
ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』第19回です。織田信長(演・小栗旬)が嫡男信忠(演・小関裕太)に織田家の家督を譲りました。信忠の母は信長正室の濃姫ではなく、側室の生駒氏といわれます。
編集者A(以下A):生駒氏が大河ドラマで主要キャストとして登場したのが1996年の『秀吉』になります。吉乃という名で斉藤慶子さんが演じました。まだ奇妙丸(子役/演・飯塚恭平)と呼ばれていた後の信忠(演・西川忠志)を藤吉郎秀吉(演・竹中直人)があやしたり遊んだりする場面が幾度も描かれました。
I:家督継承を告げた場には、織田信孝(演・結木滉星)と織田信澄(演・緒形敦)の姿がありました。信孝は信長三男で、信澄はかつて信長に謀反を起こした実弟信勝(演・中沢元紀)の息子になります。
A:信長次男の信雄の姿がありませんでした。いったいどういうことでしょう。気になりますね。
琵琶湖のゴールデントライアングル
I:安土城が築城されることになりました。すでに明智光秀(演・要潤)の坂本城(現在の滋賀県大津市)、羽柴秀吉(演・池松壮亮)の長浜城(現在の滋賀県長浜市)が築城されていましたが、いずれも琵琶湖に面した城になります。
A:『秀吉』では、安土、坂本、長浜の三城を描きました。琵琶湖の水上交通で結ばれていたということでしょう。この現代の安土城は、琵琶湖に面していませんが、これは戦後に埋め立てがあったためですからね。
I:『信長全史』(小学館)の「安土城七つの謎」の受け売りですが、例えば「安土城はなぜ七重なのか」の箇所を引用します。「安土城天主は足利義満の金閣と類似している。金閣の構造から一層は貴族、二層は武士、三層は義満を示していた。金閣では三層に過ぎなかった楼閣建築を〈吹き抜けの大空間〉を加えて一挙に七重に高層化したのが安土城天主である」と書かれています。安土城の場合、「天守」ではなく「天主」だということにご留意ください。
A:『豊臣兄弟!』ではナレーションで、「地上6階建て」と伝えていました。「地上」とあえていってくれているところが心憎いですね。『信長公記』によると、地下も含めて7階建てです。安土城、坂本城、長浜城を往時のままに復元してもらって、琵琶湖からクルーズ船かなんかで眺めるということをやってみたいですね。
I:ああ確かに。今週は後に「築城の名手」と称される藤堂高虎(演・佳久創)が築城に関与する様子も描かれました。こういう場面を見ていて感じるのですが、信長の安土城ほど歴史ロマンを感じる城はないのではないでしょうか。
A:当時、織田信長は当代一の絵師狩野永徳(諸説あり)に命じて『安土山図屏風』を描かせました。天正8年(1580)のことです。おそらく実際に安土城の威容を間近に見たうえで描いた作品だと思われます。この屏風は、天正10年(1582)、九州のキリシタン大名大友宗麟らによる「天正遣欧少年使節」に託されて、ローマ教皇グレゴリオス13世に贈られたといいます。
I:天正の少年使節というと、伊東マンショ、千々石ミゲル、原マルチノ、中浦ジュリアンのことですね。日本を旅立ったのが本能寺の変の前のことですが、帰国したのは天正18年(1590)。天下人になっていた秀吉の前で西洋音楽を奏でたといいます。
A:信長からローマ教皇に贈られた屏風ですが、現在は所在不明だそうです。滋賀県などがバチカンとともに調査をしているというニュースが時折報道されますね。もし見つかったら特大スクープです。ちなみに現在国宝になっている『上杉本洛中洛外図屏風』(山形県米沢市の上杉博物館蔵)も狩野永徳の作。こちらは、もともと13代将軍足利義輝が発注したものだと伝えられます。
I:義輝が暗殺された後に、縁あって信長の知るところとなり、天正2年(1574)に信長から上杉謙信に贈られたということですね。このときは、ビロードマント(赤地牡丹唐草文天鵞絨洋套)も信長から謙信に贈られています。劇中の上杉謙信との戦いは天正5年(1577)のことです。わずか3年前には贈り物を贈る仲だったにもかかわらず、合戦に及ぶとは、戦国時代は一寸先は闇ですね。
A:いずれにしても、今年は安土築城開始から450年の節目の年なのだそうです。なんだか久しぶりに登城したくなりましたね。
慶さんの笑顔が見たい
I:さて、小一郎(演・仲野太賀)の正妻慶(演・吉岡里帆)のエピソードが尺をとって展開されました。
A:慶には実は与一郎(演・高木波留)という子どもがいたという設定でした。小一郎の息子に関しては、大河ドラマでは1981年の『おんな太閤記』、1996年の『秀吉』にも登場していませんが、2026年『豊臣兄弟!』放送にあわせて刊行された書籍の中では与一郎の存在について、諸説が言及されるようになっています。追々そうした諸説についても触れていきたいと思いますが、まずは劇中の慶さんを包んでいた「霧」が晴れつつあることを喜びたいと思います。
I:私は早く慶さんにも、羽柴ファミリーの女性陣の中に溶け込んでほしいなと思ったりしています。あの明るいファミリーの輪の中に笑顔の慶さんの姿を見たいです。
A:そんな回が来てくれるといいですね。
●編集者A:書籍編集者。かつて『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











