ふと耳にした海外ドラマのセリフや、英語のニュースに出てきた何気ない一文。思いがけないニュアンスで使われていて、思わず「へえ」と感じることがあります。
見慣れたはずの単語なのに、こんなふうにも使うのか。そんな小さな驚きに出会うと、英語の奥行きやおもしろさをあらためて感じます。
今回は、そんな意味がわかると、「ちょっと意外でおもしろい」英語を取り上げます。
さて、今回ご紹介するのは “deal” です。

“deal” の意味は?
なにかを「取り扱う人」を意味する「ディーラー」という言葉や、映画やドラマの中で、交渉や約束がまとまったときに交わされる “Deal!” 。
実は、意味の幅が広く、日常会話でもよく登場する、とても便利な単語です。ここでは、その中でも特によく使われる意味をいくつか見てみましょう。
名詞の“deal”
名詞の “deal” には、「取引」や「契約」という意味があります。
ビジネスシーンで使われることも多いですが、日常会話では “good deal” で「お買い得」という意味になることもあります。
“We made a deal.”
(私たちは取引をしました。)
“This coat was a good deal.”
(このコートはお買い得だった。)

動詞の“deal”
一方、動詞の “deal” は、いくつか用法があります。とくに大切なのが “deal with” で、「対処する」「扱う」という意味です。問題や課題、人間関係などについて話すときによく使われます。
“I need to deal with this problem.”
(この問題に対処しないといけないんだ。)
のように使います。
“deal”を使った表現
その他にも、“deal” を使った便利フレーズは多くあります。ここではよく使われる3つをご紹介しましょう。
1. “a great deal” = たくさん/ かなり多く
“I learned a great deal from her.”
(私は彼女からたくさんのことを学びました。)
2. “It’s a big deal.” = 重要なこと/ 大きな事
Getting published was a big deal for her.
(出版されたことは、彼女にとって大きな出来事だった。)
3. “No big deal” = たいしたことないよ/ 気にしなくていいよ
A:“Thanks for helping me.”(助けてくれてありがとう。)
B:“No big deal.”(たいしたことないよ。)
新しい“deal” の表現
“deal” という言葉は、「取引」や「対処する」といった意味だけでなく、日常のさまざまな場面でも使われます。
たとえば、車を扱う人を指す “car dealer” 、薬物を売る人を表す “drug dealer” 、そして美術商を意味する “art dealer” など。「何かを扱う人」という意味での “dealer” は、日本語の中でもすっかりおなじみですね。さらに最近では、少し違った使い方もあります。

たとえば、“deal-breaker” という言葉。
これは「それがあると無理」といった意味で、いわば「絶対に譲れない条件」のことをさします。恋愛や仕事などで、使われる表現です。
“Smoking is a deal-breaker for me.”
(タバコを吸う人は、私にはちょっと無理。)
また、“the real deal” という表現もあります。
これは「本物」「本当に価値のあるもの・人」という意味で、褒め言葉として使われます。
“This restaurant is the real deal.”
(このお店、本当にいいね。本物だよ。)
このように “deal” という言葉は、「取引」や「扱う」「対処する」といった基本の意味から広がり、時代とともに新しいニュアンスを取り入れながら、使われ続けている単語です。
最後に
現代では、「取引」や「対処する」という意味を持つ “deal” ですが、さかのぼると、古英語の “dǣlan” (分ける・分配する)に由来します。
そのもともとの意味で使われているのが、「聖書」イザヤ書にある有名な一節です。
“Deal thy bread to the hungry…”
(あなたのパンを、飢えた人に分け与えなさい)
この “deal” は、まさに語源そのもの。現代的な意味とは違う、自分の持っているものを「分ける」という感覚です。
私たちは日々、さまざまなことに「対処」し、ときに誰かと「取引」をしながら暮らしています。けれど、その一つひとつが「分け与えること」「分かち合うこと」となるのならば、「取引」という行為の見え方も、少し変わってくるように思います。古英語の “dǣlan” (分ける・分配する)。
私たちの営みの根っこに、互いに分かち合い、与え合いたいという思いがあるのだとしたら、取引することもまた、少しだけあたたかく、やわらかなものとして見えてくる気がします。
次回もお楽しみに!
●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。 その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。
→The English Schoolホームページ
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











