文 /内野勝行
30万部突破『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』を監修し、脳神経を専門としてこれまで約1万人の患者を診てきた内野勝行先生の著書『脳のおそうじスープ』から、衰えてきた脳に必要な「脳のクリーニング」についてご紹介しましょう。
脳トレゲームの効果は科学的根拠が不十分
「どうすれば、脳の衰えを防ぐことができますか?」
今、このような質問を投げかけられたら、おそらく多くの方が「脳トレ」と答える のではないでしょうか?
脳トレーニング、いわゆる“脳トレブーム”はいまだ収まる気配がありません。 これは日本国内に限ったことではなく、世界中で本やゲームソフトが続々と発売され、ヒットをとばしています。
脳トレが世界中で支持を受けている理由は、脳トレのもつ知能や認知機能の向上効果への強い期待感の現れであることは間違いないでしょう。 そして、脳トレに取り組む人たちの多くは、その効果を信じて疑わないからではないでしょうか? 皆さんは、こうした脳トレの効果に関して科学的根拠があると思っているのではないでしょうか?
ところがそうではないのです。
例えば、スコットランド・アバディーン王立病院のロジャー・スタッフ氏および アバディーン大学の共同研究では、クロスワードや数独(パズルの一種)のような脳トレには、知力低下(つまり認知機能の低下)を防ぐ効果はないという研究データを 発表しています。
また、スタンフォード大学長寿研究センターとドイツのマックス・プランク研究所 人間発達研究部門から、脳トレゲームの効果は科学的根拠が不十分であるという声明が発表されたことがニュースになったこともありました。
私のクリニックを受診する患者さんのなかにも、脳トレ愛好者はたくさんいらっしゃいます。もちろん、どんなことであっても「自分が興味をもてること」に取り組むことは決して悪いことではありません。脳トレに取り組むことで頭がスッキリして心が安定するのであれば、どんどんやっていいと思います。
ただし、「脳トレさえ行っていれば、記憶力の低下や認知症といった脳の衰えが防げる」と考えるのは間違いです。
筋肉と同じように脳にも栄養が必要
ここでちょっと考えてみてください。机に座って黙々とクロスワードを解くだけで、 頭がスッキリして物忘れをしなくなったり、集中力が増したり。そんな夢のようなことがあると思いますか?
筋肉をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
普段から体を動かすことはもちろん、ダンベルや腹筋でトレーニングしていれば勝手に鍛えられるというのは大きな間違いです。
筋肉が成長したり、強くなるためには、その成長を助ける栄養を補給することが必要になります。筋肉の成長に必要な栄養がしっかりとれていなければ、筋肉は成長することができず、それどころか、傷めつけられて細ってしまいます。
脳も同じです。機能を維持するためには栄養を必要とします。必要な栄養が補給されなければ、どんどん衰えてしまうのです。
内野勝行(うちの・かつゆき)
30万部突破『疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい』を監修した名医。
帝京大学医学部医学科卒業後、都内の神経内科外来や千葉県の療養型病院副院長を経て現在、金町駅前脳神経内科院長。
脳神経を専門としてこれまで約1万人の患者を診てきた経験を基に、脳をクリーニングする「脳のおそうじスープ」を開発した。
フジテレビ「めざましテレビ」やテレビ朝日「林修の今でしょ! 講座」などテレビ出演多数で、様々な医療情報番組の医療監修も務める。
『記憶力アップ×集中力アップ×認知症予防
1日1杯脳のおそうじスープ』