
ここ数年でよく聞く“スタンフォード式”とは、診断でもパーソナルアドバイスでもなく、自分の体に対して「無頓着」だった人が「自分」の体の健康管理のCEOになってもらうことを目指しています。不調に負けない体づくりに欠かせないのは、「知識(新しい知識をどんどん取り入れる)」×「選択(今までの生活パターンをいい方向に変える選択をする)」×「変化(それによる変化を実感する)」。これを実践すれば、何歳からでも“自分史上最高の体”を作れるといいます。最新刊『スタンフォード式 体が整う休み方』(宝島社)では、不調の代表格、疲労のメカニズムをわかりやすく解説し、日常生活の中で手軽に取り入れられる回復メソッドを紹介しています。今回は、その中から体を整えるための「食べ方」をご紹介します。
監修/山田知生
疲れや糖尿病のリスクは食べ方を変えて改善
「疲れがなかなかとれない」「いつも体がだるい」……。実はその原因、食生活にあるのかもしれません。私たちは普段順番をあまり考えずに食べていることが多いと思いますが、食べる順番によって疲れにくさも変わってくるのです。その理由は、「血糖値の乱高下」にあります。食後に血糖値が急激に上がる「血糖値スパイク」を招く食べ方をしていると、血糖値のコントロールを担う臓器が疲弊し、疲れやすいだけでなく、肥満や糖尿病のリスクが高くなってしまいます。だからこそ、食べる順番が鍵となるのです。
疲れにくい体を作るための秘訣は、血糖値の乱高下を防ぐこと。具体的な食べ方としては、最初に「食物繊維を多く含むもの」を食べ、次に「たんぱく質を多く含むもの」、最後に「糖質を多く含む炭水化物」という「糖質の低い順」に食べるようにしましょう。食べ物が体に入ると自動的に血糖値が上がりますが、糖質が低いほど血糖値は上がりにくいという仕組みがあります。緩やかな上昇ならば下がるのも緩やか。これで、血糖値の乱高下を避けることができます。
食べる順番を変えるだけで疲れにくい体が作れる。今日からあなたも試してみてください。
まず野菜から食べる
最初に食べるのは、野菜や海藻などの食物繊維の多いもの。糖質の分解や吸収を遅らせて、血糖値は緩やかに上がっていきます。
次に肉や魚のおかず
次に肉や魚、豆類などのたんぱく質や脂質の多いものを。炭水化物よりたんぱく質を先に食べることで、食後血糖値の上昇を抑えます。
ごはんやパンなどの主食
最後に食べるのは、血糖値の乱高下を起こしやすい炭水化物。食事のとき最初だけこの順番を守れば、後は好きに食べてもOKです。
意外な落とし穴! 疲れやすくなるNGな食べ方

1.朝食を抜いたり、バラバラの時間に食べる
体を整える食事の原則は、一日3食を基本にして同じ時間に食べること。たとえば朝食を抜いてお昼にいきなり白米を食べたりすると、食後の血糖値が急激に上がり、その後一気に下がります。体が「エネルギー不足」とみなし、眠気やだるさが生じてしまいます。
2.ガツガツと早食いする
早食いすると、食べ物の消化と吸収が早くなり、血糖値上昇を招きます。さらに、同じ内容の食事でも早く食べることで血糖値がより上昇し、急激な上昇を抑えるために「肥満ホルモン」とも呼ばれるインスリン分泌が増え、肥満にもつながります。ゆっくり食べると満腹サインを伝えるホルモン「レプチン」が適切に働きます。
3.お腹いっぱい食べる
食べる順番、食べる早さに加えて、もうひとつ大切なのが食べる量。満腹になるまで食べてしまうと消化に時間がかかり、朝食後や昼食後に倦怠感を覚えます。その結果、仕事や家事などの作業効率が落ちてしまうことに。そうならないよう、「腹八分目」を守りましょう。
4.ビュッフェでは好きなものを好きなだけ食べる
これも3の「食べる量」と同じこと。ビュッフェのような非日常で食べ放題の環境に身を置くと、ついついレールから外れてしまいがち。ごくたまにだからと満喫しても害はありませんが、もしブレーキが利くのなら、食べる順番、早さ、量を守るようにしてください。
5.野菜の調理に手をかけすぎる
サラダ一品を作るにも「美味しくて見映えよく」と手をかけすぎていませんか? 実は、手を加えるほどあらゆる栄養が抜けやすくなるのです。野菜は可能なかぎり生のままがおすすめ。「切っただけ、洗っただけ」が、疲れない体を作るのにふさわしい調理法なのです。
6.疲れたときに塩辛いものを食べる
体が欲するまま食べ物を口にする。これは疲れを助長させる原因のひとつ。たとえば、疲れを感じると「塩辛いものが食べたい」といって塩気を利かせてしまうことも。元々日本食には塩分が多く含まれていますから、さらに塩分をとることで、胃腸へ負担をかけることに。
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スタンフォード式 体が整う休み方
山田知生/監修
宝島社 1,320円(税込)
*アメリカ在住者の方も電子版ダウンロード可
山田知生(やまだ・ともお)
スタンフォード大学スポーツ医局アソシエイトディレクター。Neuro Athletics認定Health Coach、Precision
Nutrition Academy認定Level1 Nutrition Coach、Precision NutritionAcademy認定 Level 1 Sleep, Stress Management & Recovery Coach。
24歳までプロスキーヤーとして活動した後、26歳でアメリカ・ブリッジウォーター州立大学に留学。同大学卒業後、サンノゼ州立大学大学院でスポーツ医学とスポーツマネジメントの修士号を取得。2000年、サンタクララ大学にてアスレチックトレーナーとしてのキャリアをスタートさせ、2002年秋にスタンフォード大学のアスレチックトレーナーに就任する。スタンフォード大学スポーツ医局にて20年以上の臨床経験を持ち、同大学のアスレチックトレーナーとして最も長く在籍中。著書に『スタンフォード式 疲れない体』(サンマーク出版)、『スタンフォード式 脳と体の強化書』(大和書房)がある。
