最近、パソコンやスマートフォンの普及により、⾃ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。
この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を⾼く保つことにお役⽴てください。
「脳トレ漢字」今回は、「校倉」をご紹介します。日本の伝統建築を思い浮かべながら漢字への造詣を深めてみてください。

「校倉」は何と読む?
「校倉」の読み方をご存じでしょうか?
正解は……
「あぜくら」です。
『小学館デジタル大辞泉』では「三角形・四角形または台形の断面をした木材を井桁(いげた)に組んで外壁とした倉」と説明されています。
「校」という字は、「学校(がっこう)」や「校舎(こうしゃ)」のように「コウ」という音読みが馴染み深いため、うっかり「こうそう」と読んでしまいがちです。日常会話ではほとんど使われませんが、歴史や建築の文脈で「校倉造り(あぜくらづくり)」という表現を聞いたことがあるのではないでしょうか?
「校倉」の由来
「校倉」の「校」とは、木材を交差させて組む意味を持っています。つまり、木材を「井」の字のように組むことで丈夫で通気性、防湿性に優れた倉を作る技法を指すのです。校倉造りは木を斜めに組んで壁をつくるため、湿気がこもらず、長期間、大切な物品を現代でいえば「倉庫兼博物館」のように守ることができました。

校倉は湿気に強く、防火性も高いことから、重要な書物や宝物を保管する倉庫として利用されてきました。正倉院はその代表例で、8世紀(奈良時代)に建てられたにもかかわらず、現在も当時の姿をとどめている点で世界的にも貴重な建築物です。
正倉院はなぜ宝物を守り続けられた? 驚異の調湿システム
奈良・東大寺の正倉院は約9000件もの宝物が、1200年以上の時を超えて、驚くほど良好な状態で保存されてきました。なぜ、このような奇跡が可能だったのでしょうか。
その秘密の一つが、まさに「校倉造り」の構造にあります。
校倉造りの壁に使われる木材は、湿度の変化によってわずかに膨張したり収縮したりする性質を持っています。
湿度が高い時期は木材が湿気を吸って膨張し、材と材の隙間が狭まります。これにより、外部からの湿った空気の侵入を防ぎます。
一方湿度が低い時期は木材が乾燥して収縮し、材と材の間にわずかな隙間ができます。これにより、適度な通気が確保され、内部が乾燥しすぎるのを防ぐのです。
つまり、特別な機械装置を使うことなく、建材である木材自体が呼吸するように、自然に庫内の湿度を調整する「天然のエアコン」のような役割を果たしていたのです。この優れた調湿機能が、デリケートな宝物をカビや過乾燥から守り、長期間にわたる保存を可能にしたと考えられています。
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いかがでしたか? 今回の「校倉」のご紹介は皆様の漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 木の香りが漂ってきそうな、日本の誇るべき建築文化ですね。
来週もお楽しみに。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
