取材・文・写真/編集部
三重県・志摩半島の突端、風光明媚な英虞湾を見晴かす景勝の地に、異国情緒あふれる白い町並みがこつ然と姿を現す。地中海に面する南ヨーロッパ(南欧)の街なみを完璧に再現した美しきリゾートホテル『志摩地中海村』だ。
こちらのメインレストラン「RIAS」(リアス)が、世界の食通が注目するバスク料理の聖地サン・セバスチャンの新進気鋭のシェフに委嘱してメニューを一新、「RIAS by kokotxa」(リアス・バイ・ココチャ)としてリスタートした。
海に向かって下っていくゆるやかな石畳の道の先にある赤い建物がレストラン「RIAS」。おとぎ話に登場しそうな、なんともファンタジックなロケーションである。
メニュー開発を担当したのは、サン・セバスチャンでミシュラン一つ星を獲得したレストラン「Kokotxa(ココチャ)」で腕を振るうオーナーシェフ、ダニエル・ロペス氏。伝統的なバスク料理をベースに、独創的で前衛的なテクニックと素材や製法への新たな追求を融合させた「新バスク料理」の旗手として注目を集める若き天才シェフである。
レストラン「Kokotxa(ココチャ)」のシェフ、ダニエル・ロペス氏。志摩地中海村を訪れた際に「もしサン・セバスチャン以外でレストランを出すとすれば、世界中でもここしかない」と確信したという。
メディア関係者を招いての試食会で供されたのは、伝統的なバスク料理の手法をベースに、シェフの斬新なイマジネーションを交えた独創的な料理たち。志摩産の新鮮な魚介類や日本ならではの食材も多用され、新しいのにどこか懐かしい、精妙なる美味が並んだ。
まずは蛸のグリルのロメスコソース添えから。サルサ・ロメスコはスペイン・カタルーニャ地方発祥のパプリカを使った伝統的なソース。奥に見える小鉢は牡蠣のエスカベッシュ。
「ダニエルの一皿」と題された料理は、大アサリのタルタルに、めんつゆ風味のふわふわホイップを載せたものだった。その味わいは和食といっても過言ではない。
ビンチョウマグロのグリル、茄子の炭焼きソースとトマトのジュレピクルス添え。焼き茄子の「おこげ」の香ばしい風味が口内を満たす。日本人にとって不思議な懐かしさを感じさせる一品だ。
バスク料理に合わせるのは、やはりバスク名産の微発泡の白ワイン「チャコリ」。ドライで軽く爽やかな風味で、肉料理にも魚料理にもなんでも合う。バスクの人々が愛してやまない万能の食中酒だ。
「俺流、タラのトルティージャ」と題された一品。タラ(バカラオ)はバスク地方でよく使われる食材。トルティージャは卵焼きのことだが、どう見ても卵焼きには見えない。
スプーンを入れると、とろとろにほどける。口に運べば、干し鱈の旨みが口いっぱいにひろがる。さらにこのなかにはあるものが隠されている。それを掘り当てたとき「なるほど卵焼きだ!」と気づかされるという趣向。
伊勢エビのソカラ黒ニンニクのソース。ソカラとは「おこげ」のこと。伊勢エビの下に敷かれているのがそれ。併せて口に入れれば、海老とお焦げの香ばしさがハーモナイズする。喩えるなら、まさに最高級の絶品エビ煎餅、である。
スペインを代表するグルメジャーナリストのホセマ・アスペイシア氏も昼食会に参加。日本の食材や手法も駆使された斬新な料理の数々に、驚きを隠せない様子。
メイン料理は、黒毛和牛のサーロインステーキ。きのこと野菜、アーモンドのモホソース添え。スペイン領カナリア諸島由来のモホソースを、日本の食材と調和させてアレンジした。
来日したレストラン「Kokotxa(ココチャ)」のスタッフと、日本側の「RIAS」のスタッフたち。国籍や言葉の違いを超えた良好なチームワークが発揮され、新たな料理の数々が創造された。スタッフ左端でロペス氏を紹介しているのは「RIAS」料理長の太田裕氏。
伊勢志摩ならではの食材に、バスク料理のエッセンスを取り入れてメニューを一新した志摩地中海村のレストラン「RIAS by kokotxa」。最先端のバスク料理の技と創意を味わえる新たなステージだ。
ランチ、ディナーともに宿泊者以外も利用できるが、できれば美しい海に面した夢のようなこの白い村に数日滞在して、美味と美景をゆったりと満喫したい。
ヴィレッジ&ホテル「志摩地中海村」
三重県志摩市浜島町迫子2619番地1
電話 0599-52-1336(予約専用)
近鉄鵜方駅からタクシーで15分 ※宿泊者は送迎あり
http://puebloamigo.jp
レストラン「RIAS by kokotxa」
昼食 11:30~14:00(L.O.13:00)
夕食 17:30~22:00(L.O.20:00)
※夕食は要予約。メニューは日ごとに異なります。
取材・文・写真/編集部