取材・文/前川亜紀
今、レトロなガラスアイテムが人気を集めている。主に戦前に流通した駄菓子のニッキ水の瓶、砂糖菓子の容器『ペロペロ』、ユニークな形の金平糖瓶、家庭で使われていた『あめや瓶』など様々なガラス容器が注目されています。
「ここ数年で再評価され、中には数万円というものも出てきました」と言うのは、駄菓子容器をはじめとする、レトログッズのコレクションで知られる入山喜良さん。
入山さんは、1973年(昭和48年)ごろからレトロなアンティーク小物の収集を開始。明治から昭和初期にかけてのガラス瓶、ブリキのおもちゃ、時計、ランプ、ガラス瓶、駄菓子屋物など一万点以上も所有しています。
入山さんは、1994年(平成6年)から、自身が運営する歯科クリニックの待合室に『懐かし博物館』という私設博物館を作り、公開していました。展示品は、ホーロー看板、柱時計、薬瓶、のらくろやベティちゃんなどのキャラクターグッズなど多岐にわたります。
「ここにあるものは、本来ならば、捨てられてしまっていたはずなのに、“なぜか残っている”ものばかりです。いずれもユーモラスで遊び心がありますね。現在は再評価されていますが、いい状態で現存しているのは稀少。それゆえに価値が高まっているものも少なくありません」(入山さん・以下「」内同)
「よく調べると、駄菓子や子供のおもちゃには、さまざまなモチーフが使われているのです。それが当時の流行や文化を知る手掛かりになったりして、とても興味深いのです」
●大ブームのニッキ水瓶をはじめとする和ガラスの世界
入山さんのコレクションの中でも、ひときわ輝きを放つのは、金平糖のガラス瓶、ニッキ水瓶、みかん水瓶など。いずれも、昭和20年代あたりまでに、駄菓子屋で売られていた子供向けのお菓子のガラス容器です。
いずれも金型にガラス質を溶かし固めた「型ガラス」という製法で作られています。ガラスの中には気泡が入り、ゆがんだり、ずれたりしているのもあり、それがまた味わいになっています。
「多くが戦前に作られたもので、いびつでユーモラスで、遊び心がある。見た目にも独特の愛らしさがあります」
これは『ペロペロ』と呼ばれる、駄菓子容器。中央に半固形の水あめが入っており、それをなめて食べたことからペロペロと呼ばれるようになった。中には1万円以上で取引されるものもある。
「このペロペロは、取っ手の形が左右違いますが、これで完成品なのです。おそらく、製造途中でガラスが足りなくなって、そのまま作って出荷してしまったのでしょう。そのおおらかさもまたいいですね」
入山さんのところには、多くのコレクターや有名博物館のスタッフも訪れる。取材時は都内から駄菓子瓶好きの中学生が見学に来ていた。
「駄菓子屋を知らない、10代~40代の人たちに駄菓子グッズや、和ガラス愛好家が増えています。骨董市などでは、世代を超え交流も生まれています」
その2では入山さんのコレクションを紹介。キューピー型の瓶ほか、マニア垂涎のアイテムを公開します。
撮影/フカヤマノリユキ 取材・文/前川亜紀