選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの作曲家サン=サーンスの名曲を組み合わせた魅力的なアルバムが出た。1959年ロンドン生まれのイタリア人指揮者アントニオ・パッパーノがサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団とともに録音した『サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》、動物の謝肉祭』である。
パッパーノは長年、英国ロイヤル・オペラに加えて、このローマの名門サンタ・チェチーリアの音楽監督をつとめており、世界の音楽界をリードする最も重要な指揮者の一人。「オルガン付き」では、明るく色彩感ある豊かな響きを堪能させてくれる。※試聴はこちらから
注目すべきなのが、ピアノ界の女王マルタ・アルゲリッチをゲストに迎えた「動物の謝肉祭」。アルゲリッチのピアノは稲妻のような輝きと怒涛の疾走感でアンサンブル全体をぐいぐい引っ張る。70歳代後半とは到底思えぬ若々しさだ。
女王さま万歳としか言い様がないくらいの、手に汗握る快演である。
【今日の一枚】
『サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》、動物の謝肉祭』
アントニオ・パッパーノ指揮 サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団、ダニエレ・ロッシ(オルガン)、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
2016年録音
発売/ワーナー・ミュージック・ジャパン
商品番号/WPCS-13725
販売価格/3000円
http://wmg.jp/
写真・文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年1月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。