庖丁を手前に引いて切るのが基本。
筋目を断ち切ると食感がよくなる
日本料理の世界で刺身を美味しく切る庖丁の技を修めることは、焼き物や煮物を作る以上に難しく奥深いものとされている。
江戸前鮨の正統を今に受け継ぐ東京・浅草『弁天山美家古寿司』5代目、内田正さん(75歳)の刺身の切り方の流儀はこうだ。
「例えば鮪まぐろのサクには白い筋目がたくさん入っています。その筋目に逆らって切れというのが、先代に叩き込まれたことです」
内田さんのいう筋目とは魚の筋肉を包み込む膜のことで、筋繊維の流れを見る目安になる。この流れに交差するように庖丁を入れると筋繊維を断ち切ることができ、口当たりがよくなるという。
「刺身は〝赤身は厚く、白身は薄めに切る〟のが基本です。肉質の柔らかい鮪の赤身は厚めに切り、身質が固い白身の鮃(ひらめ)や鯛(たい)は薄めに切るほうが美味しい道理です」
【鮪の平造り】
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