文・写真/キュンメル斉藤めぐみ(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)
世界的に著名な政治家や実業家、サッカー選手たちが多く住む、ドイツバイエルン州・ミュンヘン。セレブの街には高級レストランも多く集まるもので、2019年度におけるドイツ国内のミシュラン星獲得レストランのうち、30ものそれが立ち並ぶグルメの街としても知られている。その中でも特に1983年以来星を守り続けるカリスマ的存在が、アルフォンス・シューベック氏(70)だ。彼の手掛けるこだわりスパイスショップ「シューベック」を訪れてみた。
このスパイスショップの隣には、シューベック氏の手掛けたティーショップもある。ドイツには従来カフェ文化が深く根付いており、紅茶を飲むのは風邪をひいた時だけと皮肉る人もいる。しかし世界中の紅茶消費量に伴い、ドイツ国内でも毎年消費量は上がりつつある。様々な自作ブランドやビオ紅茶が販売される人気ぶりだ。
現在のドイツにおける料理界は男社会であり、競争・浮き沈みの難しいこの業界において、生き残るには困難を極める。若い料理人は強いエンターテイメント性を求めるテレビにおいて活躍し、その流れでレストランでの客足が増え、さらに料理本を出すという相乗効果を狙っている。一方でシューベック氏のような実直な料理人は、メディア出演を極力控え、その確かな腕を次世代に継承すべく、ずっと昔から教室を開いてきた。その彼の料理教室は功績がたたえられて2008年に数々の賞を受賞。今でも「予約の取れない料理教室」として知られている。
氏はレストラン・食事を観ながら楽しめる劇場(シアター)とカフェ3店舗を経営するだけでなく、毎年10月に開催されるオクトバーフェストにはテナントを出店し料理提供をしている。「シューベック」としてのブランド事業は拡大の一途をたどるが、しかしながら歳を重ねるごとに郷土愛を更に再認識、ルーツを忘れないことの意義を今なお提唱し続けている。深く根付いた大きな地元愛こそが、彼がこの業界において、今なお第一線で活躍していることの秘訣なのであろう。
シューベック氏オフィシャルサイト:https://www.schuhbeck.de/
文・写真/キュンメル斉藤めぐみ(ドイツ在住ライター)
ドイツ在住。海外書き人クラブ所属。外資系企業勤務を経て、2015年より近郊コミュニティーカレッジにてヨガや栄養学のクラス、料理教室を主宰。現在フリーランスライターとして、文化・生活情報を提供、寄稿。掲載メディア媒体は、『マイロハス』、『家の光』(JAグループ)、不動産流通研究所等。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。