価値観が多様になった今、うっかり人生経験を語ると「説教っぽい」と受け取られてしまうこともあります。けれど、相手を思うからこそ、言葉を添えたい場面はあるもの。とはいえ、長い説明がいつも届くとは限りません。忙しい時代、相手の心に残るのは、案外「短い一言」だったりします。

そんなときに頼りになるのが、先人の言葉です。自分の気持ちを代弁してくれて、しかも角が立ちにくい。言葉の選び方ひとつで、伝わり方は変わります。今日の言葉が、あなたの「伝え方」の味方になりますように。

今回の座右の銘にしたい言葉は「真剣勝負」(しんけんしょうぶ) です。

「真剣勝負」の意味

「真剣勝負」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「本物の剣を用いて勝負すること。本気で勝ち負けを争うこと。また、本気で事に当たること」とあります。文字通り、真剣(本物の刀)を用いた勝負を指す言葉です。転じて、手加減なし、全力で物事に取り組む姿勢・状況 を表します。

現代では、スポーツや仕事の場面でよく使われます。

「今日の試合は真剣勝負だ」
「仕事はいつも真剣勝負で臨んでいる」

こうした使い方が一般的ですが、座右の銘として捉えると、もう少し深い意味が浮かび上がってきます。それは、「目の前のことから逃げない」 という覚悟であり、「今この瞬間を全力で生きる」 という人生哲学です。

若いころは勢いで乗り越えられたことも、年齢を重ねると体力や気力の限界を感じることがあります。それでも、「真剣勝負」という言葉を胸に置くことで、「まだやれる。今日も本気でいく」 という気持ちが生まれてくる。そんな力を持った言葉です。

「真剣勝負」の由来

かつて武士たちは、日々の鍛錬において木刀や竹刀を用いて腕を磨いていました。しかし、いざという時の決闘や果し合いにおいては、本物の刀、すなわち「真剣」を用いて戦います。木刀での稽古であれば、もし相手の打撃を受けたとしても、骨折や打撲で済むかもしれません。

しかし、本物の刃を持った「真剣」での戦いは、一瞬の油断や一つのミスが、そのまま自らの「死」に直結します。つまり、「真剣勝負」とは元来、「命がけで戦うこと」を意味していました。

現代を生きる私たちは、刀を振り回して命のやり取りをすることはありません。しかし、「真剣に話し合う」「真剣に仕事に取り組む」といった表現に見られるように、言葉の核心は今も生きています。つまり、自分をごまかさず、その場に全力を尽くすという姿勢です。

「真剣勝負」を座右の銘としてスピーチするなら

「真剣勝負」という言葉は非常に力強いため、話し方によっては「肩に力が入りすぎている」「説教くさい」と受け取られてしまう危険性があります。そこで、「人に勝つ」という話ではなく、自分自身の姿勢を律する言葉として語ると、聞き手に自然に受け止められるでしょう。

以下に「真剣勝負」を取り入れたスピーチの例をあげます。

地域の集まりで披露する際のスピーチ例

私の座右の銘は「真剣勝負」です。

こう申し上げますと、まるで私が毎日眉間にシワを寄せて、誰かと戦っているように聞こえるかもしれませんね。ですが、決してそうではありません。

ご存じの方も多いと思いますが、「真剣勝負」とは元々、武士が木刀ではなく、本物の刀を使って命がけで戦うことに由来しています。一瞬の油断が命取りになる、そのヒリヒリとした緊張感を表す言葉です。

もちろん、今の私が本物の刀を振り回すことはありません。しかし、残りの人生の時間を考えたとき、日々の一瞬一瞬が、実は「二度と戻らない命のやり取り」なのだと気づいたのです。例えば、家族と食卓を囲む時間。庭の手入れをする時間。あるいは、今日のように皆様と笑顔でお話しできるこのひととき。これらはすべて、当たり前のようでいて、決して永遠ではありません。

だからこそ、私は目の前の出来事に対して、手を抜かず、誤魔化さず、本気で向き合いたいのです。勝ち負けではなく、自分自身の人生を本気で味わい尽くすための「真剣勝負」。

これからの日々も、皆様とのご縁を大切にしながら、朗らかに、そして真剣に、人生を楽しんで参りたいと思っております。

最後に

「真剣勝負」という言葉は、若さゆえの闘争心だけでなく、人生の機微を知る世代だからこそ、その本当の深みや味わいを表現できる言葉です。誰かと競うためではなく、ご自身の人生を豊かにするための「真剣勝負」。

電車の中での少しの時間や、ふと立ち止まった瞬間に、ご自身のこれまでの歩みと、これからの時間を思い浮かべてみてください。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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