1on1ミーティング、という言葉を聞いたことがあるだろうか? 組織を活性化させるために必要だという1on1ミーティング。マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp/)」から、1on1ミーティングについての知見を得よう。

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1on1ミーティングとは

1on1ミーティングとは、その名前の通り1対1で上司と部下が面談を行うミーティング方法をいいます。特徴は、上司が聞き手になることです。普段のコミュニケーションでは上司から部下への指示が多くなってしまう中で、双方向のコミュニケーションを実現させるための場として1on1ミーティングは生まれました。

対話型のコミュニケーションとなるので、業務に関する指示や提案といったものではなく、日常会話に近いフランクな内容から仕事についての相談までと幅広い会話ができます。

1on1ミーティングはシリコンバレーで始まったとされています。人材の争奪が激しいシリコンバレーでは、上司と部下とのコミュニケーションを見直す場として1on1ミーティングが行われるようになったのです。

優秀な人材確保を目的にGoogleやIntelなどの時価総額が大きい企業が始めた1on1ミーティングが、日本に広まるのにそう時間はかかりませんでした。

日本企業で最も早く1on1を導入したのは、ヤフー株式会社だといわれています。Yahooは2012年より「部下のための時間」として1on1を実施し始め、その後日本の多くの企業に広まっていきました。

今なぜ1on1ミーティングは重視されているのか

1on1ミーティングの重要性は高まっています。その理由は以下の4つにあります。

・働き方5.0の時代がきているから
・予測困難な社会経済状態だから
・若者が早くして退職する傾向があるから
・コロナによる在宅勤務で顔が見えなくなっているから

AIやロボットなど、今までになかったデジタルとの共生が求められる働き方5.0の時代では、今まで通りの発想をしていては企業も生き残ることができなくなります。

したがって、今後はより自由で発展的な発想をもつ人材の確保が必要です。

クリエイティブ人材を確保し、新しい発想を取り入れるために、比較的自由度の高い1on1ミーティングの場を設定する企業が増えているといえます。

予測困難な社会経済状態だから

「VUCA」という言葉を既に耳にした方もいるかもしれません。VUCAとは以下の頭文字をとった言葉です。

・Volatility
・Uncertainty
・Complexity
・Ambiguity

VUCAを一言で説明すれば「予測困難で不安定な社会状態に私たちはいる」ということです。

今までは、マニュアルなどで縛った一様の業務で会社のミッションを達成できたかもしれませんが、今後は組織の人材の違いを活かしたマネジメントが不可欠となります。

さまざまな価値観を共有する場として1on1を利用することで、会社の問題解決や、更なるイノベーションを生み出す可能性があります。

若者が早くして退職する傾向があるから

若者の早期離職率は3割と、依然として高い数値を保っています。

マイナビリサーチ&マーケティング部の記事では、早期離職には「企業要因」と「個人要因」が関わっていることを示しています。

年功序列や終身雇用といった制度が終わりを迎えるに伴って、右肩上がりで昇給していくといったビジョンを描けなくなった「企業要因」。

そして自身のやりがいや成長のために自分自身で興味・関心のある仕事をしたいと考える「個人要因」もあり、意識が高い社員ほど、さらなる成長を求めて会社を離れてしまう傾向があります。

ここで問題になるのが、「この会社でも成長できるという回答」を会社が示せていないケースです。

1on1ミーティングで、こうした意識の高い社員の課題に寄り添うことで、社員に自社での成長を促すことができます。そのため、若手の早期退職を回避するためにも1on1ミーティングは利用されているのです。

参考:なぜ若者は会社を辞めるのか?20年続く「早期離職3割」を分析 | マイナビ(https://www.mynavi.jp/trendnavi/turnover.html

コロナによる在宅勤務で顔が見えなくなっているから

コロナによる在宅勤務で上司と部下の顔合わせの機会が減っていることも、1on1ミーティングの重要性が高まっている理由です。

以前は出社すれば顔が見える状態で、なおかつ仕事をする様子も近くで見れていたのが、今ではリモート化によって見えなくなっています。したがって、面談の時間を取らなければ、そもそも顔合わせで会話すらもできなくなってしまったのです。そのため、上司が部下の様子を知るための機会として1on1ミーティングを導入する企業も増えています。

1on1ミーティングのメリットは3つ

1on1ミーティングを実施するメリットは以下の3つです。

社員のモチベーションアップにつながる

1on1ミーティングで社員の話を聞くことは、社員が自分の考えを言語化するという主体的な行動をとることであり、社員のモチベーションアップに繋がります。この際、ただ話を聞くだけではなく、相槌と合わせて適切なアドバイスができると、より一層効果は高まるといわれています。

社員がキャリアビジョンを抱くことができる

社員がキャリアビジョンを抱けるようになるのもメリットです。退職の理由として「仕事にやりがいを感じなくなってしまった」という趣旨のことがよく挙がりますが、やりがいは「目標」と「その目標をどれだけ達成できるか」に左右されます。

したがって、社員の話を聞き、キャリアビジョンを持たせることにより、会社で仕事をする意味を感じさせることができるようになります。

上司との関係性が良くなる

上司との関係性が良くなる可能性があるのもメリットです。元々上司と部下とのコミュニケーションが少ない現場では、両者の関係性が冷え込んでしまっているケースがあります。

1on1ミーティングを適度に実施することで、今まで関係性が築けていなかった部下との関係性が改善し、仕事がやりやすくなることもあります。

デメリット:「1on1は意味がない」といわれてしまうのはなぜか

1on1には今まで紹介したメリットがありますが、中には「1on1は意味がない」という意見もあります。その理由は、適切なやり方で実施できていないからです。

ここからは良くある失敗例を4つ挙げます。

本音で話せる関係性を築けていないから

まずは本音で話せる関係性を築けていないことが問題になることがあります。

例えば「こんなことを言ってしまったら会社での成績に響きそうだ」と社員に思われてしまうと、社員の本音を聞き出せません。

上記の場合、1on1ミーティングで関係性が悪化してしまう事態にもなりかねません。1回の1on1ミーティングですべてを解決しようとするのではなく、複数回の実施を通して、少しずつでも関係性を向上させることが重要です。

反論をしてしまうから

本来は聞き手であるはずの上司が反論をしてしまうのも問題です。1on1ミーティングは社員や部下の話を聞く場であり、反論をする場ではありません。大切なのは、部下の話を聞いて、部下がより成長できたり、キャリアビジョンを描いたりできるためのアドバイスです。

耳を傾けることができていないから

部下の意見に耳を傾けることができないのも良くある失敗例です。1on1ミーティングで適切なアドバイスをすることは大切ですが、1on1ミーティングは部下が主体の場だということを忘れてはいけません。むしろ上司がすべきなのは、うまく話せない部下が話しやすいような質問をして会話を引き出すことです。

ただの雑談になってしまっているから

1on1と雑談の違いは、会話にゴールがあるか否かです。もちろんアイスブレークとして雑談から入るのはコミュニケーションの方法の1つです。そのため、1on1ミーティング自体に雑談が入るのは問題ありませんが、毎回雑談のみで終わってしまうのであればそこには1on1ミーティングの意味はありません。

なぜ行うのか、その目的・ゴールをきちんと認識しておく必要があります。例えば以下のようなものが良いでしょう。

・部下のスキルアップ
・メンバーの悩み事の解消
・組織へのロイヤリティの上昇

なぜ1on1ミーティングをするのかのゴールを定めておかなければ、ただ互いに時間をとるだけで生産性の低い1on1ミーティングになってしまいます。

1on1ミーティングを実施するために必要な4つのポイント

1on1ミーティングを実施するためには以下4つのポイントが大切です。

1.1on1ミーティングの実施を周知する

まずは1on1ミーティングの実施を周知する必要があります。

周知の方法は以下3つです。

・イントラネット(社内ネットワーク)などを利用する
・上司から口頭で伝える
・朝礼などで開催を伝える

ただ周知するだけではなく、なぜ1on1ミーティングを実施するのかを明確にすることも大切です。

2.1on1ミーティングの実施回数を決める

1on1ミーティングをどのくらいのスパンで実施するのかは先に決めておきましょう。この際の明確な指標はありません。実施回数が月に1回の企業もあれば、週に1回の企業もあります。大切なのは回数よりも、1on1ミーティングで設定したゴールに辿り着けているかどうかです。

良くある失敗例の1つに、回数のみに固執してしまい、中身が伴っていないケースがあります。こうしたケースを避けるためには、実施回数は設定しておくものの、状況によっては回数を調整するなど柔軟な対応が大切です。

3.1on1ミーティングの実施内容を記録しておく

1on1ミーティングの実施が終わった後には、記録を残しておくことも大切です。ミーティングを通じて、部下のこれまで見えていなかった良い面が見えたり、キャリアビジョンが明確になったりすることがあります。このような情報は会社と共有することで、その部下にあったキャリアプランの作成にも役立ちます。1on1ミーティングをただの雑談にしないためにも、エクセルや社内管理システムで記録を残しておく必要があります。

4.継続的に1on1ミーティングを実施する

1度や2度で終わらせることはなく、必ず継続的に実施するようにしましょう。継続的に実施する理由は、フェーズや時期によって部下の悩みや課題が変わっていくからです。変わる悩みや問題を解決してこそ、実施する意味があるため、必ず継続的に実施するようにしましょう。

1on1ミーティングで話すべき具体的なアジェンダ

1on1ミーティングで何をアジェンダにすれば良いのか悩んだ際は、基本的には以下の内容に沿って実施すると良いでしょう。

緊急性が低いが大切なことを話す

緊急性が低いため、日々の業務ではなかなか話す機会がないが、大切なことを話す場として1on1ミーティングは向いています。

例えば以下のような事例です。

・業務改善ができそうだと思っているポイント
・将来やってみたい仕事
・失敗経験を今どう活かしているのか

部下の目指す姿に指針を示してあげる

部下の目指す姿に指針を示すことができるのも、1on1ミーティングの有意義な点といえます。

・挑戦したい仕事はどうすればできるのか
・目指したい部署にはどうすれば異動できるか
・今後のキャリアプラン

上記の問題にアドバイスや指針を示せるのは上司だからこそできることです。

その場で答えられるか不安な場合には、先に部下に質問をしておいて、1on1ミーティングの場で回答をするのも方法の1つです。

部下の悩みの壁打ち相手になる

・なかなか営業で仕事が取れない
・効率よく仕事ができない
・目指しているスキルが獲得できない

上記の悩みに、上司の実体験を持ってアドバイスができるのも1on1ミーティングのポイントです。

まとめ

本記事では、1on1ミーティングについてわかりやすく解説しました。在宅勤務がすすむ中で、コミュニケーションを円滑にする必要性はさらに高まっており、1on1ミーティングは非常に有効な手段となります。従業員のスキルアップと離職率を下げるという狙いでも、今後一層重要視されていくでしょう。

【この記事を書いた人】
小林カズシ:ライター・編集者 金融出身のコンテンツクリエイター。 三井住友銀行退職後、フリーランスとして活動。 現在は、電子書籍の執筆からクリエイティブ作成、ディレクター業務、ライティングまで幅広く行っている。 所持資格は簿記2級など。

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いかがでしたか? 1on1ミーティングについての手法と必要性がおわかりいただけたでしょうか。
引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/

 

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