新人社員の育成方法は頭を悩ませる問題だ。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、新人社員の育成方法を学ぼう。

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新人社員の育成方法について下記のような悩みを抱いていませんか?

「新人社員の育成方法がわからない」
「最近の新人社員には従来の育成方法では効果が出ない」

組織の発展には新人社員を適切に育成していくことが不可欠です。人手不足が深刻化する中で、従業員の定着率や一人ひとりの生産性を高めることの重要性が増しています。つまり、新人社員に対してどのような育成をするかによって、今後の企業の存続が左右されるといっても過言ではないのです。

そこで、本記事では新人社員の適切な育成方法について解説していきます。

適切な育成方法を見定めるには新人社員への理解が必要

「新人社員に最適な育成方法は◯◯です」といったような唯一絶対の正解はありません。

なぜなら、相手を理解しないままこちらのやり方を押し付けたとしても、育成することはできないからです。したがって、必要になるのは「新人社員への理解」です。新人社員のことを理解した上で、適切な育成方法を検討することが求められます。

ここからは、近年の新人社員にはどのような傾向があるのかを見ていきましょう。

近年はどのような新人社員が増えているのか

マイナビが実施した、2019年以来2年ぶりに実施した2021年度新人社員意識調査の結果からは、近年の新人社員には下記のような傾向が見られました。

・ソーシャル・キャピタルの構築を期待している
・「お金」よりも「社会への貢献」を求めている
・環境の変化に対する適応能力が高い

それでは一つずつ解説していきます。

ソーシャル・キャピタルの構築を期待している

近年の新人社員は、人とのつながりや新たな人間関係などのソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を求める傾向があります。

調査では「社会人生活の中でどのようなことに期待を持っているか」という質問に対して、「新しく人間関係を構築できる」という回答が、これまでよりも増えていることが明らかになりました。

また、「上司や先輩から特に指導してほしいことはどのようなことか」という問いに対しても、「人間関係の構築方法」と答えた割合が、2017年は29.8%、2018年は29.3%だったのに対して2021年は32.7%に増加しています。

「お金」よりも「社会への貢献」を求めている

近年の新人社員の特徴2つ目は、「お金」よりも「社会への貢献」を求めるようになっていることです。

調査を見てみると「社会人生活の中でどのようなことに期待を持っているか」という質問では、「収入が得られること」と回答する割合は2017年から2019年までは44~47%で推移していましたが、2021年では32.8%と大きく減っています。

しかし、2021年では「社会や会社に貢献できること」への期待が33.1%となり、「収入が得られること」への期待を上回ったのです。

その背景には長引く日本経済の低迷や、およそ30年間も給料が上がっていないという現実から給料に対する期待感が薄れてきていることが考えられます。

そこに、2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって世界経済が大きなダメージを受けたため、「収入が得られること」を期待する人が大幅に減ったのではないでしょうか。そこで、自分が生きる意味や仕事をする意義を、社会や会社に対する貢献に求めるようになったと推測できます。

環境の変化に対して動じない

近年の新人社員、3つ目特徴は、環境の変化に対して動じないことです。

「社会人生活の中でどのようなことに不安を感じているか」という質問の回答を見てみると、「環境の変化に対応できるか」という点に不安を感じる新人社員が減ってきていることがわかりました。

その背景には、2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって、大学の授業や就職活動のオンライン化が進み、急激に社会や環境が変化したことが挙げられます。

また、近年「100年に一度」と呼ばれるほどの自然災害が頻発しており、いつ何が起こるかわからない状態に慣れていることもあります。

このように、いくつもの環境の変化を経験しているため、多少の環境の変化では動じない人が増えたと考えられるでしょう。

(参考:2021年度新人社員意識調査から読み解く傾向と関わり方のポイント丨HR Trend Lab https://hr-trend-lab.mynavi.jp/column/newcomers-and-young-people/newcomers/3336/

従来の新人社員の育成方法では効果があがらなくなった背景

適切な新人社員の育成方法がわからないため、従来のやり方をずっと続けているという企業も少なくありません。

しかし、同じ育成方法を続けていると効果が現れにくくなってきてしまいます。理由は、上記で見たように新人社員の傾向が変化していることです。新人社員が求めることや価値観が変わっているのに、従来の育成方法を適用しても効果がないどころか、むしろ逆効果になりかねません。重要なことは近年の新人社員の傾向を掴むことです。

ただし、「新人社員の傾向さえつかめばうまく育成できる」というわけではありません。新人社員だけではなく、新人社員を取り巻く組織の状況や、育成する側の思い込みを理解する必要があります。

業務効率化しすぎることによる弊害

働き方改革の推進によって、現場でも業務効率化が推し進められることが増えてきているのではないでしょうか。もちろんこれは大切なことであり、新人社員でもすぐに業務ができるようになることは、人材育成において悪いことではありません。

しかし、業務効率化が進みすぎると、良くも悪くもあらゆる業務が「ただの作業」のようになっていくため、新人社員が「自分にはもっと向いている仕事があるんじゃないか」とか「自分はなぜこれをやっているのか」と考えるようになり、離職率が増加してしまうでしょう。

対処法
こうした新人社員の「貢献感の欠如」や「働く意味の喪失」に対する対処法は、上司や先輩がその業務の意義をしっかりと伝えることです。

上司からすると「説明しなくてもやっていればそのうちわかるはず」と感じるかもしれませんが、理解する前に仕事を辞めてしまえば無意味です。

したがって、新人社員には業務の重要性を何度も伝えることが求められます。

大切なのは「何度も」という点です。

「一度伝えたからもう理解しているはず」と考える上司は多いですが、「伝える」と「伝わる」には天と地ほどの差があるため、部下に「伝わる」まで伝え続けなければなりません。

「目で見て盗め」は通用しない

「目で見て盗め」や「背中を見て育ってほしい」といった従来の育成方法は、現在は通用しません。近年の新人社員は変化に対する適応能力はありますが、「曖昧さ」に対する対応能力は落ちているため、評価基準や期待される役割が曖昧なままだと、組織が望む成長は望めないでしょう。

対処法
このような状態を避けるには、目標や評価基準を明確にすることが求められます。

目標を明確にして、目標と現在地のギャップを把握することで、「何を」「どのように」することで目標を達成できるのかがわかります。これにより新人社員は曖昧な状態から抜け出し、目指すべき方向性を把握できるため、成長の実感を得やすくなるのです。注意するべきポイントは「一度明確にして伝えておわり」にしないことです。

可能であれば1週間に一度は新人社員と上司との間で話し合って、目標とのギャップや方向性にズレが生じていないかを確認しましょう。

新人社員の育成方法から「曖昧さ」を取り除くべき理由

上記で「近年の新人社員は曖昧な状態への対応能力が落ちている」と述べました。

「曖昧さ」への対応能力は現代、そして今後のビジネスにおいて非常に重要な能力です。

従来は、ビジネスには「何をどうすれば一定の成果が出る」というセオリーや定石がありました。

しかし、現代においてはそのような定石は通用しなくなり、多くの場面で曖昧な要素や不確定要素を加味して迅速な判断を下さなければならなくなりました。

だからこそ、現代のビジネスにおいては「曖昧さ」への対応能力が重要な意味を持っているのです。

では、なぜ近年の新人社員は「曖昧さ」を苦手とするようになったのでしょうか?

教育方針の変化

「曖昧さ」を苦手とする近年の新人社員が生きてきた時代では、従来行われてきた知識量偏重型の「詰め込み教育」から、学習時間と内容を減らした「ゆとり教育」に教育方針が転換されました。ゆとり教育では、熾烈な学力競争社会を緩和しようと「全員が一番」「みんな平等」という価値観のもと「順位をつけない評価」が実施されました。

しかしそのような評価の仕方は現実社会とは乖離しており、社会に出てから困難にぶつかって挫折してしまう人が増えたと考えられています。

失敗や苦手なことに向き合う経験は「曖昧さ」に取り組む良い機会です。しかし、ゆとり教育によってそうした経験が学生時代にできず、「曖昧さ」への対応力を培うことができなかった人が増えたと考えられます。

スマートフォンによる認知機能の低下

近年の新入社員は、学生の頃からスマートフォンが身近にあります。ソーシャルメディア研究会の調査によると、2019年と2020年のネット依存率を比べた結果、

・小学生は10.2%から13.7%に増加
・中学生は15.3%から18.9%に増加
・高校生は19.3%から28.5%に増加

していることがわかりました。

現代では多くの新入社員が学生の頃からスマートフォンを使用し、依存する割合も増えています。また、近年では医師や研究者の間で、スマートフォンの使いすぎによって「脳疲労」と呼ばれる認知機能の低下が問題視されているのです。

困難な状況や「曖昧さ」に対処するには、集中している状態でなければ問題を分析して解決することは難しいため、脳の高度な実行機能が求められます。しかしスマートフォンによって慢性的に「脳疲労」の状態に陥っている場合は、これが難しくなるでしょう。

(参考:スマホ依存率が増加中…現役高校生にスマホとのつき合い方を直撃インタビュー丨TIME&SPACE https://time-space.kddi.com/au-kddi/20210302/3071
(参考:“スマホ脳過労” 記憶力や意欲が低下!?丨NHK https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4249/

新人社員と育成側との間に悪循環が生まれる

また、わからないことがある際は上司や先輩に相談するべきとわかっていても、「こんなことで時間をとっていいのかわからない」「ダメな奴だと思われたくない」といった不安を抱き、新人社員が上司に相談できないケースも少なくありません。

こうした新人社員の態度は上司や先輩からすると、「受け身で成長意欲に欠ける」と捉えられるため、注意や叱責が増えてしまいます。

この結果、育成につながらない単純な指示や指導ばかりになり、適切な育成方法を実施できる信頼関係を構築できなくなってしまうのです。

こうして新人社員と育成側は、両者ともにストレスを感じる悪循環が生まれてしまいます。このような状態に陥らないためには「曖昧・困難な状況でも意思決定して問題解決に取り組める力」を育てる必要があるのです。

新人社員の育成方法を検討する際に意識するべきポイント

相手に対する決めつけや思い込みを捨てる

上記で「近年の新人社員の傾向」を解説しましたが、これはあくまでも「全体の傾向」に過ぎません。したがって、全てを鵜呑みにするのではなく、あくまで参考程度にしておき、この傾向をとっかかりとして相手を知ることが重要です。つまり、重要なことは相手に対する決めつけや思い込みを捨てて、相手をありのままに見ることです。

そのためにも日常的に新人社員とコミュニケーションをとり、仕事に関係ない趣味の話などを聞いて、新人社員がどのような価値観をもって生きているのか、どのような働き方を望んでいるのかを把握するように努めましょう。

新人社員のやり方を尊重する

人は誰しも「うまくやりたい」「成功したい」という思いを持っています。つまり、新人社員が仕事でミスをしたとしても、それは本人が望んでミスをしたわけではないということです。大切なことは、育成側はそのことを理解した上で、相手のやり方や考え方を否定しないことです。

また、新人社員がミスをしたときや相談を受けた際に、自分のやり方を押し付けるのではなく、あくまでも新人社員が「なぜそうしたのか?」を考えて、「どのようなやり方だとうまくいくのか?」を一緒に考えることが求められます。

まとめ

新人社員を育成する際は、近年の新人社員の傾向を把握した上で、一人ひとりに真剣に向き合うことが重要です。また、組織としてどのような人材に育てるか、育ってほしいかが曖昧なままだと適切な育成方法を実践することはできません。新人社員に対する理解を深めると同時に、自社は組織としてどのように在るべきかも考えていくことが求められます。

【この記事を書いた人】
小林カズシ コンテンツディレクター
金融出身のコンテンツクリエイター。 三井住友銀行退職後、フリーランスとして活動。 現在は、電子書籍の執筆からクリエイティブ作成、ディレクター業務、ライティングまで幅広く行っている。 所持資格は簿記2級など。

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いかがでしたか。社員の育成方法について近年の傾向がおわかりいただけたでしょうか。この傾向に基づいて、新人社員の育成を行っていくとよいのではないでしょうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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