文/印南敦史
慢性的な疲れを抱え、「いくら寝ても疲れがとれない」という方も少なくないだろう。また多くの場合、それを歳のせいにしてしまいがちでもある。
ところが医師である『疲れがとれない原因は副腎が9割』(御川安仁 著、フォレスト出版)の著者によると、一概に年齢の問題であるとも断言できないようだ。実際にはかなり多くの日本人が、「副腎疲労症候群(以下、副腎疲労)」による慢性的な疲労に悩まされているというのである。
副腎疲労は病気ではないものの、慢性的に疲れている人によく見られる状態。しかもそれは一日寝れば解消できるというような「急性の疲労」ではなく、どれだけ寝たとしてもひどい疲労感が続くのだそうだ。最後には動けなくなることもあるというので、決して楽観できない。
副腎疲労とは、「副腎」という臓器が酷使され、疲れてしまう症状です。子供から高齢者まで幅広く見られる症状ですが、もっとも多いのが30〜40代の働き盛り。50代以降もけっして少なくありません。
働きすぎて燃え尽き、「何もしたくない」「気が済むまで眠りたい」と、動けなくなります。しかし日本人は真面目なので、そんな自分を「怠け者」だと責めてしまうのです。(本書21〜22ページより引用)
症状としてはよくあるものであるだけに、「まさに自分のことだ」とお感じになったかもしれない。いいかえれば、副腎疲労はそれだけ身近な症状だということなのだろう。
そこで、まずは本書に掲載されている「副腎のお疲れチェックテスト」によって、自分の状態を知ってみよう。あてはまるものにチェックを入れるだけの簡単なテストだ。
□ 寝ても疲れがとれない
□ 朝起きられない
□ 会社に行くのがおっくう
□ やる気が出ない
□ 何もしないのに悲しい
□ 疲れすぎて夜眠れない
□ 立っているのもつらい
□ 便秘がひどい
□ よく下痢をする
□ 休日は何もしたくない
□ 低血圧
□ 首や背中、腰が痛い
□ すぐスタミナが切れる
□ 記憶力が低下した
□ 仕事のミスが多くなった
□ スポーツジムなどで運動するのが面倒
□ 甘いものやコーヒー、しょっぱい食べ物がほしくなる
□ 性欲が落ちた
□ これまで好きだったことさえ興味がなくなる
□ ささいなことで怒る、キレる
(本書21〜22ページより引用)
さて、いくつ当てはまっただろうか? 5つ以上当てはまったら、副腎疲労の可能性があるそうだ。
やる気や元気をもたらすコルチゾールが激減すると気力がなくなり、疲れを感じるようになる。そして、そんなコルチゾールをつくっているのが副腎だ。
腎臓の上についている副腎は、「副腎皮質」と「副腎髄質」の二つの構造になっており、コルチゾールは副腎皮質から分泌される。とても頑丈な臓器で、副腎に負荷がかかり始めてから明らかな副腎疲労の症状が出てくるまでには数年を要するという。だとすれば、自覚できなかったとしても無理はないだろう。
しかも、つらい症状があるにもかかわらず、病院で検査を受けたとしても「異常なし」と診断されてしまうことも非常に多いのだとか。それは現在の医学教育において、副腎について勉強する機会が少ないから。副腎はめったなことで病気にならないため、内分泌の専門家でなければ医師の関心も低いというのだ。
副腎疲労は三段階で考えることができます。
第一段階は副腎疲労の初期です。ストレスに対処しようと常にコルチゾールが出続けます。肉体的にも精神的にもハイになり、仕事が充実しているように感じます。
第二段階になると、疲れが出て、風をひきやすくなったり、アレルギーが出やすくなったりします。肩こり、腰痛、背痛を感じ始めます。
第三段階、最後は疲れ果て、動けなくなります。
(本書41〜42ページより引用)
がんばれなくなると、日本人は「怠心が強くなってしまった」と自分を責めてしまいがち。だが、そんなときこそ副腎疲労を疑ったほうがいいという。
副腎疲労のおもな原因は、「休息の不足」「過剰なストレス」「忙しい生活」「バランスのとれていない食習慣」。そんな生活が何年も積み重なると、腸内環境が悪化し、栄養素不足や免疫力の低下を引き起こす。
そればかりか、さまざまな炎症を放置したままにすると、副腎はストレスに対抗しなければならないうえに、炎症も抑えなければならなくなる。その結果、24時間365日、コルチゾールを放出し続け、疲れ果てて副腎疲労になるというのだ。
加えて現在の標準医療ではあまりまともに取り上げられることがないとなれば、必然的に「自衛」が必要になる。だからこそ、副腎疲労の原因と対策を解説している本書を参考にしてみるべきではないだろうか。
『疲れがとれない原因は副腎が9割』
御川安仁 著
フォレスト出版
900円(税抜)
2020年3月
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)などがある。新刊は『書評の仕事』 (ワニブックスPLUS新書)。