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健康

「かぜ」ってどんな病気? どうしてかかる?|かぜのメカニズムと上手な対処法

文/中村康宏

「かぜ」ってどんな病気? どうしてかかる?|かぜのメカニズムと上手な対処法

インフルエンザやかぜが流行する季節がやってきました。かぜをこじらすと、カラダがだるくなったり症状がひどいことで仕事のパフォーマンスが落ちてしまいます。これらは非常に身近な病気ではありますが、それ故に、症状やそのメカニズムを気に留めない方が多いでしょう。かぜってどんな病気なのでしょうか? かぜを上手に予防する方法はあるのでしょうか? 今回はかぜのメカニズムと、かぜの対処法について解説します。

■医学的に「かぜ」という病名は存在しない

病院に行くと「かぜですね」と言われることが多くありますが、じつは、医学的に「かぜ」という病名は存在しないのです。(*1)“お腹のかぜ”、“ノドのかぜ”といった言葉があるように、かぜは「粘膜に炎症が起きる病気」と定義できます。つまり、炎症が起こるその場所によってその呼び名が変わるのです。例えば、鼻の粘膜であれば鼻水が主症状となる“急性鼻炎”、ノドの粘膜であれば声枯れやノドの痛みが主症状の“急性咽頭炎”、胃や腸の粘膜であれば嘔吐や下痢、腹痛などの消化器症状をきたす“急性胃腸炎”など。これらのかぜを引き起こす原因のほとんどはウィルスによるものとされています。その割合は80-90%と言われ、残り10-20%は細菌によるものです。

■細菌とウィルスの違い

細菌とウィルスは、ヒトや動物に感染症を引き起こす微生物です。共に目に見えないほど小さいのですが、両者には大きな違いがあります。(*2)

●形態の違い

細菌は生物の基本構造である“細胞”の形態を示します。細胞の形態を取ることによって、細胞核に存在するDNAやRNAといった大切な情報を“細胞壁”で守っているのです。この細胞構造を壊す薬が「抗生物質」です。抗生物質は細胞の構造を壊すメカニズムによって威力を発揮し、細菌を殺す、またはその増殖を抑制することができるのです。一方、ウィルスは細胞の形を取らず、DNAやRNAといった病原性の“情報”しか持っていません。そのため、細胞の構造を持たないウィルスには抗生物質が効きません。

●増殖能力の違い

細菌は自分の力で増殖することができますが、ウイルスは人や動物の細胞の中に入らなければ増えることができません。例えば、賞味期限が切れた食べ物にカビが生えます。あの緑色に見えるのは、糖分をエサにして増殖した菌の塊を見ているのです。一方、食べ物にウィルスが付着することはありますが、細菌のように目に見える塊まで増殖することはできず、消えて無くなってしまうのです。

■細菌とウィルスによる“かぜ”の違い

細菌性のかぜの場合、その症状が“ひどい”ことが特徴的です。細菌もウィルスも粘膜に炎症を起こして様々な症状をもたらすのですが、ウィルスに比べて細菌は粘膜の深くまで炎症を及ぼすことがあります。例えば、胃腸炎の原因として有名な「サルモネラ菌」や「カンピロバクター菌」。これらはお腹が痛くなったり下痢をきたすような一般的な胃腸炎の症状に加えて、粘膜の深くまで炎症が及ぶため出血して血便が出たり、高熱が続くこともあります。ノドのかぜも細菌性によるものは症状がひどくなりがちです。ノドのかぜでも、強い片側の頬部の痛み・腫脹、発熱がある、症状が7日間以上持続する、膿性鼻汁、発熱が持続する、などは細菌性を示唆します。

一方、細菌とウィルスに共通して起こる症状もあります。発熱、全身の倦怠感、関節の痛みなどは、炎症物質が全身に回ることで引き起こされます。また、熱の時に頭痛を経験したことがある人も多いと思います。これは熱に伴う「二次性頭痛」と呼ばれ、頭の中に原因がなくても起こる頭痛であることが多いのです。

■かぜの対処法

●休息する

かぜをひいたときに、熱が出るのも眠たくなるのも、体が菌やウイルスと戦っている証拠です。あらがおうとせずに、まずは休むことが何よりも大切です。

●カラダを冷やさない

炎症に抵抗する免疫力を上げるために、体温が上がるので微熱が続きます。汗をかくので体を冷やさないようこまめに着替えをするようにしましょう。

●薬を飲む

病院で出される薬や薬局で売っている薬は、熱や鼻水、せきなどの苦しい症状をやわらげるための“対症療法”で、菌やウイルスの侵攻をくい止めるものではありません。実際、かぜをひいてしまった場合、この薬を使ってつらい症状を緩和しながら、症状が弱くなるのを待つしかありません。「この薬効いたかも!」と思うことがあるでしょうが、それが薬の効果なのか炎症が自然に落ち着いてきたのか、判断が難しいところです。薬の効果の実感の違いは、症状の程度と飲む時期によって異なることを頭に入れておきましょう。

●栄養に気をつける

粘膜を丈夫にするビタミンA(ウナギ、レバー、ニンジン、カボチャなど)、免疫力を高めるビタミンC(果物、緑黄色野菜など)やビタミンE(カボチャ、アーモンド、鮭など)を積極的に摂取しましょう。血液循環をよくしカラダを温めることも抵抗力を強めることにつながります。ショウガ、唐辛子、ハーブ、スパイス、アーモンドなどが効果的です。そういった食材が使われた参鶏湯(サムゲタン)、おかゆ、卵酒などの伝統的な料理は理にかなっています。

●ストレスを溜めない

ストレスを受けることで体内でのビタミン配分バランスが崩れ、免疫力の低下につながることもあります。ストレスをためないことも大切です。

●自分の体質を理解する

かぜの症状に対する薬はたくさんあります。医師によって処方する薬も違うので、出された薬をただ飲むのではなく、自分に合っているのかを見極めつつ、すぐに治したい、体質から見直したいなど、症状をどうしたいのかを医師にしっかり伝えましょう。そのためにも自分の体質を理解し、かぜへの最低限の知識を持つことは重要です。例えば、かぜをひくと咳だけ残るという人も多いですが、粘膜の炎症は収まっているのに、気道の粘膜が過敏になって乾燥や寒暖差でぜんそくのような状態になっているためです。体質によるところもあるので、安易に病院を変えず、医師にじっくり相談してみてください。

* * *

以上、かぜのメカニズムと、かぜの対処法について解説しました。一概に「かぜ」と言っても症状や原因の菌・ウィルスは様々です。そして、その人の体質によって薬の効き方なども異なってくるのです。そのメカニズムや対処法・自分の体質をよく知り、自分に合った方法でうまくかぜのシーズンを乗り切りましょう。

【参考文献】
1.ハリソン内科学
2.Mayo Clinic


文/中村康宏
医師。虎の門中村康宏クリニック院長。アメリカ公衆衛生学修士。関西医科大学卒業後、虎の門病院で勤務。予防の必要性を痛感し、アメリカ・ニューヨークへ留学。予防サービスが充実したクリニック等での研修を通して予防医療の最前線を学ぶ。また、米大学院で予防医療の研究に従事。同公衆衛生修士課程修了。帰国後、日本初のアメリカ抗加齢学会施設認定を受けた「虎の門中村康宏クリニック」にて院長。未病治療・健康増進のための医療を提供している。

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