近代風景画家の第一人者、吉田博(1876-1950)は、久留米市に生まれ、17歳で上京して小山正太郎が主宰する画塾・不同舎に入門し、本格的に画業を開始しています。

23歳で渡米して以降、約7年間を超える外遊で古今の西洋美術に触れました。

後半生に傾倒した私家版木版画では、浮世絵版画の伝統的技法に、油彩画のタッチと水彩画の色彩表現を用いた洋画技法を取り入れ、未開拓の新しい芸術を創造しました。

瀬戸内海集  光る海 大正15年(1926)
MOA美術館蔵
米国シリーズ エルキャピタン 大正14年(1925)
MOA美術館蔵
欧州シリーズ ヴェニスの運河 大正14年(1925)
MOA美術館蔵

MOA美術館で開催の「光る海 吉田博展」は、木版画の代表作70点を展観します。(12月20日~2026年1月27日)

本展の見どころを、展覧会担当学芸員の金沢和泉さんにうかがいました。

「吉田博は、本展のメインビジュアルである「光る海」をはじめ、国内外の海や湖、池、川など水辺の風景を多く描き、その表現は博の作品を象徴する主題の一つといえます。

「光る海」は、帆船と海、空というシンプルな構成ながら、実に28度もの摺りを重ねています。よくみると、色彩が複雑に溶け合っていて、水彩・油彩を通じて色に対する深い素養を培った博ならではの表現です。木版画は彫師・摺師と協働して制作されましたが、使用する絵の具は博自らがこだわりをもって調合したといいます。

瀬戸内海集 帆船 午後 大正15年(1926)
MOA美術館蔵
瀬戸内海集 帆船 夜 大正15年(1926)
MOA美術館蔵

当館では近年、作品の舞台となった地を調査し、写真パネルや映像とともに作品を紹介しています。《光る海》や《帆船》の撮影地は特定できませんが、博も訪れた愛媛県上島町弓削島で取材を行いました。

朝・昼・夕の光に合わせてヨットを動かし、きらめく水面を撮影したところ、その情景はまさに博の描いた世界そのものでした。来館者の皆さまにも、博の見たであろう景色を少しでも共有できたら幸いです」

高精細画像を使用したオリジナル映像は圧巻です。ぜひ会場でご堪能ください。

【開催要項】
光る海 吉田博展
会期:2025年12月20日(土)~2026年1月27日(火)
会場:MOA美術館
住所:静岡県熱海市桃山町26-2
電話:0557・84・2511
公式サイト:https://www.moaart.or.jp/
開館時間:9時30分~16時30分(入館は16時まで)
休館日:木曜日(1月1日は開館)、年始休館(1月5日~9日)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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