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【キーパーソンに聞く|アルペンスキーヤー・清澤恵美子さん】「噛み合わせの乱れが体に悪影響を及ぼしていることに気づかなかった」

文/藤原邦康W杯アルペンスキーヤーでNHK解説者の清澤恵美子さん

これまでアゴとスポーツの知られざる関係性について述べてきましたが、その締めくくりとして今回はスポーツに深く関わるキーパーソンたちから生の声をお届けします。

「アスリートはどうしても前傾姿勢になる癖があるんですね。アルペンスキーの競技も前傾姿勢になるし、アゴが出てしまう。特に私の場合、スキーシーズンは10月から始まって4月〜5月で終わるのですが、スキーをしていると気づいた時に顔の形が変わっています。シーズン前は顔がシャープなのに、終盤になってくると食いしばり癖によってエラが発達してしまって顔が角ばってホームベース型になってしまうんです」

そう語るのは、W杯アルペンスキーヤーでNHK解説者の清澤恵美子さん。

―― 食いしばり癖があることで、何かお困りのことはありましたか?

「私の場合は寝ている間も食いしばって緊張が取れませんでした。当初はマウスピースで対応していました。何種類か持っていて、寝る時のものや競技をする時のものなどマウスピースを使い分けていました。それでも、疲れがどんどん溜まってしまう感覚があったのです」

「スキーをする時にも足元のバランスが悪いという意識がもともとありました。スキーの競技中は筋肉を適度に固める必要があります。ところが、噛み合わせが悪いせいで柔軟性が重要な首回りに力が入って首や肩の筋肉も発達しすぎてしまいました。逆に、足元には力が入らないのです」

――競技にも支障を来すのは悩ましいですね。

「はい。トレーナーの方から”清澤さんはいつも食いしばって肩がすくんでいるよね”と指摘され、何か問題があるんじゃないかということで藤原先生を紹介していただきました。藤原先生に噛み合わせの調整をしていただいて一番感じるのは、可動域が広がり安定性が増したというところですね。以前と違って”アゴに余計な力が入っていないのに足元にはしっかり力が入る”という今までなかった感覚を味わいました。また、整顎で眠りの質も改善して初めて”そうか口周りに力が入っていたんだ”と気づきました」

――それはよかったです。アゴを整えることでパフォーマンスに影響はありましたか?

「アルペンスキーは左右対称にスラロームをしてターンをしていきます。適度にリラックスして要所要所で踏ん張れることが大切です。整顎を受けて一番驚いたのは藤原先生にコンディショニングしていただいてから正中線が整ったんですね。顎が右にずれ肩が左に向いていたと思うのですが、整顎してもらったことによって左右に対象に動けるようになりました。実はコレ、スキー場に行って実感したのではなく、フロアで”クマ歩き”をしたら分かったんです!」

筆者注:クマ歩き(Bear Walk)とは、四つん這いから膝を浮かせて四つ足歩行する、いわゆる高這いの状態で行なう体幹および四肢のバランス・トレーニング。

「コーンを左右対称に設置してクマ歩きで左右にターンをして行くのですが、以前は”右には行きにくいが左には円を描くようにターンしやすい”というような状況でした。一方は小さく回ることができるのに一方は大回りをしてしまって、左右が対称ではないことにすごく違和感がありました」

――なるほど。

「最初は藤原先生には言わないで…(笑)。整顎してもらってから施術スペースで試したら全然違ったんですね。”自分自身でゆがみに全然気づいてなかったんだな”と実感しました。私も今まで体のことはかなりマニアックにシビアに考え続けてきたのですが”アゴでそんなに変わるのか”と正直びっくりしました。元々感覚が鋭い方なのですが、噛み合わせの乱れが体に悪影響を及ぼしていることに気づかなかったんです。”アゴの歪みを少し直しただけでこんなにターンがスムーズになるんだ”ということにすごくびっくりしました」

――たしかに清澤さんは微細な変化にすぐ気づき的確なフィードバックをしてくれますね。

「アスリートとして成長して行くと身体感覚の精度が高くなるのですが、突き詰めれば突き詰めるほど些細なところで怪我のリスクとつながります。例えば、筋膜のつながりでいうと、ねじれてはいけない背骨がねじれて四肢に負担がかかります。体軸が変化すると、膝に力が加わって前十字靭帯が切れてしまうということが起こり得るということがわかりました」

経験豊富なアスリートの言葉には説得力があります。清澤さんは現在、女性の活躍を応援するスノーウィメンズカップ実行委員長も務め後進の育成にも力を注いでいます。今後、後進の育成にも整顎に関する知識や経験を生かしていただくことを期待しています。

文/藤原邦康
1970年静岡県浜松市生まれ。カリフォルニア州立大学卒業。米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック。一般社団法人日本整顎協会 理事。カイロプラクティック・オフィス オレア成城 院長。顎関節症に苦しむアゴ難民の救済活動に尽力。噛み合わせと瞬発力の観点からJリーガーや五輪選手などプロアスリートのコンディショニングを行なっている。格闘家や芸能人のクライアントも多数。著書に『自分で治す!顎関節症』(洋泉社)がある。

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