仙厓義梵(せんがい・ぎぼん)は、江戸時代の臨済宗古月派の禅僧ですが、彼の名を世に知らしめているのは禅味あふれる絵画です。

寛延3年(1750)に美濃の農家で生まれ、11歳で仏門に入り、39歳のとき博多の聖徳寺の住職となりました。以降、生涯博多に住み、88歳で亡くなるまで、権勢にこびず、あらゆる階層の人々から敬愛されました。教化のために描いた書画は独自の気品とユーモアに富み、禅画の代表作として世界的にも注目を集めています。

《犬図》江戸時代(19世紀)福岡市美術館蔵(石村コレクション)

福岡市美術館で開催の「仙厓展」は、博多の仙厓さんと今も親しみを込めて呼ばれる仙厓の書画を紹介する展覧会です。(8月26日~10月19日)

本展の見どころを、福岡市美術館の学芸員、宮田大樹さんにうかがいました。

「親しみやすい書画を通して禅の思想を伝えた仙厓義梵(1750~1837)は、人々から「博多の仙厓さん」と呼ばれて慕われました。

本展では、ゆるくてかわいい動物や、マンガのキャラクターのようにデフォルメされた人物、ほっこりと癒してくれる仏さまなど魅力あふれる作品はもちろん、仙厓さんの禅僧としての側面を伝える作品もご紹介します。

《観世音菩薩図》江戸時代(19世紀) 
福岡市美術館(石村コレクション)
《円相図》江戸時代(19世紀) 
福岡市美術館蔵(小西コレクション)

この《円相図》は仙厓さんが禅僧として現役バリバリだった50代から60代前半頃に描かれた作品です。本作において仙厓さんは、仏教や儒教など様々な教えを包摂する心、つまり、違いにこだわらずに共通点に目を向けることの大切さを説いています。

こうした考えを人々に伝える手段として用いたのが書画でした。思わず頬を緩めてしまうような作品を見ることで人々が同じ思いを共有すること、仙厓さんが厳しい修行や試行錯誤の末にたどり着いたのが、この境地だったのです。

展覧会を通して、仙厓さんの画風の変化や思想の深まりも感じていただけると幸いです」

《蜆子和尚図》
江戸時代 文政3年(1820) 
福岡市美術館蔵(三宅コレクション)

「70歳で迎えがきたら留守だといえ、80歳で迎えが来たら早すぎるといえ……」仙厓さんの名言です。会場で、仙厓さんの教えに向き合ってみませんか。

【開催要項】
仙厓展
会期:2025年8月26日(火)~10月19日(日)
会場:福岡市美術館 1階 古美術企画展示室
住所:福岡県福岡市中央区大濠公園1-6
電話:092・714・6051(代表)
公式サイト:https://www.fukuoka-art-museum.jp/
開館時間:9時30分~17時30分、8月~10月の金・土曜日は~20時(入館はどちらも閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし9月15日、10月13日は開館)、9月16日(火)、10月14日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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