新緑が日に日に美しくなる頃、山深い木曽路にも多くの観光客が訪れるようになります。江戸と京都を結ぶ中山道。なかでも江戸から42番目の宿場町・妻籠は中山道と伊那街道が交差することから交通の要衝として栄えました。昭和51年(1976)に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され、風情ある宿場景観が残されています。街道の両側には建築当初の面影を残す旅籠や本陣、番所跡などが並びます。民芸店や土産物屋を覗き、団子や五平餅を味わいながら、ゆっくりと散策したいものです。
妻籠にも宿泊施設はありますが、やはり温泉で手足を伸ばしたいという方には、妻籠宿から車で10分ほど、高台にある「ホテル富貴の森」がおすすめです。木曽の森に囲まれた温泉にはトロリとしたアルカリ性の硫黄泉が満ち、露天風呂に身を預ければ、夜は満天の星が見つめるばかり。夏でも涼気を感じるほど辺りは静謐な趣き。木曽路の思い出が増えることでしょう。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。