選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
1985年韓国生まれ、韓国と日本で育ったギタリストの朴葵姫(パク・キュヒ)の新譜『ハルモニア』がとてもいい。
セルジオ・アサド、ローラン・ディアンス、ケヴィン・カラハン、アンドリュー・ヨーク……現代を代表するギタリスト兼作曲家たちの作品が主に集められている。初めて聴く人も、1曲目から全部、きっと夢中になってしまうような素敵な曲ばかりだ。
押尾コータローと渡辺香津美へのジャンルを超えた委嘱による新曲も、自然な持ち味を生かした聴きやすい、心に響く作品だ。
朴葵姫の演奏は、清潔感がある。情に流されず、自我を出しすぎず、涼やかだが、中身が濃い。ヨークの「サンバースト」での猛スピードのパッセージなど、啞然とするくらいに巧く、リズム感も俊敏で、それが内面的な迫力へとつながっている。
しっとりと歌う作品での抒情的な歌、まろやかな音色への瞬時の変化も素晴らしい。生ギターの音色に浸る喜びを満喫させてくれる1枚である。(>>こちらのサイトで試聴できます)
【今日の一枚】
『ハルモニア』
朴葵姫=パク・キュヒ(ギター)
2017年録音
発売/日本コロムビア
問い合わせ:03・6895・9001
販売価格/3000円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年7月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。