選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
今年デビュー20周年を迎えた、1973年生まれのバンドネオン奏者小松亮太のベスト盤『小松ジャパン〜ザ・グレイテスト・ヒッツ』が面白い。
アルゼンチン・タンゴと切り離せない関係をもつバンドネオンという楽器は、蛇腹という肺のような機能を持ち、自ら呼吸する楽器という点ではアコーディオンに近いが、それよりももっと非合理的で矛盾を抱え込んだような面白さを持っている。それはタンゴというジャンル、そしてその革命家であったアストル・ピアソラの音楽に不可欠な響きであった。
小松はその伝統を継承しつつも、バンドネオンのまったく新しい可能性を追求し続けてきた。その歩みがここには凝縮されている。
たとえばネスカフェ・ゴールドブレンドのCM音楽、あるいは坂本美雨の歌「風の谷のナウシカ」主題歌、さらには葉加瀬太郎や大貫妙子との共演など、そのバラエティの何と豊かなことだろう。あらゆる音楽好きを誘引する魅惑がここにはある。>>試聴はこちらから
【今日の一枚】
『小松ジャパン~The Greatest Hitsof Ryota Komatsu』
小松亮太
発売/ソニー・ミュージック
https://ryotakomatsu.net/
販売価格/3000円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年12月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。