本来の仕事のほかに、副業を考えている人も多いことだろう。企業にとって社員の副業はデメリットが多いような気がするが、実はメリットもあるという。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、社員の副業について、メリット・デメリットを知ろう。
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2018年に副業・兼業が解禁され、実際に社員の副業を認める企業が出ています。
その結果、副業にはメリットもデメリットもあることが分かってきています。
ただ、副業の意向は若い社員であるほど高く、反対するのが一概に良いとも言えなくなってきています。
副業の実態を探ってみましょう。
20代は副業「今すぐにでも」
パーソル綜合研究所の調査によると、副業を容認している(条件付きの容認含む)企業は50%、全面的に禁止している企業も50%という結果でした(図1)。
副業をしている従業員の割合としては、正社員のうち10.9%が現在副業をしている、と答えています。
一つ注目したいのは、若い世代ほど副業の意向が強いということです(図2)。
まだ副業を始めていない社員のうち、副業を「すぐにでもしたい」「いずれしたい」という人数を合わせると、全体の64.3%にのぼっています。
年代別に見ると、特に20代で副業を「すぐにでもしたい」と考えている男性社員は38.0%、女性では30.0%で、「いずれしたい」という範囲では20代男性の44.0%、女性の40%という非常に高い水準にあります。
背景には若手社員の2つの価値観があると考えられます。
「先行きへの不安」と「キャリアの自己形成」です。
本業以外のところで収入を得たい、というのは全世代で共通してもっとも多くなっていますが、年代別での差が有意に現れているものとして、「現職の継続就業の不安解消目的」つまり、今の仕事や会社の将来性への不安を、副業で収入を得ることで解消している向きがあります。
同時に、自己実現、本業に対する不満解消、スキルアップや活躍の場の拡大を目的とする副業者が、特に男性で若い世代ほど多いという結果にもなっています。
将来への不安を抱き、かつ、多様な働き方を求める意識が浮き彫りになっています。
副業は本業にどのような影響をもたらすか
従業員の副業を認める、認めないの判断をするとき、デメリットとしてまず気になるのは「過剰労働で体調を崩し、本業に支障を来さないか」ということでしょう。
他にも、労務管理が難しくなる、周囲のモチベーションを下げる、自社への忠誠心が低くなる、といった懸念があると考えられます。
一方で、副業者が実感している効果は、会社が副業を容認しているかどうかによって大きく違っています(図4)。
副業を全面容認している企業であるほど、副業者に様々なメリットが生まれています。
先般、新型コロナウイルスに関してこのようなニュースがありました。
あるコンビニエンスストアでアルバイトをしていた男性が、発熱の症状がありながらもそれを会社に申告しないまま勤務を続け、のちに陽性であることが判明したというものです。
男性が症状について黙っていたのは、「コンビニエンスストアで副業をしているとばれるのが怖かった」という理由です。収入を補うためのアルバイトだったということです。このような事情の場合、企業側が全面禁止をしても、何らかの形で副業をしている従業員がいてもおかしくありません。
そうであればむしろ容認し、実態を把握しておいたほうが、リスクマネジメントの面からは企業にとって良いことかもしれません。もちろん副業を理由に、他の社員よりも本業の負荷を緩めるわけにはいかないという考え方もあるでしょう。ただ、「隠れて副業をしている」状態が一番無理をしやすいとも考えられ、全面禁止を貫くリスクは他にも存在します。
人手不足時代には従業員シェアが必要に
意外に思われるかもしれませんが、副業容認と社員の本業への考え方の関係について、このような調査結果が出ています(図5)。
副業を全面容認している企業の方が、副業者はその会社にずっと勤めていたいと思っている、というものです。
若者の立場にたてば、理解しやすい状況とも言えます。彼らは「認められる」「誰かの役に立つ」ことを仕事のやりがいと感じています。よって、やりたい仕事を副業で実現しながら、その経験や人間関係が本業で役に立った時、大きな満足感を得やすいと考えられるからです。そこで収入補填も可能になる、というのなら、彼らにとっては非常に理想的な働き方なのかもしれません。
逆に、副業の全面禁止をしても、転職の機会を窺っている社員はいて、出て行く人材は出て行ってしまいます。
ただ、逆に考えれば、他社が本業でありながら、自社で副業をしてくれる人材があるとなると、それは助かる部分もあるのではないでしょうか。
若者の数は減り続け、それが今後も続くのはすでに周知の事実です。ここで「囲い込み」をするのが良いのかどうかは一度考える必要があるでしょう。
実は、副業の容認に当たって企業トップが旗振りとなっている企業も存在しています。調査によれば、企業規模に関わらず4社に1社で経営トップ自ら、副業を推奨しているのです。
自社の中に囲い込むのではなく、あえて外に放ち、多くの経験やスキルをフィードバックしてくれる働き方を認めることで、若者と企業双方にメリットが生まれる時代になりつつあります。むしろ、副業が順調かどうか、どんな仕事をしているのか、オープンに会話できる環境が求められているとも言えます。
労務管理に不安がある場合は、副業時間に制限を設けるといった方法もあるでしょう。副業を通じて自社にはなかった発想を持ち込んでくれることを、一つのロイヤリティだと捉える考え方も必要になるかもしれません。
若者を「社会で共有する」あり方を考えてみるのはいかがでしょうか。
【この記事を書いた人】
識学総研編集部/株式会社識学内にある、コンテンツを企画・制作する編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作。
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いかがだったでしょうか。副業を認める、という会社の方が社員にとって、むしろ「やりがいのある会社」と感じられる、ということがおわかりいただけたでしょうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/