熱はないけれど喉が痛い。かぜの後、熱は引いたが喉の痛みが取れない。ちょっと疲れがたまると喉が痛くなる……。最近、こんな喉の症状を訴える人が増えているようです。なかなか引かない痛み、どんなお薬がいいのでしょうか?

炎症だけを抑えるトラネキサム酸

まず市販薬から見ていきましょう。ドラッグストアに行くと、「喉の痛み」に対応する薬はたいがい、かぜ薬の近くに配置されています。かぜ薬にはどれも解熱剤が入っているのですが、熱はないのですから、解熱剤は必要ありませんね。

市販のかぜ薬に入っている解熱鎮痛剤は、イブプロフェン、ロキソプロフェン、アスピリンなど。いずれもNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)です。つまり、NSAIDsは解熱だけでなく、抗炎症作用を持ちます。解熱と鎮痛の両方に効く強い成分なので、使うのは本当に必要な時だけにしたいものです。

そこで喉の痛みを取るだけなら、喉の炎症に効く薬が第一選択になります。トラネキサム酸という抗炎症作用をもった成分がよく使用されています。市販薬では「ペラック」が有名です。

トラネキサム酸は、喉の炎症の原因物質になるプラスミンという化学物質を抑える作用をします。喉の痛みだけでなく、口内炎や歯肉炎、扁桃炎など口腔の粘膜の炎症にも有効で、湿疹やじんましんなどにも使われます。大きな副作用もなく、安全性の高い薬です。

処方薬には市販薬の倍量の有効成分が

ただし、「ペラック」に含まれるトラネキサム酸は1錠125mg、大人1日分6錠あたり750 mgです。市販薬としては1日に飲めるトラネキサム酸の上限が、この量なのです。一方、病院で処方されるトラネキサム酸の上限量は2000mgです。薬局では1回あたり500mgを1日3回、合計1500mgという処方箋をよく見ました。市販薬の2倍ですね。市販薬を飲んでみて、効果が感じられないようでしたら、やはり病院で診てもらい、適切な薬を処方してもらうのが回復の近道でしょう。

トラネキサム酸以外の選択としては、やはり、かぜ薬になります。大手のかぜ薬は症状ごとに細分化され、「のど用」「熱用」「鼻用」と分けられていますよね。中身の成分にそれほど大きな違いはありませんが、喉の炎症を抑える成分が、「熱用」「鼻用」より多く入っているのが特徴です。喉の痛みを取る成分としては、先述したようにイブプロフェンやロキソプロフェン、アスピリンといったNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)になります。

うがいをするなら消毒液よりアズレン

熱はないけど喉が痛い人に有効なもうひとつの方法は、うがいです。水でうがいするだけでもいいのですが、うがい薬を使うなら、抗炎症作用のある「アズレン」(アズレンスルホン酸ナトリウム)がおすすめです。紫色の液体です。

うがい薬というと、濃い茶色をしたポピドンヨードのほうが知られていると思いますが、ポピドンヨードはヨウ素を原材料とした殺菌剤です。これでうがいをすると口の中の常在菌もみな殺菌されてしまいます。口の中にはさまざまな常在菌が存在し、それらがバランスよく共生することで、私たちの健康は保たれています。喉が痛いからといって常在菌を殺菌してしまうと、口内の菌バランスを崩してしまい、かえってよくないのではないかと思います。

薬に頼らないセルフケアこそ大事

喉が痛む原因を知ることが大事です。まず、風邪やインフルエンザなどウイルスや細菌の「感染による痛み」が考えられます。日本人は熱が出ないと「かぜ」だと思わない傾向がありますが、喉の痛みもかぜ症状のひとつです。熱がないからといって軽視せず、ふだんの生活を振り返ってみましょう。

感染ではなく、「喉単体の痛み」が出る原因としては、喉の粘膜を痛める行為、たとえばタバコやアルコールの飲み過ぎが考えられます。飲みに行って大声を出していませんか? ガヤガヤしたお店で飲むとついつい自分も大きな声になりがちです。こうしたことが喉の粘膜を刺激して、炎症がいつまで経っても引かない理由になったりします。カラオケなどで長時間、熱唱することも同様です。もっとも今年のコロナ状況下では、大声は敬遠されるでしょうが。

空気の乾燥も喉を痛めます。今の梅雨の時期、外はジメジメして湿度が高いのですが、エアコンつけっぱなしの室内は意外と乾燥しています。また、エアコンからの風が当たって、知らず知らずのうちに喉が乾燥しているかもしれません。こまめな水分補給は熱中症予防だけでなく、喉のケアにもなります。

また、ごく簡単な乾燥予防としてアメをなめるのもおすすめです。特に「のど飴」である必要はありません。お好きなアメで十分ですよ。

以上のような対策、予防をとられた上で、それでもなお喉の痛みがなかなか取れないという場合は病院で診てもらいましょう。受診する目安としては、膿(うみ)がある、飲み込むときにガマンできないほどの強い痛みがある、痰(たん)に血が混じる、息苦しさがある、高熱が出たなど感染や他の病気も考えられる場合です。長引かせているうちに悪化してしまうケースもあります。薬と病院は必要性を見分けて、正しく利用しましょう。

宇多川久美子(うだがわ・くみこ)
薬剤師、栄養学博士。一般社団法人国際感食協会理事長。健康オンラインサロン「豆の木クラブ」主宰。薬剤師として医療現場に立つ中で、薬の処方や飲み方に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」をめざす。薬漬けだった自らも健康を取り戻した。現在は、栄養学や運動生理学の知識も生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に薬に頼らない健康法をイベントや講座で多くの人に伝えている。近著に『血圧を下げるのに降圧剤はいらない: 薬を使わない薬剤師が教える』(河出書房新社)。

 

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