おでんの世界は多彩になり、「出汁」の違いだけでも選択肢の幅は広がっている。未知なる味わいの「出汁」を楽しめる厳選した7軒を紹介したい。

今や希少な屋台おでん。銭湯の横で漂う天つゆの香り

天つゆおでん屋台 華門(東京・鶯谷)

天つゆで煮込んだおでん。仕切りにより、魚介系、肉系、油揚げの巾着などと分かれ、“天つゆ”と一口にいっても、少しずつ味が異なるのが面白い。おでんは180円〜。

都内に2軒だけというおでん屋台のうちの一軒『天つゆおでん屋台 華門(かもん)』が、鶯谷の銭湯「萩の湯」の軒下を借りて商いをしていると聞き、訪れてみた。

夕方5時を過ぎた頃。屋台の前に早くも地元の人々が集まっていた。中には、鍋を手に抱えている人の姿も見える。店主の原田貴秀さん(51歳)に鍋を手渡し、好みのおでんを入れてもらう。どこか懐かしい情景に心が和む。持ち帰りが基本だが、屋台の傍らにある台で、立ち呑みをしながらおでんをつつくこともできる。「萩の湯」で汗を流し、おでんを食べてから帰るという向きが多いようだ。

カレー味の魚肉ボール串とじゃがいもの「カレーセット」450円。
天つゆにカレー味が溶け込んでいる。好みで香辛料のガラムマサラなどをつけてもよい。
麦と芋焼酎の二種類が揃う「泥亀」(2〜3人分1000円)をソーダ割りとともに天つゆおでんを堪能。手前から時計回りにちくわぶ、糸こんにゃく、フランク、こんにゃく、紅生姜天、大根。

甘めの江戸っ子天つゆ出汁

『華門』のおでんの特徴は、なんといっても天つゆ出汁。天つゆは、浅草の天ぷら店『秋光(あきみつ)』のものをおでんに合うよう調整。仕切りのあるおでん鍋にたっぷりたゆとう天つゆ出汁には、25種類ほどのタネからも出る旨みが溶け込み、まろやかな味わいだ。

気さくな原田さんとの会話も楽しく、ふと足を運び、一杯やりたくなる。そんな人情味あふれる、おでん屋台だ。

天つゆおでん屋台 華門

自ら手造りした屋台でおでんをふるまう原田さん。

東京都台東区根岸2-13-13(ひだまりの泉萩の湯敷地内) 
電話:03・5811・1031(和食バル 華門)
営業時間:17時頃〜23時頃
定休日:月曜(その他、萩の湯に準ずる)
交通:JR鶯谷駅より徒歩約3分 立ち呑みができるスペースあり。

取材・文/平松温子 撮影/安田仁志
※この記事は『サライ』2022年12月号より転載しました。

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