パソコンやスマホの普及により、文字を書くこと自体が少なくなっている昨今だ。でもそんな時代だからこそ体験して欲しいのが「写経」である。
「写経の5つの心得」としてまとめて紹介する。写経について学び、写経から得られる物とは何かを考えていこう。
■写経の心得1:「身を清める」
写経を行なう際には身を清めなければならない。強い香気を持つ香辛料「丁子」を口に含み、邪気を寄せ付けないといわれる粉末の香「塗香」を掌に伸ばし、頭上には加持祈祷をされた清め水「洒水」を注ぐ。写経は仏を拝むのと同等の功徳があるとされる行為であるため、その身を清めておくのが礼儀であるのだろう。
■写経の心得2:「何のために写経をするのか考える」
写経を行なう際は「無心」が大切であるが、事前の心構えは必要である。邪心なく「自分は何のために写経をするのか」を考えておくことにより、写経を通して悟りの第一歩である心の平安を得られる。
■写経の心得3:「正しい姿勢で机に向かう」
写経では、正しい姿勢で机に向かうことが大切。しかし正座ができない場合は椅子などを用意してくれる寺もあるので、事前に問い合わせてみるのがいいだろう。
■写経の心得4:「朱墨で書き写す」
流派や寺によって異なるが、写経の際には朱墨を使用する。朱墨はかつて金と同等の貴重品とされた天然鉱物の「丹」から作られていたため、仏に奉納する写経にも価値の高い朱墨を使用していたのだそう。
■写経の心得5:「写経を奉納する」
書き写した般若心経は、寺に奉納(納経)する。写経体験などで参加した場合は当該の寺に、自宅などで写経を行なった場合は菩提寺に奉納すればいい。菩提寺が無い等の場合は大切に保管し、年越し時に破魔矢やお守りと共に燃やして供養するのも手だ。
以上、「写経の5つの心得」を紹介したが、いかがだったであろうか?
写経には、現代社会の喧騒を離れ、静寂に身を置くことによって、己の心と向かい合える力がある。功徳を積む行為と聞かされては邪念も抱いてしまいがち。そこを堪えて心を無にすることで、見えてくるものがあるのだろう。
写経を行うにあたっては、「○○のために」という邪な気持ちは抱かず、無心で行なうことが重要であるのだ。きっとその先に、「心の平安」を見出すことができるだろう。
文/田中十兄