今年、喜寿を迎える日本舞踊家の健康の源は、朝の果物。果物は胃腸や体を目覚めさせ、脳のエネルギーにもなるという。

【楳若勧二郎さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、果物(苺・林檎・パイナップル・バナナ)と野菜サラダ(レタス・玉葱)、バタートースト、ドレッシング、牛乳、コーヒー。果物はバナナやパイナップルの他、季節のものを用意。野菜サラダには低脂肪の胡麻風味ドレッシングをかける。牛乳も低脂肪のものを。コーヒーを淹れるのは宗家の仕事。ブラック用に苦みを抑えるのは、宗家にしかできない淹れ方だという。

愛犬がいた頃の習慣で午前5時起床、就寝は夜10時。朝食は午前6時半~7時で、「3食とも妹夫婦(この日は妹・勧柳さんの夫君が不在)と内弟子で師範の仔一郎の4人で摂ります」と楳若勧二郎さん。3人とも午前中の稽古用衣装で食卓に。

江戸前で鉄火肌、あるいはちょっと崩れた小粋な女──。日本舞踊・楳若流宗家、楳若勧二郎(うめわかかんじろう)さんの女舞の世界はそう評される。初代吾妻徳穂が、“100年にひとり出るか出ないかの逸材”と絶賛したほどである。

昭和19年、福岡県豊前市に生まれた。網元をしていた父を始め、芸事が好きな一家だった。

「私が3歳の頃、日本舞踊を習っていた長姉を真似て、見よう見まねで踊ったことをおぼろげながら覚えています」

三つ子の魂百まで、芸の道に進むと決めて17歳で上京。そこで運命的に現楳若流頭取の楳若勧助さんと出会い、日本舞踊・楳若流を創設する。まだ18歳だった。

師をもたぬ、独学修業。だが、諸先輩に恵まれた。評論家の郡司正勝や戸部銀作、日本舞踊家の初代猿若清方、初代吾妻徳穂らに可愛がられ、彼らの推薦で日本舞踊協会に入会。この頃の郡司正勝からの助言が、その後の道を決めた。

「郡司先生から“舞踊界に染まるのか、今まで通りに一匹狼で行くのか”と問われ、どこにも属さないで一匹狼で行くと決めました」

その時、郡司からもらった言葉がある。“我以外皆師”。この言葉を胸に、勧二郎独自の世界を築き上げてきた。『女舞三趣』で昭和61年度文化庁芸術祭賞を受賞したことからも、その実力のほどがうかがえよう。

昭和61年度文化庁芸術祭賞受賞の『女舞三趣』。最初に舞った長唄『都風流』は新派調の芸者の扮装で、小粋な女の姿を確立。勧二郎さんの今も大切な一曲になっている。
中幕に配した大和楽『鐘』は、最後の『松風』と異なった趣にするために、長嶺ヤス子さんのフラメンコに想を得た演出を。ドラマチックで斬新な『鐘』は、今も語り草だ。
終幕は初代泉徳右衛門との共演で舞った清元『松風』。『鐘』とは一転して古風な歌舞伎舞踊を披露。三者三様、それぞれ異なった女の姿を踊り分けたことが高評価を得た。

舞踊家ならではの体重管理

勧二郎さんは、この4月8日に喜寿を迎える。今も東京本部を始め、地方にある支部を東奔西走する日々だが、健康の秘訣は何か。

「踊ること自体が健康にいいのでしょう。それと“朝の果物は金”といわれるように、朝食には果物を欠かしません」

朝、食べる果物は胃腸や体を目覚めさせ、また脳のエネルギー源となるブドウ糖を始め、果糖も多く含まれている。加えて、気をつけているのは体重管理だ。

「私がテーマとする女舞は太っていては美しくない。牛乳やドレッシングは低脂肪のものを愛用。朝食と昼食の後にはお稽古があるのでしっかり食べますが、夜は軽く麺類程度です」

楳若家では鰻やすき焼き、鍋物も昼食に登場するという。

小腹がすいた時にいただく茶漬けは、出汁ではなく緑茶で仕立てる。その茶漬けの友に欠かせないのが「しいたけ昆布」だ。楳若流大分支部を訪れた時に出会って以来、常備しているという。
昼食後と夕食後の1日2回飲むヤクルト。これを飲み始めてから便通がよくなり、胃腸の調子もすこぶるよくなった。ヤクルトの乳酸菌は、腸内の善玉菌を効果的に増やすことができる。

観るもの、聴くもの、感じるもの、全てが芸の糧になった

踊り続けて60年──。楳若流宗家の勧二郎さんは芸ひと筋、頭取の勧助さんは営業面と、二人三脚で時を重ねてきた。

「若い頃は歌舞伎、能、狂言はもちろん、体があいていればあらゆる舞台を観に行ったものです。観るもの、聴くもの、感じるもの、これら全てが芸の糧になり、郡司先生(前出)からいただいた言葉通り、“私以外の人は皆先生”でした。それは今も変わりません」

男ふたりで漕ぎだした楳若流ではあったが、創流15周年頃から軌道にのり、今では全国に弟子180余人を数える。

自宅近くの楳若流東京本部の稽古場で、弟子の勧柳さんと仔一郎さんに振り付けの指導をする。曲は新作の長唄『花競三叟(はなくらべさんばそう)』で、春夏秋冬に競い咲く花に託した祝言の舞だ。

「今、宗家としての私の仕事の第一は“振り付け”です。これは古典を踏まえた上での独自性がなければいけない。喜寿公演では能の『隅田川』の続きを舞う『後の隅田川』や狂言『庵の梅』などを考えていますが、いずれにしましても新作ならではの“振り”をご披露したいですね」

女舞の奥義を窮めること。その思いは年々強く、4月11日(於国立劇場小劇場)の喜寿記念公演『勧二郎の世界』では、どんな舞を見せてくれるのか楽しみだ。

この4月11日の喜寿記念公演で舞う予定の『幻椀久』の振り付けの確認をする勧二郎さん。稽古場の扁額『楳第一』は、屋久杉に奈良・東大寺長老清水公照さんの揮毫。同寺に舞を奉納した礼に、長老から贈られたものだ。
目にも鮮やかな簪(かんざし)のコレクション。全国各地の舞台の合間に見つけたものだが、最も多いのが京都で出会った掘り出し物。普通、簪は鬘屋さんに任せるが、愛着のある役を舞う時は特別に持参して使ってもらうこともある。

※この記事は『サライ』本誌2021年4月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。 ( 取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆 )

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