね。私も、娘に子供が生まれるなどして忙しくなってきたから、焦らず、関係を進めていければと思っているよ」
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。