文/鈴木拓也
日本では15年ほど前からヨガブームが続いており、いまやヨガ人口は約800万人と推計されている。
これほど人気があるのは、「手軽に行えて健康にいい」という理由が主。そのため、当初は比較的若い層に実践者が多かったのが、シニア層にも波及。これを受け、年齢層が高めの人向けのプログラムを提供するヨガスクールも増えている。
とはいうものの、関心はあってもヨガスクールに通うことに、敷居の高さを感じる方は多いかもしれない。ヨガ独特のポーズがうまくできるか、多少不安というのもあるだろう。
そんな方におすすめなのが、今回紹介する「指だけヨガ」だ。
これは、「深堀ヨガスクール」(東京都)を主宰するヨガインストラクターの深堀真由美さんが考案したもので、まさに指だけの動作により、全身のヨガと同程度の効果が得られるという。深堀さんの著書『全身ポーズと同じ効果!! 指だけヨガ』(大和書房)には、その原理や方法が詳しく書かれている。
今回は、入門的に本書から「基本の指だけヨガ」、「人さし指だけヨガ」、「足指の股広げヨガ」の3つを紹介したい。
■「基本の指だけヨガ」のやり方
本書には多くの指だけヨガのバリエーションがあるが、まずはこの基本をマスターすることから始める。これをやるだけでも、循環を改善して、精神の安定を取り戻し、慢性的疲労感を軽減する効果があるという。ちなみに、全身ヨガなら肩逆立ちのポーズと同じ効果になる。
1. 合掌
足を腰幅くらいに開いて立ち、足先を正面に向ける(椅子に座ってもOK)。背筋をまっすぐにして胸の前で両手を合わせ、2~3回呼吸をして心身を落ち着かせる。
2. 指を広げる
両手を合わせたまま指を開いて、指と指の間をできるだけ広げる。
3. 両ひじを突き出す
肩の力を抜いたまま、両ひじを外側に突き出すように開いて、手首を離し、指先はついた状態で動きを止める。息を鼻から出しきる。
4. 基本の形が完成
両手の指先をつけたまま、空気のボールを柔らかく持つようにピラミッドのような形を作る。
5.指同士を押し合う
指先に力を入れて指同士を押し合い、圧の高い状態にして大きく深い呼吸、「吸って、吐いて」を5回繰り返す。指を離して腕を下ろし、息を吐いて肩、腕、指先の力を抜く。1~5を1セットとして、(可能なら朝・昼・晩に)3セット行う。肩の力は抜き、深くゆっくり呼吸するように注意する。
■「人さし指だけヨガ」のやり方
人さし指にフォーカスしたこのやり方は、「風邪、肺炎、喘息、花粉症など呼吸器系の不調の改善を促し、また胃炎や胃もたれ、食べ過ぎや飲み過ぎ、二日酔いの不調の改善」という幅広い効果があるという。さらには、肩・首のこりにもいいそうだ。
1. 上述の「基本の指だけヨガ」の形をとる。
2. ほかの指は指先を合わせたまま、人差し指同士を意識して力を入れて圧の高い状態にして大きく深呼吸、「吸って、吐いて」を5回繰り返す。
3.すべての指先に力を入れて指同士を押し合い、圧の高い状態にして大きく深呼吸、「吸って、吐いて」を5回繰り返す。指を離して腕を下ろし、息を吐いて肩、腕、指先の力を抜く。3セット行う。
■「足指の股広げヨガ」のやり方
「第二の心臓」といわれ、東洋の伝統医学でも重要視されている足。この足の指を使った指だけヨガも、本書にはいくつか掲載されている。足の指を自在に動かすのは難しいので、手の指でサポートしながら行う。
「足指の股広げヨガ」は、歩き方を安定させ、しっかり歩けることを主眼としたもので、外反母趾やむくみの予防、疲労感の軽減にもなるという。
1. 右脚のももに左足を乗せる。左足の指の股に右手の指を深く差し入れ、股同士を組み合わせる。
2. 左手で左足首を持って、右手の指で左足の指をつけ根からしっかりつかむ。
3. 左手で足首をしっかり持って固定し、1回、回すごとに息を吐きながら足首をしっかり回す。これを10~30回繰り返す。逆回しも同様に行う。反対の足も同様にして行う。
* * *
本書には、「指だけヨガ」を続けているシニアの方々の声が載っていて、こもりがちだったのが5千歩を目標に歩けるようになった80代、まったく薬を飲まないでも元気な70代の方など、驚きの効果を体感している。動かすのは指だけなので、体力に不安があっても大丈夫。ヨガに興味のある方もそうでない方も、試してみる価値はあるだろう。
【今日の健康に良い1冊】
『全身ポーズと同じ効果!! 指だけヨガ』
http://www.daiwashobo.co.jp/book/b470418.html
(深堀真由美著、本体680円+税、大和書房)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。