厚生労働省の調査(※1)によると、性感染症のひとつである「梅毒」感染者数は近年急速に増加傾向にあり、2014年と比べて2018年の報告数は女性で6.4倍、男性で3.6倍となり、20歳から24歳の女性の報告数が男性を含めても一番多くなっているようです。
性交渉の経験がある人にとっては誰でも感染リスクがある性感染症について、パートナーとの話し合いや予防策など、改めて考えるきっかけにしてほしいと思います。
今回、株式会社エムティーアイ(https://www.mti.co.jp/)が運営する、ライフステージや悩みにあわせて女性の一生をサポートする健康情報サービス『ルナルナ』が行った「性感染症についての意識調査」についてご紹介します。
半数の女性が性感染症を疑った経験あり! 10代でも約3割の人が不安に…
Q. これまで、性感染症(性病)にかかったのではないかと疑ったり、不安に思ったりした経験はありますか?
まず、自身が性感染症にかかったのではないかと不安に思ったことはあるかを聞いてみました。全体では「はい」が50.4%、「いいえ」が49.6%となり、約半数の人が性感染症を疑ったり、不安に思ったりした経験があることが分かりました。
年代別に見てみると、20代から40代までは約半数の人が疑った経験があると回答していますが、15歳から19歳のユーザーで約3割、14歳以下でも1割以上の人が疑った経験があることが分かります。厚生労働省の調査(※1)でも、性感染症のひとつである「梅毒」感染者数は急速に増加傾向にあり、20歳から24歳の女性の報告数が一番多くなっていることから、若い世代も正しい知識を身に着けて、予防策を実施してほしいと思います。
気になる症状があっても2割以上の人は何もせず…。早めの婦人科受診を!
Q. どのような症状から、疑ったり不安に思ったりしましたか? ※実際に罹患したかどうかは問いません(複数回答)
続いて性感染症を疑ったことがあると回答した人に、具体的な症状について聞いてみました。最も多かった回答が「デリケートゾーンに痒みが出たから」30.5%、次いで「おりものの臭いが気になったから」18.2%、「おりものの量に変化があったから」16.6%となりました。
Q. 症状について、実際にどのように対応しましたか?
では、性感染症の罹患を疑った人はどのような対応をしたのでしょうか? 「産婦人科にて治療した」57.1%、「婦人科以外の医療機関で治療した」3.8%を合わせると、6割以上の人が医療機関で治療したという結果となりました。しかし、「我慢した/放っておいた」が24.6%となり、2割以上の人 が何もしなかったということも分かりました。
性感染症にかかると、かゆみや不正出血、しこり、できものなどカラダに異常が出る場合や、おりものが増加したり臭いがすることがあるようです。しかし、初期では無症状の場合もあったり、なかには治療しなくても自然に良くなったように見えることもあるようで、初期症状を見逃してしまい、本人も自覚がないままパートナーやほかの人へ感染を広げてしまう危険性もあります。ルナルナユーザーは、性感染症を疑った理由として、おりものの変化について答えている人が多かったですが、普段からおりものや自身のカラダの状態をチェックしておき、少しでもいつもと違った症状やカラダに違和感がある場合は、我慢したり大丈夫と過信せず、早めに婦人科などの医療機関を受診するようにしましょう。
9割が感染経路は「膣性交(セックス)」と認知! そのほか感染経路は…?
Q. 性感染症の感染経路について知っていますか?
次に、性感染症の感染経路を知っているかを聞いてみました。「知っている」86.0%、「知らない」14.0%となり、ほとんどの人が感染経路について知っていると回答しています。
Q. 性感染症の感染経路として、あなたが知っているものを全て選んでください。(複数選択)
では、感染経路を「知っている」と回答した人に、実際に知っている感染経路を聞いてみると、1位が「膣性交(セックス)」90.3%、2位が「口腔性交(オーラルセックス)」70.8%、3位が「肛門性交(アナルセックス)」66.6%となりました。
9割以上の人が「膣性交(セックス)」によって感染すると回答していますが、それ以外の感染経路については回答にばらつきが見られました。実は選択肢として挙がっているものすべてが、性感染症の感染経路となります。「粘液が肌に接触する行為」は34.7%と半数以下の回答となりましたが、感染した粘膜や精液・膣分泌液などが相手に触れたり、皮膚などの小さな傷から感染することもあります。性感染症は性行為の経験が一度でもある人なら感染する可能性があるため、正しい感染経路を知っておくことが大切です。
性交渉前に性感染症について相手と話したことがある人は2割弱! 話を切り出すタイミングがわからないと感じる人が多く…
Q. あなたは性交渉の機会がある際に、性感染症について、性交渉する相手と話をすることができますか?
続いて、妊娠・出産経験のない人に、性交渉する際に相手に性感染症について話をすることができるかを聞いてみました。
「実際に話をしたことがある」19.6%、「話をすることはできると思う」51.6%、「話をすることはできないと思う」28.8%となりました。5割以上の人が「話をすることはできると思う」と回答していますが、実際に話したことがある人は2割弱となりました。
Q.相手と話した結果、予防策として何か取り組みをしましたか?
「実際に話をしたことがある」と回答した人に、予防策として取り組みを聞いてみると、「取り組みをした」72.7%、「特に何も取り組んでいない」27.3%となりました。3割弱の人が予防策をしていないと回答していますが、その理由を聞いてみたところ(複数回答)、「自分たちは大丈夫だと思ったから」48.6%で最も多く、次いで「相手が嫌がったから」15.9%となりました。性感染症は性行為の経験が一度でもある人なら感染する可能性があるため、自分たちは大丈夫と過信せずに、きちんと予防策を実施してほしいと思います。
Q. 「話をすることはできないと思う」と答えた方にお聞きします。理由を教えてください。(複数回答)
では、「話をすることができないと思う」と答えた人に、その理由を聞いてみました。最も多かった回答が「どのように話を切り出したらいいか分からなかったから」84.9%、次いで「自分が嫌だと思ったから」15.0%、「自分たちは大丈夫だと思ったから」10.4%となりました。
自由回答には「雰囲気が壊れるのが嫌だったから」「相手を疑っているようで悪いから」といった声が目立ちました。センシティブな問題でもあり、相手を傷つけたり、信頼関係を失ってしまうのではないかと心配になるかもしれません。話を切り出すことはとても勇気がいることですが、自分だけでなく大切な相手の健康を守ることにもつながるため、ぜひ一歩を踏み出してほしいです。
妊娠を望んだ場合でも、7割以上がパートナーと性感染症について話したことがない!?
Q. 妊娠を望んだ際、性交渉する前に性感染症について、パートナーと話をしたことがありますか?
続いて、妊娠・出産経験のある人(現在、妊娠中も含む)に、妊娠を望んだ際に、性感染症についてパートナーと話をしたことがあるかを聞いてみました。「ある」が27.1%、「ない」が72.9%となりました。妊娠・出産経験がない人に比べると、話したことがある人が多い結果となりましたが、それでも3割弱にとどまりました。
Q. 「ある」と答えた方にお聞きします。パートナーと話した結果、予防策として何か取り組みをしましたか?(複数回答)
パートナーと話したことがあると回答した人に、予防策として取り組みをしたかを聞いてみると、「取り組みをした」57.6%、「特に何も取り組んでいない」42.4%となりました。
「取り組みをした」と回答した人に、実際に行った予防策を聞いてみると(複数回答)、「自身の検査実施(産婦人科などの医療機関にて)」が67.0%で最も多い結果となりました。しかし、「パートナー側の検査実施(産婦人科などの医療機関にて)」は27.7%となり、自身の検査に比べて半数以下でした。
また、パートナーと話したことがあるが「特に何も取り組んでいない」と答えた人が4割以上いましたが、その理由を聞いてみると、「自分たちは大丈夫だと思ったから」が63.0%で最も多い結果となりました。少数ですが「妊娠には影響ないと思っていたから」6.9%と回答している人もいました。
Q. 「パートナーと話したことがない」と答えた方にお聞きします。ご自身だけの予防策として何か取り組みをしていますか?
では、パートナーと話したことがないと回答した人に、自分だけの予防策を行っているのか聞いてみると、「取り組みをした」18.9%、「特に何も取り組んでいない」81.1%となり、予防策を実施していない人が圧倒的に多い結果となりました。対策をしていない理由を聞いてみると(複数回答)、「自分は大丈夫だと思ったから」51.2%で最も多く、次いで「相手が嫌がりそうだと思ったから」21.7%となりました。
妊娠を望んだ場合でも、パートナーと相談できる人が少ない結果となりました。また相談している、していないにかかわらず、予防策を取っていない人が多いことが気になります。妊娠中にかかっていることで、胎児に感染すると死産や流産の原因となったり、先天性の障害がおこる性感染症や、出産時に産道で赤ちゃんに感染すると内臓疾患や呼吸困難を引き起こす性感染症もあるようです。生まれてくる赤ちゃんの健康を守るためにも、性感染症についての正しい知識を身に付け予防策を実施してほしいです。
隠すことではく当たり前なものとして、学校だけでなく、家庭や大人になってからも学べる環境を…。
Q. 性感染症(性病)の感染の拡大を防ぐために、どのような学びの場や支援があったら良いと思いますか? あなたの考えを教えてください。(自由回答)
最後に、性感染症について学ぶための方法や支援について聞いてみると、1500件以上のたくさんの意見が寄せられましたので、その一部を紹介します。
・隠しがちでオープンにしにくい話題ではあるが、当たり前な情報として普及する機会が欲しい。
・学校教育内での性教育をもっと早い段階で行ったり、医師や看護師といった専門職の人から話された方がより聞く方の意識も上がると思う。
・中学、高校などのタイミングだけでなく、性行為を行う機会が増える成人に対して正しい知識を学べる場があったらいいと思う。
・自分が昔学校で習った性教育では不十分だと思った。小さいうちから性教育は必要だと思うし、小さい子向けの本もあるので家族でも教えていけたらと思う。
・他の病気のように、もっと気軽に性病のことを教えてくれたり学生の時にもっと勉強する機会がほしかった。名前はわかるけど、症状まではわからない病気が多い。
・対面だと難しいと感じる方が多いと思うので、SNSでいつでもどこでも気軽に学べる環境があればいいなと思います。もしくは、知っておくべき当たり前の問題として、学校教育に取り入れてもらえると、気軽に話せる環境になるのでは?
・影響力のあるインフルエンサーの方が発信する。学校の授業では興味がわかない。
・学校教育の場、特に中学・高校で、性教育も含めしっかり行うべきだと思う。また親もきちんと学習して家庭でも伝えるべきことだと思う。親の学び場としては、学校の保護者会や地域のセンターでそういう機会を作るべきだと感じる。
今回の調査では、性感染症について、自分は大丈夫と思って予防策を行っていない人や、パートナーと話し合うことが難しいと感じている人が多くいることが分かりました。また、性感染症についてなんとなく知ってはいるけれど、「もっと学ぶ機会が欲しい」、「もっとオープンに話し合えるといい」、「学校だけでなく家庭でも話したり学ぶ機会が必要だと思う」といった声が目立ちました。性感染症は誰でもかかるリスクのある病気で、自分でも気が付かないうちに大切な人や赤ちゃんにうつしてしまう可能性もあります。病気や症状について正しい知識を身に付けて、予防策を講じたり、もし普段と違う症状があった場合は、早めに婦人科など医療機関を受診し早期発見・早期治療することが大切です。
今回の調査結果をもとに、性感染症について改めて考えたり、パートナーや家庭で話すきっかけとなれば思います。
調査実施時期 : 2021年7月16日(金)~7月19日(月)
調査方法および人数:『ルナルナ』、『ルナルナ 体温ノート』、『ルナルナ ベビー』にてアンケート調査 10代~50代の女性: 9,282名
※1:厚生労働省「これって性感染症?」:https://www.hivkensa.com/sti/