麹を使ったバゲットや薪窯で焼く食パンなど、今食べたいパンは、豊かな旨みが広がる、力強い味わい。名店の逸品を紹介します。

フルーツより濃厚な果実味と新感覚の口当たりに驚く
『しかたらむかな』の赤いフルーツパン“いちご”
みずみずしい。オーブンで焼き上げるパンには適さない言葉だが、中村隆志さんのパンは、今までの概念をすべて覆すほどの新しさにあふれている。
店のフラッグシップであるフルーツパン“いちご”は、まず印象的な鮮やかな赤色に釘付けになる。切り口のしっとり感、口に含むととろけるような滑らかさ、濃厚なフルーツの味と香り、という具合に食べ進むごとに驚きは続く。
いちごの色を忠実に、パンに表現しました

アイデアの素は「ピンク色のパンがあったらいいのに」という遊び心からという。ベースは、レーズンやヨーグルトなどでつくる自家製酵母を使用し、水分を約130%含んだ高加水の生地。いちごの濃縮果汁とフルーツ類をふんだんに加え、ゆっくり発酵させる。すると、酵素によってグルテンが柔らかくなった生地は、焼いた後もみずみずしさが持続し、新感覚の口溶けが実現するのだ。
つねに話題のパンを生み出す中村さんの、パンづくりの第一歩は高校生のとき。漫画を読んで焼いたパンが家族に喜ばれたのが素直にうれしくて、この道に進んだという。“人を喜ばせたい”という思いは変わらず、これからも新しいパンが誕生するに違いない。

●しかたらむかな
住所:東京都新宿区若宮町13-1 kif annex101
電話:なし
営業時間:10時30分〜13時(予約)、13時〜15時(予約不要)
定休日:火曜、水曜
交通アクセス:東京メトロほか飯田橋駅より徒歩約5分
取材・文/石出和香子 撮影/佐々木美果
※この記事は『サライ』本誌2026年3月号より転載しました。












