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取材・文/柿川鮎子

夏毛に代わるこの時期は、ペットの抜け毛の多い時期でもあります。毛が抜けるのは自然なこととはいえ、この時期だからこそ、飼い主さんが注意しなければならないヘルスケアのポイントがあります。今回はひびき動物病院院長岡田響先生にペットのいる家の抜け毛対策について教えていただきました。

ペットの被毛の基本知識

犬の被毛は犬種によって差があります。様々な環境で人と犬が生活するために犬種を作出してきた歴史があります。寒冷地で過ごす犬種では、ダブルコートといって、見えている被毛の毛の下に、保温のための下毛(アンダーコート)が生えています。

一方、シングルコートの犬種は下毛が生えていません。ヨークシャーテリアやパグ、マルチーズなどはオーバーコートという上毛だけで体が覆われているため、寒い時期は保温するためにウエアを着用する機会が増えます。

猫にもシングルコートとダブルコートがあり、シングルの代表はシャム、ソマリなど。ダブルの代表はスコティッシュフォールド、アメリカンショートヘア、ロシアンブルーなどです。

この子をブラッシングした時にとれた毛でつくった猫のマスコット

犬も猫も春と秋に気温の変化に合わせて毛量を調節し、気温に合わせた体温調節を行うために換毛します。今の時期は夏の熱中対策のために、自然に下毛が抜けます。

岡田先生によると、「毛の構造の基本形をみると、皮膚の毛根から斜めに生えている太い毛が1次毛(オーバーコート)です。その1次毛を取り囲むように細い2次毛(アンダーコート)が2~20本程度、1次毛を囲むように配置して生えています。

アンダーコートは一定の時期になるととてもたくさん抜けます。そういう点から、ペットショップなどでは“アンダーコートがない犬のほうが毛が抜けにくいので飼いやすい”と勧められることもあるようです」と教えてくれました。

換毛期は栄養バランスに配慮

では実際、ペットに換毛が見られたらどうしたらよいのでしょう。岡田先生によると、「換毛時期だからこそ、栄養や体調を注意深く見る必要がある」と訴えています。

「毛を維持するには栄養が必要になります。犬や猫の毛は1本あたり1日平均して約0.3ミリメートルほど伸びます。全身には小型犬でも100万本以上の毛があるため、1日トータルすると1頭あたり300メートル程度の長さの毛を作っている計算です。

毎日、約300メートルの被毛をつくるために、エネルギーとバランスのとれた質の良い栄養が必要なことが、容易に想像できますね。

普通の状態で約300メートルですから、換毛期はもっとたくさんの被毛を作らなければいけません。もちろん、個体差はありますが、体力的な負担が大きくなる子がいてもおかしくはないし、普段から栄養バランスが悪い子では、換毛期に皮膚のトラブルを併発したり、元気がなくなることがあるかもしれません。

ですから、普段の食事内容や、食欲あるなしの確認が大切になります。普段から栄養バランスの良い子は、ぱっと見ただけでも、被毛がつやつやしていることが多いのです」と岡田先生。

抜けるからと無理に引っ張るのはNG

さらに注意点として、「換毛時期になったからといって、飼い主さんが強い力で引っ張って、無理に抜いてはいけません」と教えてくれました。

「皮膚が敏感な子は特に毛を引っ張ると異常や痛みを感じ、ストレスを受け、飼い主さんが被毛に触るのを嫌がるようになってしまうので注意が必要です。

コームやスリッカーなどで優しくグルーミングしてあげてください。お手入れのための道具はたくさんあります。その中でその子に合った良い道具に巡り合えると、ペットも飼い主さんも快適ですし、これまで以上に良い関係を築くことができるきっかけにもなります」と教えてくれました。

「普段から被毛のお手入れをしていれば、いつもよりも毛が多く抜けているかどうかの判断もできますし、自宅にいながら飼い主さんがペットの健康チェックをすることも可能になります。

飼い主さんが自宅で実施するグルーミングの効果としては、虫がついている、地肌が赤い、発疹のようなものが見られるなどの異常に気が付きやすくなります。また、しこりを発見するなど、ペットにとって怖い病気の早期発見にもつながります。お手入れをしていて、何かいつもと違う事を発見した場合は、なるべく早く獣医さんに相談してみてください」とアドバイスしてくれました。

猫は特にこまめなブラッシングが必要

猫の場合は犬よりもさらにブラッシングが欠かせません。マッサージのように気持ちよく出来る子もいますが、猫の気質として、長時間のブラッシングは基本的に嫌がります。岡田先生は、嫌がる場合は、一度に全身をすべてやろうとするよりは、こまめに何回もブラシするやり方を勧めています。

「長毛の子は毛玉になると、たいてい一個だけではなく複数個が形成されてしまい、毛玉と毛玉が繋がり、毛玉が大型化する傾向があります。全身が毛玉状態になることもあり、大きな皮膚が引っ張られて、その部分が炎症を起こすこともあります。

毛玉ができてしまったら、なるべく早めに切ってしまうか、動物病院での受診が必要です。そうならないためにも、ブラッシングはこまめにしましょう。これは猫だけでなく、毛の長い犬でも同じです」。

健康的な吐き癖は無い

身体をなめる習性から、猫は毛を飲み込んで起きる毛玉のトラブルが発生することがあります。特に換毛期は、動物病院でも比較的顕著に消化器症状の相談が増えているそうです。普段から無駄な毛を取り除くことで、毛づくろいで大量の毛を飲み込む事故を防ぎましょう。

「ここで注意してほしいのは、犬でも猫でも“健康的な吐きグセ”というものはない、ということ。「うちの子は吐き癖があって……」というのをたまに聞くことがあります。もしも日常的に嘔吐が繰り返されているようでしたら、それは何かトラブルのサインである可能性があり、注意が必要です。

どんなに元気でも、嘔吐を繰り返し、食べたものが逆流する回数が増えると、胃腸や肝臓、膵臓などのトラブルにつながってしまうことが多いのです。これらはたいてい見過ごされてからの来院となるので、重症化してからのケースも少なくありません。

ですから、病院に来院された子が毎週吐いてる、と聞くと、こういう内臓のトラブルも考え、検査をお勧めすることがあります。同時に毛玉対策をお願いすることになるでしょう。吐いているならそれを減らす努力をするべきです」と、岡田先生は嘔吐について注意を促しています。

換毛期のシャンプーは泡がポイントに

換毛期のケアに関して、岡田先生は「犬はシャンプーが効果的です。しかし、濡れっぱなしは毛玉を作るきっかけになるので、必ず風乾させてください。同時にブラシしながらできれば、もっと効果的です。トリミングをご利用いただくのも有効で、持続する抜け毛対策のその後のお手入れは随分楽になるはずです。

猫にもシャンプーは有効ですが、たいてい激しく嫌がるため、無理にはおススメしてません。猫の場合は、ブラッシングが基本と考えています。

シャンプーのコツは泡洗いです。泡の洗浄力を利用してやさしく洗うこと。飼い主さんがゴシゴシと強くこする必要もありません。よく泡立ててからやさしく洗うことで、犬も嫌がらず、人間よりもデリケートな皮膚をいたわりながら洗う事ができますよ。シャンプーを良く泡立ててやってみて下さい。

自宅でシャンプーがうまくできなかったり、爪切りだけやって欲しいといった相談も、かかりつけの動物病院で受け付けている場合があります。特に普段から毛玉の処理に困っている飼主さんは、気軽に動物病院に相談してみてください。

その他、うちの病院で多いのは、毛玉をハサミで切ろうとしてザックリ皮膚を切ってしまう事故です。あわてて来院される飼主さんは少なくありません。もしもの時は飼主さんは焦らずに、まずは動物病院に電話をして連れてきてください。そしてハサミを使う時は十分注意して下さい」。

換毛期のお掃除のコツ

換毛期の部屋の中の抜け毛は、早めに始末してしまいましょう。基本的には掃除機で吸い込むのと同時に、粘着カーペットクリーナーでコロコロするのが一般的です。飼主さんの間でも掃除には何が効果的かと、話題になります。掃除機は使い勝手で好みが分かれるようですが、粘着カーペットクリーナーは定番品のようです。

ある飼い主さんは「うちの子はかたい毛質で絨毯などの繊維に引っかかってしまうんです。コロコロも高いやつじゃないとうまくとれないんですよ」と言っていました。確かに安いコロコロは吸着力が弱い、紙をめくりにくい、などイライラすることがありますね。

動物病院のお掃除を岡田先生に聞いてみると、「基本的には掃除機をかけたいのですが、診察時間中はモップや床用ワイパーで落ちた毛を取り除いています。掃除機だと、ペットが音などで怖がってしまうからです。診察をスムーズにするためにも、コロナ予防のためにも、とにかくまめにやるようにスタッフにもお願いしています」とアドバイスしてくれました。

写真は小型犬を2頭飼育されている家庭で出てきた毛のごみです。普段お掃除していても、換毛時期には、こういう毛のごみが大量に出ます。

次の写真は別のお宅の、レンタル空気清浄機のフィルターの写真です。

これでは空気清浄機能やエアコンの冷暖房機能が極端に落ちてしまいます。余計な電力もたくさん使うので、本格的な夏を迎える前に、ぜひお掃除しておくことをお勧めします。

エアコン掃除、モップや空気清浄機レンタルなども、ペットの飼い主さんの役に立つサービスです。レンタルの良い点は定期的に交換メンテやお掃除をしてくれること。こうしたペットと家族のためのアウトソーシングサービスも、上手に利用したいものです。

岡田先生によると、「こういう毛と埃のたまる部分に、いわゆるハウスダスト(イエダニやチリダニなど)やカビが溜まり、健康被害を及ぼすケースがあります。私は子供が喘息もちなのと、学生時代からの設備屋さんの友人に空調について教育されてきたのもあり、空気の汚れもわりと気にしています。お部屋の中も、エアコンも、どこでもこまめにお掃除することがペットと家族の健康維持にも大切ですよ。

人間と同じように、犬猫のハウスダストに関する血液検査(アレルギー検査)もいつでもできます。ハウスダスト陽性の犬のアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎には減感作療法という治療もできるんですよ。詳しくは動物病院へご相談下さい」と教えてくれました。

ステイホームでペットといる時間が増えている今、換毛期でも清潔な室内で過ごしたいもの。ペットの抜け毛対策で、飼い主もペットも健康で快適なお家生活を楽しみたいものですね。


取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com


文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

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