17年間も嘘をつかれていた。そんな思いが離れなかった
本当の父親ではない事実を聞いた後も表面上は今まで通り過ごしていたものの、徐々に百合香さんの中で煮え切らない思いが巡ってきたと言います。
「今まで通りを“意識して”行っていたという感じです。その頃は反抗期も終わっていたけどそこまで親と仲良くしている時期じゃなかったので、食事の場ではいつも通りそこまで会話もなく。話し出したほうが気を遣っていると思われるのかなとか、今まで父親の後のお風呂は嫌がっていたけど同じでいいんだよね?って、自然にできていた普通の行動を考えて行っていました。友人たちの中でもそんな話聞いたことなかったし、弟は両親の子なので誰にも相談できなかった。祖父母に相談してもそのことがもし両親の耳に入ったらと怖かったから。自分の中で処理しようと必死でした」
煮え切らない思いの中には、なぜもっと早く教えてくれなかったのかという辛さも出てきたとのこと。
「何も知らずに17年も生きてきたんです。それが一番嫌でした。自分のことなのに教えてもらえずに、極端な言い方をしたらずっと嘘をつかれていたということ。そんなに言えなかったということは両親の中では重いことだったんだろうなって、ずっとそのことを意識して育てていたのかなって。話を聞かされた時に働き出してから話そうと思っていたと伝えられたけど、17年間でまだよかったと思いました。早まったことだけは、今まで一度も会いに来なかった本当の父親に感謝したいぐらいの気持ちでしたね」
そして、百合香さんは実父に会わない選択をして、現在に至るまで一度も会っていないそう。そこにも少し後悔の思いがあるそうです。
「その時は、私からしたら知らないおじさんでしかないのに、会いたいとは思えませんでした。今いる両親へのもやもやした思いでいっぱいだったので。私の母親と実父は私がまだ母親のお腹の中にいた頃に離婚しているんです。そして父親は現在再婚して新しい家庭があるみたいで、17歳まで一切連絡はなかった。なんでそんな人に振り回されないといけないのか意味がわかりませんでした。当時はそんな思いでいっぱいだったんですが、今思うと一度くらい会っていたほうが良かったのかなって思います。実父は50歳前で亡くなったと聞いています」
遠慮していたのは父親じゃなく私。母親になったことで子どもへの愛情を知ることができた。【~その2~に続きます。】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。