■御朱印の次は「御城印」がブーム
お寺・神社で授与される御朱印を集めるのがブームになって久しいが、令和の世に入って新たなブームとなりそうなのが「御城印」集めだ。
御城印とは、日本国内の城を訪問(登城)した記念に1枚200~300円で授与される、御朱印の城バージョン。見た目も寺社の御朱印とよく似ている。
御城印の配布を始めたのは松本城とされ、30年前にさかのぼる。しかし、配布する城が増え始めたのは、最近の話。令和への改元前後に急増し、いまや200近い城・城跡が独自の御城印を配布するまでになっている。
城によっては、配布枚数の限られた「限定御城印」を発行することもあり、人気のあるものだとすぐに売り切れてしまうという。
筆者も、小田原城が「北条早雲公顕彰五百年」記念の限定御城印を出すと知って、物見遊山気分で訪れたところ、開城前の早朝から老若男女が長蛇の列を作っており、入手するのに小一時間待ったことがある。このとき、地域によっては「ブームとなりそう」でなく「既に大ブームになっている」という印象を受けた。
さて、今回紹介するムック『はじめての御城印ガイド』(学研プラス)は、ブーム到来を見据えた日本初の御城印のガイドブック。全国100城の御城印を取り上げ、城や(御城印の構成要素である)家紋・花押を解説した、ビギナーにやさしい1冊となっている。
ここで御城印とはどのようなものか、本書に収載のものから幾つかを紹介しよう。
■御城印発祥の松本城
国宝天守5城の1つ松本城(長野県松本市)が、御城印を初めて配布した発祥の城とされている。当時は御城印という一般的な呼び名はなく、「天守登閣記念朱印符」というどこか物々しい言い方であった。大半の御城印と同様に朱印があるが、
■徳川譜代重臣の井伊氏の彦根城
こちらも国宝天守5城に列せられる彦根城(滋賀県彦根市)だが、御城印としては珍しく赤い紙を用いている。これは、「井伊の赤備え」と言われるように、井伊氏の精鋭軍団の将兵が赤い武具を身に付けたことから。金色の旗印の「井桁」と当主の通字「直」がほどよく目立つこの御城印は、令和元年にデザインを一新して生まれたもの。
■尼子氏隆盛の往時を偲ぶ月山富田城
月山富田城(島根県安来市)は、戦国大名尼子氏の時代に栄華を極め、関ヶ原の戦いの後に廃城となった。現在は、当時の石垣や石畳などを遺すのみだが、こうした城跡でも御城印はしっかりとあり、安来市立歴史資料館や道の駅広瀬・富田城の広瀬餅センターで配布されている。尼子氏再興に奮闘した義将の山中鹿介が、シルエットになっているのに注目。
■城内寺社が御城印を配布する八幡山城
八幡山城(滋賀県近江八幡市)は、豊臣秀次が築いた城であったが、秀次は豊臣家の後継者争いに巻き込まれて切腹し、居城は廃城となった。今は城の遺構として石垣が残存し、秀次の菩提寺である瑞龍寺がある。その瑞龍寺で八幡山城の御城印を受け取ることができる(お寺が授与するので正確には御朱印だが)。秀次の馬印「沢瀉(おもだか)」紋に「八幡山城」「豊臣秀次」と書かれ、「続日本100名城」のスタンプも押されて本格的。
昨今は御城印ブームの影響で、旅行会社が主催する御城印ツアーも人気だ。城巡りに興味がある方は、本書を手引きに行ってみたかった城を訪れてはいかがだろうか。
【今日の行楽におすすめの1冊】
『はじめての御城印ガイド』
https://hon.gakken.jp/book/1861150600
(学研プラス著、本体2,000円+税、学研プラス刊)
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。