「サライ責任編集」CDつき隔週刊マガジン・シリーズは、2014年創刊の「ジャズ100年」、続いて「ジャズの巨人」、そして「ジャズ・ヴォーカル・コレクション」と連続刊行。さまざまな形でジャズの楽しみを紹介してきました。
そして新シリーズ「JAZZ絶対名曲コレクション」(全14巻)が、10月2日に創刊されることになりました。これまで同シリーズのCDで紹介した楽曲は900曲以上に及びますが、ジャズは奥が深いのです。ジャズにはもっともっと楽しみ方があるのです。新シリーズは、タイトルどおり「名曲」にスポットを当てました。監修・執筆はこれまで同様、日本ジャズ評論界のリーダーであり、日本でもっとも歴史あるジャズ喫茶のひとつ「いーぐる」(東京・四谷)のオーナー、後藤雅洋氏が担当します。
まずは後藤氏のメッセージを紹介します。
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ジャズとは「演奏」を聴く音楽で「曲」はそのための素材であるといわれてきました。これはジャズという「個性を楽しむコンテンツ」の聴き方を象徴した名言ですが、実際は演奏と楽曲は密接に繋がっています。たとえば「枯葉」や「星影のステラ」といった曲は、多くのミュージシャンによって歌われ演奏されるうちにスタンダード(定番曲)となりましたが、これらはたんなる演奏の素材である以前に、魅力溢れる「名曲」だったからこそ愛奏・愛聴されるようになったのです。つまり、名曲は名演を引き出す端緒であり、名演によって名曲はさらに輝きが増すのです。本シリーズではそんな「名曲+名演」を「絶対名曲」と名付け、スポットを当てました。
「ジャズに名演あって名曲なし」はジャズ・ファンにとっては有名な格言ですが、字面どおりに受けとめてしまっている方が案外多いのではないでしょうか。ジャズにも「名曲」は存在します。本シリーズのテーマはいわば「名曲で楽しむジャズの名演」。ミュージカルや映画音楽が発祥のジャズの大定番名曲だけでなく、ビートルズやカーペンターズ、サイモン&ガーファンクル、スティングなどの「ポップス名曲」もジャズ・スタンダードと同等にとらえ、ジャズマンが取り上げたその名演を多数紹介していきます。
ジャズに限らず、音楽は時代とともにあります。現代のリスナーにとっては、ガーシュウィン同様にマイケル・ジャクソンの楽曲も「名曲」として親しんでいることでしょう。演奏するジャズマンも同様です。優れたジャズマンはつねに時代の感覚に反応し、その時代の「名曲」を輝かせるのです。本シリーズは、これまでのジャズ・スタンダード観をアップデートさせ、「21世紀のジャズ・スタンダード」の新発見を試みているのです。
創刊号は「エスペランサが歌うマイケル・ジャクソン」「エラ・フィッツジェラルドが歌うカーペンターズ」「カントリーの名曲を再構築したノラ・ジョーンズ」など、「絶対名曲」のベスト・セレクションです。ジャズ・ビギナーもマニアも、きっとジャズの新しい楽しみ方を発見することでしょう。
第2号以降も、「ビートルズ」「ジャズで聴くポップス名曲」、これまでジャズ誌では取り上げられることがなかった「ポップス・シンガーのジャズ」など、斬新な切り口で「ジャズ絶対名曲」を紹介していきます。どうぞご期待ください。
文/後藤雅洋(ごとう・まさひろ)
「JAZZ絶対名曲コレクション」公式サイト:http://www.shogakukan.co.jp/pr/jazz4/
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