私たちが何気なく使っていることばには、海や川、植物や動物など、自然にまつわる比喩表現がたくさんあります。文化によって、比喩のとらえ方に違いがあり、とてもおもしろいなと思います。

さて、今回は、そんな数ある表現の中から “Butterflies in the stomach” をご紹介したいと思います。

“Butterflies in the stomach”の意味は?

“Butterflies in the stomach” を直訳すると、(お腹の中に蝶がいる)となります。

“butterflies” は(蝶)の複数形、 “in the stomach ” は(胃の中に)ですが……、そこから転じて

正解は……
「ドキドキする」「胸が高鳴る」

という意味になります。

緊張や興奮、不安でドキドキするような時に使うことができます。

『ランダムハウス英和辞典』(小学館)には、“butterflies dance in one’s stomach” について「どきどきする」と書かれています。

例えば、

“I have butterflies in my stomach.”
(緊張してドキドキしています。)

まるでお腹の中で蝶が飛んでいるように、緊張でどきどきしている様子を指す表現です。特に舞台に立ったり、プレゼンしたりなど、人前に出る前の緊張感を表す時などに使います。

“Butterflies in the stomach” の使い方

では、ここからは “Butterflies in the stomach” の使い方を、いくつか例と一緒に見ていきましょう。

1. “get” と組み合わせる

“I get butterflies in my stomach when I speak English.”
(英語を話すと緊張します。)

2. “have” と組み合わせる

“I always have butterflies in my stomach when I talk to her.”
(彼女と話すときは、いつも緊張してしまいます。)

3. “in the stomach” を省く

会話では “get / “have butterflies” だけでも十分に伝わります。比喩的な表現なので、「どこで」生まれる感覚なのかを、わざわざ言わなくても共有できるからです。

“I always get butterflies before speaking in front of people.”
(人前で話す前は、いつも緊張します。)

もちろん、強調したいときや書き言葉では、 “in the stomach” をつけてもかまいません。場面に応じて使い分けてみてくださいね。

「虫」を使ったさまざまなイディオム

英語には、虫 “insects” の名前が入ったおもしろい表現がたくさんあります。ここでは、日常会話でもよく耳にするものをいくつかご紹介します。

1. “bug”(動詞)

“bug” は「虫」という意味の英単語で、特に小さな虫を指します。そこから転じて、「イライラさせる」「邪魔をする」という意味でも使われます。

友達や家族など、親しい相手とのカジュアルな会話でよく登場する表現です。

“Stop bugging me!”
(うるさくしないで!/もうやめてよ!)

2. “Earworm”

“ear” は(耳)。 “worm” は(ミミズなどの虫)です。“earworm” は、「耳から離れない曲」「頭の中でずっと鳴り続ける曲」という意味になります。

CMソングや流行りの曲のサビが頭から離れないような時に使うことができます。

“That commercial song became an earworm after hearing it once.”
(一回聞いただけで、あのCM曲が頭から離れない。)

3. “have ants in your pants”

直訳すると、「パンツ(ズボン)の中にアリがいる」となります。アリが中に入ってウロウロしていたら、そわそわしてじっとしていられませんよね。そこから転じて、「そわそわして落ち着かない」という比喩表現として使われます。

“He has ants in his pants waiting for the test results.”
(テストの結果を待って、彼はそわそわしている。)

会話の中で使えると楽しいですね。

最後に

日本語で「どきどきする」と言うと、胸の鼓動が高鳴るイメージがありますね。けれど、英語の “butterflies in the stomach” は、もう少し下のお腹のあたりが、ふわふわと羽ばたくような感覚です。

日本語でも「胃が痛くなる」という表現がありますが、英語には、感情や心の動きが、体の部位や動物、自然のイメージと直結して表現されることが多くあります。

緊張したり恋をしてどきどきしたときは、 “Butterflies in the stomach” を思い出してみてください。他言語を借りることで、張りつめた緊張が少し和らぐといいですね。

次回もお楽しみに!

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。
インスタグラム

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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