日本の美意識を色と模様に表した「きもの」。日本が世界に誇る文化、きものの歴史を一望できる展覧会が開かれています。(8月23日まで)
本展では、室町時代の小袖、戦国時代の武将が着用したきもの、江戸の琳派絵師・尾形光琳直筆の小袖、きものが描かれた国宝の絵画作品など約300件の作品が一堂に会します。
本展の見どころを、東京国立博物館の工芸室長、小山弓弦葉さんにうかがいました。
「日本の伝統衣装として海外でも知られている『きもの』が、広く日本人に日常着として着られるようになったのは、室町時代以降のことです。この展覧会は、室町時代から現代までのきものデザインと技法の歴史を展示する、当館でも初めての試みです」
以下、順番に小山さんに解説をして頂きます。
1.国宝 婦女遊楽図屏風(松浦屏風)
江戸時代初期までの「きもの」はなかなか現代まで遺されていません。江戸時代初期に女性たちが、どのような「きもの」を着こなしていたのか、知りたいですよね。この屏風には、江戸時代、ファッション・リーダーだった、遊女たちの出で立ちを克明に描いています。左隻右手に立つ3人の遊女は刺繡や絞りで豪華に装飾された、最新流行の「きもの」を身にまとっています。
2.重要文化財 紅紋縮緬地束熨斗模様
江戸時代前期、経済力をつけた町人の妻や娘は、豪華な衣装を誂えて衣装くらべをするようになりました。町人たちの贅沢があまりに行きすぎたため、江戸幕府は刺繡や絞りで豪華に仕立てた衣装を禁止します。そこで、町人たちは、それらに代わる華やかな友禅染の「きもの」を着るようになりました。この振袖は、吉祥模様である熨斗模様を背中全体に友禅染で染めた若い女性の晴着。その華麗で大胆なデザインに魅了されます。
3.重要文化財 小袖 白綾地秋草模様 尾形光琳筆
幾度禁止令が出されても、町人たちの豪奢な衣装にかける思いが途切れることはありませんでした。その一つが、評判の画家に描かせた「描絵小袖」でした。京都から江戸に下向した尾形光琳は、経済的な援助を受けた深川の材木商・冬木家のために、白い綾の「きもの」に秋草模様を描きました。光琳はいくつかの描絵小袖を制作したようですが、完全な形で遺されているのはこの1点のみです。
4.陣羽織 黒鳥毛揚羽蝶模様 織田信長所用
「きもの」と言えば、女性の華やかな衣装を想像しますが、この展覧会では、第3章で男性の衣装も紹介しています。冒頭では、戦国時代の3武将、信長、秀吉、家康などの陣羽織を紹介。信長の陣羽織は、上半身を山鳥の毛で覆い、白い鳥毛を埋めて信長の家紋であった蝶の模様をあしらった、奇抜な出で立ちを好んだ信長らしい一領。
5.TAROきもの 岡本太郎原案
岡本太郎は「太陽の塔」や「明日の神話」など現代芸術家として有名ですが、「TAROきもの」というブランドで、きもののデザインをしていたことはあまり知られていません。岡本太郎の「きものは、柄でおさまってしまうよりも、むしろ『絵画』を身につけて、誇らしく楽しむ、世界でもユニークな衣装だと思う」の本質を言い当てています。
「百聞は一見に如かず、トーハクが初めてお披露目するアート感覚の『きもの』展、ぜひ、遊びにいらしてください」
ずらりと並ぶ、迫力満点の美しいきものの数々!!ぜひ会場でご堪能ください。
【開催要項】
特別展「きもの KIMONO」
会期:2020年6月30日(火)~8月23日(日) ※前期・後期で展示替えあり
前期:6月30日(火)~7月26日(日) 後期:7月28日(火)~8月23日(日)
会場:東京国立博物館 平成館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://kimonoten2020.exhibit.jp/
開館時間:9時30分(時間指定制) ※総合文化展17時まで、夜間開館はなし
休館日:月曜日(ただし8月10日は開館)、8月11日(火)
事前予約制(日時指定券のオンライン予約が必要)
取材・文/池田充枝