
長年、健康をテーマにした食品や香りの研究をしている、近畿大学教授の財満信宏さんは、香りをかぐだけという健康法を推奨しています。では、具体的にはどのように実践すればよいのでしょうか。
今回は、財満信宏著『香りをかぐという最強の健康法』(アスコム)から、「『身体に効く』に特化した香りの楽しみ方」と「香り×深呼吸のヒーリングブレスを習慣に良い睡眠を導く香り」を取り上げます。
今日から良い香りを身体に取り入れて、心と身体を整えてみませんか。
ポイント1:「今、何を嗅いでいるか」を意識しよう
食べたり運動したりするように、日々の習慣として香りを嗜む。それは癒やしとして、ときに心地よい刺激として、あるいは天然のサプリメントとして、私たちの心身に寄り添ってくれます。
身体への効果はもちろん、五感にダイレクトに語りかけてくれるのが、香りの魅力です。
「セルフケア」というと少しだけハードルが高く感じる方も、ワクワクしたり、楽しい気持ちにさせたりしてくれる「香り」なら、無理なく続けられるのではないでしょうか。
「でも、具体的にはどう取り入れればいいの?」という声にお応えして、香りの活用方法についてご紹介します。
とはいえ、ここでわざわざご紹介しなくても、すでに生活に取り入れている方も多いでしょう。また、わざわざ「方法」としなくても、「香りって自由に楽しむものでしょ?」と感じる方もいるかもしれません。
それはもちろん、その通りです。香りは感覚に訴えかけるものなので、あなたの気持ちの赴くままに楽しむのがベストでしょう。
ここでは、プラスアルファで、より「身体に効く」ことに特化した香りの楽しみ方をお伝えできればと思っています。
ポイントは2つあります。
まず1つ目のポイントは、「今、何を嗅いでいるか」を意識すること。
ただ漫然とにおいを感じるのではなく、「ラベンダーっていい香りだな」「イランイランってどんな植物なんだろう?」などと、その香りに意識を向けることを習慣づけてみてください。
この本の初めの方で、「意識によって、嗅覚の感度は変動する」と言ったことを覚えていますか?
誰かが「臭くない?」と言ったら、急に臭い気がしてくる。「嗅ぎたい」という意識が生じると、嗅覚の感度が上がる、といった話でした。
そして、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病などの疾患と嗅覚には深い関係性があり、香りを意識して嗅ぐ習慣をつけることの大切さをお伝えしました。
繰り返しになりますが、生活に香りを取り入れる際にも、ぜひ「何の香りか」ということを意識するクセをつけてみてください。
ポイント2:深呼吸をするように香りを身体に入れよう
2つ目のポイントは、ゆっくり、深呼吸をするように香りを身体に入れること。本書では、これを「ヒーリングブレス」と呼ぶことにします。
「深呼吸が身体に良い」というのは、皆さん何となくご存じのことと思います。ヨガや瞑想などでも、深い呼吸法は基本ですよね。
でも、深呼吸がどのような効果をもたらすのか、具体的に言えますか?
深呼吸が私たちの身体に及ぼす影響を調べた研究は多いのですが、詳細を伝えるととても長くなりますので、ここでは報告されている一例だけを挙げてみます。
・自律神経のバランスを整え、心血管機能が改善する
・ストレスやネガティブな感情が軽減される
・不眠が改善し、睡眠の質が向上する
・集中力や記憶力が改善する
・免疫力が高まる
単なる呼吸とは思えないほどの効果がありますよね。
まず、最初の「自律神経のバランスを整える」は、わざわざ言わなくても体感していただけているでしょう。深呼吸をすると、副交感神経が優位になり、心拍数が落ち着いてリラックスしやすくなります。これにより、ネガティブな感情が軽減され、睡眠の質が向上します。
副交感神経が優位になれば、血管が拡張して血流が良くなり、身体が温まる効果も期待でき、これは同時に、血圧が下がることも意味します。
ストレスを軽減し、血流が良くなれば、免疫細胞の働きも活性化されます。風邪やウイルスに負けない身体づくりにも貢献することでしょう。
また、脳はほかのどの臓器よりも多くの酸素とエネルギーを消費します。深呼吸によって酸素が豊富に脳に届けられることで、思考力や集中力、情報を処理・記憶する能力が高まる可能性があります。
呼吸するだけでこれだけのメリットがあるのなら、やらない手はありません。
とはいえ、実際のところ、「息をするだけでそんなに効果があるもの?」と半信半疑の方もいるでしょう。
ここに挙げた効果は決してウソではありませんが、そこに副次的な要素も大いに含まれています。
つまり、深呼吸をする環境をつくり出す心の余裕、あるいは時間の余裕こそが、健やかな身体づくりに大いに役立っているともいえるのです。
そして、その際、香りを一緒に楽しめば、身体への効果も楽しさの面でも、一石三鳥くらいのメリットは見込めそうです。
そこで、次に紹介するヒーリングブレスを毎日の習慣にしてみてください。
ヒーリングブレスの基本のやり方

(1)ディフューザーやお香などで、好きな香りを漂わせましょう。

(2)座っていても立っていてもよいですが、背筋をピンと伸ばしましょう。目を閉じ、気持ちを落ち着かせて香りに意識を集中します。

(3)口をすぼめつつ、長い時間をかけて息を吐き出します。

(4)鼻や口から思いきり息を吸い込みます。このとき、肩を動かさないで、おなかの筋肉を意識すること。
(5)少し時間をおいてから、(3)同様、口をすぼめつつ、長い時間をかけて息を吐き出します。
(6)(4)~(5)を10回程度繰り返す。
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香りをかぐという最強の健康法
著/財満信宏
アスコム 1,650円(税込)
財満信宏(ざいま・のぶひろ) 近畿大学教授、博士(農学)。
1978年、広島県生まれ。京都大学大学院農学研究科博士後期課程修了。三菱化学生命科学研究所、浜松医科大学分子イメージング先端研究センター、英インペリアルカレッジロンドン客員研究員(兼務)などを経て現職。
血管疾患発症機構の解明と予防・治療法の確立を目指した研究を行っているほか、食品と人間、香りと人間の関係を明らかにする研究を行っている。クローブや黒胡椒などに含まれる香り成分「β‐カリオフィレン(BCP)」の吸入によって血管保護効果が発揮されることを発見。2022年、研究成果が薬物療法に関する専門国際誌「Biomedicine & Pharmacotherapy」に掲載され、注目される。
イラスト/髙栁浩太郎











