今ではすっかり、日本の家庭料理の定番になった焼き餃子も、歴史を紐解(ひもと)けば、作られるようになったのは最近のことである。第二次世界大戦後、敗戦で満州から引き揚げた人々が日本に持ち込み、爆発的に浸透した。
その餃子が新年を祝う食べものであると知ったのは、つい最近のことである。といっても日本ではなく、中国北部の話だ。
2017年は1月28日が春節(しゅんせつ)、すなわち旧正月となる。年越し用品の買い出しなどに追われながら、大晦日に餃子を包む。日本人がお節料理や雑煮を食すように、中国北部の人々にとっては正月に餃子が欠かせないのだ。
お節料理と同様に、餃子も縁起物として位置付けられている。現地では「ヂャオズ」と発音されるが、同音異義語に「交子」という言葉があり、「子どもを授かる」という意味を持っているのだという。
また、餃子は半月のかたちに包まれることが多いが、これはお金を模しているといわれる。「元宝銀」という昔の通貨によく似ており、子孫繁栄に加えて「新しい年にお金に恵まれますように」という願いも込められているのだ。
ちなみに、正月に食される麺料理は、「細く長く」で「長寿」を祈願するものらしい。「百財」と発音が似ているため、「白菜」が食卓にのぼるというのも興味深い。
これまでは、何気なく食べてきた餃子。また違った視点で、楽しみながら味わえそうである。
写真・文/大沼聡子
※本記事は「まいにちサライ『食いしん坊の味手帖』」2014年1月27日掲載分を転載したものです。