1700年代初頭まで、硬質磁器の製作技術を持たなかったヨーロッパでは、中国や日本の磁器を珍重しました。
アジア貿易に積極的であったオランダ東インド会社やその社員たちが、1660年代頃から本格的にヨーロッパ向けに扱い始めたのが、日本製の磁器である伊万里焼。
ヨーロッパでは実用としてのほか、王侯貴族の城館を飾る調度品として用いられました。
戸栗美術館で開催の「西洋帰りのIMARI展―柿右衛門・金襴手・染付―」は、海を渡って再び日本に帰ってきた伊万里焼の名品や、輸出向けの可能性がある作品などを紹介します。(4月12日~6月29日)

本展の見どころを、戸栗美術館の学芸員、黒沢愛さんにうかがいました。
「今展は江戸時代の伊万里焼の中でもヨーロッパ向けの輸出に注目し、3章立てで構成いたします。
伊万里焼貿易と里帰りの様相を追う第1章のメインのひとつは「色絵 花鳥文 輪花皿」。裏面の刻印から、アウグスト強王の旧蔵品と判明する貴重な作品です。「染付 二果文 皿」はオランダ東インド会社を示す「VOC」のマークが見込に記され、同社の注文品でしょう。


第2章では、ヨーロッパで写されたデザインや施された加工に着目。「色絵 牡丹文 瓶」は金属装飾によって華やかな燭台に加工された類品が知られており、本作の高台脇にも台を取り付けたような痕跡が残ります。

戸栗美術館蔵
当時のヨーロッパの流行を探る第3章では、喫茶文化に関わるカップ&ソーサーや、ティーポット形の水注、沈香壺、芙蓉手の大皿などを展示いたします。

戸栗美術館蔵
優美な柿右衛門様式や華やかな古伊万里金襴手様式の色絵磁器、東洋風の情緒溢れる染付磁器など、ヨーロッパ好みの約80点をご堪能ください」
会期中の5月24日(土)14時~ 戸栗美術館学芸顧問・森由美氏による特別講演会「王様と古伊万里」が開かれます(約60分・予約不要)。ぜひご参加ください。
【開催要項】
西洋帰りのIMARI展―柿右衛門・金襴手・染付―
会期:2025年4月12日(土)~6月29日(日)
会場:戸栗美術館
住所:東京都渋谷区松濤1-11-3
電話:03・3465・0070
公式サイト:https://www.toguri-museum.or.jp/
開館時間:10時~17時、金・土曜日は~20時(入館は各閉館30分前まで)
休館日:月曜日、火曜日(ただし4月29日、5月5日、5月6日は開館)、5月7日(水)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
取材・文/池田充枝