取材・文/ふじのあやこ

日本では婚姻届を役所に提出し、受理されると夫婦と認められる。夫婦となり、パートナーのことを家族だと受け入れられるものの、パートナーの両親やきょうだい、連れ子などを含め、「みんなと家族になった」とすんなり受け入れられる人もいれば、違和感を持つ人もいるという。また、ずっと家族として生活していたものの、分かり合えない関係のまま離れてしまった人もいる。家族について戸惑った経験がある人たちに、家族だと改めて感じられたきっかけを聞いた。
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公益財団法人 日本財団は、男女計6000人を対象に少子化に対する意識調査(実施日:2024年9月26日~9月30日、有効回答数:全国の15~45歳の男女 計6000人、インターネット調査)を実施。調査にて、未婚者の45.9%は「結婚願望あり」と回答するも、現実的な結婚の見込みについては38.5%が「結婚しないと思う」と回答した。次に、結婚を希望しない理由を聞いたところ、「自分は独り身が向いていると思うから」が40.1%でトップとなり、次いで「結婚するメリットが思いつかないから」(32.9%)、「自分の人生を優先したいから」(29.1%)となっている。
今回お話を伺った安里さん(仮名・45歳)は、ずっと結婚願望がなかった。その原因を「自分のことを本当に好きになってくれる人はいないと思っていた」という。
母の一言目はいつも否定だった
安里さんは両親との3人家族。父親はサラリーマンで、母親は専業主婦。父親は子育てに一切関わらず、母親は過干渉だった。小さい頃から安里さんは母親に否定され続け、褒められたことは覚えていないという。
「何をするにも母親は否定から入るような人でした。私が何かを始めたいと言っても『あなたにできるわけない』『始めてもすぐにダメになる』と。学校での三者面談があったときに、担任の先生が母親に向かって私のことを褒めてくれたことがあったんですが、そのときにも「そんな褒められるような子じゃないですよ」と笑いながら私の悪口を先生に伝えていました。そのことがすごく嫌な記憶として残っています」
母親が安里さんを否定し続けたことで、安里さんも母親らしいことを何も期待しなくなった。それは何も言ってこない父親に対しても同じだった。親らしいことは期待せず、否定されたことに対してはできることを証明して黙らすしかなかったと振り返る。
「進学を希望した大学名を伝えたところ、『無理無理』と言われたので、模擬試験の結果のA判定(合格率80%以上)であることを見せて、黙らせました。母親は私の希望が可能なことだとわかっても、それを認めず、ただ黙るんです。有名大学のA判定を見せたのに、母は褒めてくれませんでしたから」
就職活動は親の意向を聞くことなく、東京に決める。東京は実家から特急で1時間半ほどの距離であり、通うことは難しいという事実を突きつけ、反対される前に一人暮らしを決行することができたという。
「就職先に通うことができないという事実がわかれば、私のことを否定する母親も何も言ってきません。否定される前にただ事実と証拠を突きつければいいんだということを学んでからはストレスは減りましたね。
でも、証拠や事実がないものに対しては、母親はどこまでも反対してきました。結婚したくないという思いに証拠や事実はないですから」
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