有史以前、神と自然は同義だった。そこからの恵みによって、人は生かされたが、ひとたび荒らぶれば、その猛威から逃れる術はほとんどなかった。そこで、人は、自然である神に祈りを捧げ、祀り、鎮めてきたのだ。
常陸国風土記に、夜刀神(やとのかみ)という神が登場する。継体天皇の代に、箭括氏(やはずのうじ)麻多智(またち)という人物が、葦原を開墾する際に現れて妨害をした神である。蛇体に角を持ち、群れとなってこの地にすむ。この神を打ち払い、境界に社を建てて、祀り、人と神の世界を隔てたという。ここに、神社の成り立ちの基本の姿がある。
現在、神に祈るとき、御利益ばかりに目が行きがちだが、人は、古来、今を生きるために、神に祈りを捧げてきたのだ。文明が発展し、ともすれば人間上位と錯覚しがちな現代。しかし、いま、祈りの原点を見つめ直す時期にきているのではないか。
サライ1月号、神社特集は、図解で神社の構造をわかりやすくひもといていく構成になっている。一見わかりやすい図鑑のようなつくりになるよう心がけたが、根底には、上記のようなテーマを潜めたいと考えながら作成した。是非ご一読ください(写真/宮地工)。