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キーシンの『ベートーヴェン・リサイタル』すさまじい真剣勝負に心震える【林田直樹の音盤ナビ】

選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)

リヒテル、ギレリス以降最大のロシア・ピアニズムの後継者、1971年生まれのピアニスト、エフゲニー・キーシンが『ベートーヴェン・リサイタル~《月光》《熱情》《告別》』を発表した。ここ10年間ほどのライヴ録音の集成であるが、スタジオ録音と違って、聴衆が詰めかけた会場での一期一会の緊張感が素晴らしい。

とりわけ凄いのが「月光」の第3楽章と、「熱情」の第1楽章。何という爆発的なエネルギーだろう! 手垢にまみれがちなこれらの名曲が、ここまで手に汗握るスリリングな音楽として、まるで初めて聴くときのような気持ちで聴けるとは思わなかった。

明晰さと狂気と正確さと、精神的な厳しさ。どんどん自分を追い込んでいき、破綻寸前のところまでギリギリを攻める、すさまじい真剣勝負。すべての音が非日常的であり、「いま何か特別なことが起こっている」と、聴き手に確信させるような響き。それがベートーヴェンには一番必要だということを、キーシンは教えてくれる。※試聴はこちらから

【今日の一枚】
『ベートーヴェン・リサイタル~《月光》《熱情》《告別》』
エフゲニー・キーシン(ピアノ)
2017年発売
発売/ユニバーサルミュージック
電話:045・330・7213
商品番号/UCCG-1772~73(2枚組)
販売価格/3500円

写真・文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)

※この記事は『サライ』本誌2017年12月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。

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